浅田次郎/日輪の遺産
出版社/著者からの内容紹介
帝国陸軍がマッカーサーより奪い、終戦直前に隠したという時価200兆円の財宝。老人が遺(のこ)した手帳に隠された驚くべき真実が、50年たった今、明らかにされようとしている。財宝に関わり生きて死んでいった人々の姿に涙する感動の力作。ベストセラー『蒼穹の昴』の原点、幻の近代史ミステリー待望の文庫化。
本屋に平積みされていたので新刊かと思ったら、10年前に文庫化された作品だということがあとがきにて判明。
そういわれてみれば確かに老人から過去の遺産への道標を託される2人の男(丹羽と海老沢)の描き方がちょっと焦点が絞り切れていないなど、人物描写がいつもよりも弱かった気がする。
赤の他人の身元もよく分からない老人から第二次世界大戦中の驚くべき記録を書き付けた手帳を託され、その内容に翻弄される男たち。
彼らは彼らなりに生活を背負って、悩んで、苦しんで、怒って、その上で自分たちに出来ることを探ろうと懸命にもがいている。
それは判るんだけど、その葛藤とか苦悩に最近の浅田作品に見られるようなキレや深みがなく、心の動きがうまく伝わってこない部分があった。
それに対して、第二次世界大戦中に思いも掛けぬ命令を受け、それを命懸けで実行した男たちを描いた部分は力強さ、緊迫感と同時に深い哀しみが表現されていて読み応えがあったし、読み進めるうちにさりげなく舞台に全ての登場人物が揃っているという展開、そして膨大な遺産をその中心に置きながらも単なる「宝探し」小説にしないあたりはさすが浅田次郎、という感じ。
途中はやっぱり泣けます。
ただ最後の少女の独白はちょっと気持ちがシンクロ出来なかった。
作中でも何度も「謎」として語られていたことだったから何らかの解答が必要だったのかもしれないけど…ちょっと「余計だな」という印象のほうが強かった。
『珍妃の井戸』のラストもこんな感じで同じく「イマイチ」と思った記憶があるので、単に私の好みの問題かも知れないな。
読みながら一番感じたのは「この時代のことを何も知らない」ということ。
幕末よりも、戦国よりも、平安よりもずぅっと近い、振り返ればまだちゃんと見える時代なのにね。
ちょっと勉強しないとな~。
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