海堂尊/チーム・バチスタの栄光
内容(「BOOK」データベースより)
東城大学医学部付属病院は、米国の心臓専門病院から心臓移植の権威、桐生恭一を臓器制御外科助教授として招聘した。彼が構築した外科チームは、心臓移植の代替手術であるバチスタ手術の専門の、通称“チーム・バチスタ”として、成功率100%を誇り、その勇名を轟かせている。ところが、3例立て続けに術中死が発生。原因不明の術中死と、メディアの注目を集める手術が重なる事態に危機感を抱いた病院長・高階は、神経内科教室の万年講師で、不定愁訴外来責任者・田口公平に内部調査を依頼しようと動いていた。壊滅寸前の大学病院の現状。医療現場の危機的状況。そしてチーム・バチスタ・メンバーの相克と因縁。医療過誤か、殺人か。遺体は何を語るのか…。栄光のチーム・バチスタの裏側に隠されたもう一つの顔とは。第4回『このミステリーがすごい!』大賞受賞作。
去年の暮れに図書館に予約して半年、ようやく順番が回ってきた。
で、一気読み。面白かった。
あと一週間で事務所が移転してこの図書館とも「さようなら」だったので、その前に読めてよかった。
「バチスタ手術」という言葉は去年の春に放映されていた『医龍』というTVドラマで初めて聞いた。
ドラマは数回しか見てないけど「バチスタ手術」という聞き慣れない単語と、出てくる登場人物がみんなすごく個性的だったのが印象に残っていた。
この作品も読み始めたとき、同じ「バチスタ手術」を扱ったものだし設定も何となくドラマと似た雰囲気を持っていたので『原作か何かなのかな?』と思っていたけど話の内容は全然違う。
思わず先に読んでいた会社の子に「これってドラマと関係あるの?」と訊いたところ、「いや、全然」という回答。
あ、そうなんですか…単にかぶっただけなのね。
そういえばドラマは「同名のマンガが原作」というのをどこかで読んだ記憶があった。
同じドラマにそんなにいくつも原作があるわけがないか(笑)
でも、こんな一般的じゃない言葉を使った作品が同時期に別々に出てきて注目される、というのも不思議な現象だ。
というわけで、『チーム・バチスタの栄光』。
あちこちで書かれているように、とにかく人物造形がすごい。
かなりたくさんの人物が当事者、証言者、傍観者…などどして登場するんだけど、そのどれもがすごく強い個性(特徴)を与えられているため、非常に覚えやすかった。
特に(これもあちこちで書かれているけど)後半になっていきなり登場する白鳥の存在感は圧巻!
前半の主役で作品の視点でもある田口の存在を一瞬にして凌駕してしまった。
前半はそこそこ頭よさそうなキャラだった田口が白鳥の登場で単にイライラしてるだけの「判ってないキャラ」になってしまうのは興味深かったな。
やっぱり頭の良さというのは相対的なものなのかも。
(それからリスクマネジメント委員長の曳地の喋り方!実際にあんな喋り方をする人が身近にいたらすごくイライラするだろうけど、端から見てるだけなら笑える(笑)大学病院とかにはこんな人が実際に生息しているのかなぁ?)
でもこの作品がすごいのは、白鳥をはじめとしてそれだけ個性的なキャラクターばかりが出てくるにも関わらず、全体的な印象は「物語がメイン」の作品としてきちんとまとまっているところ。
ミステリーとして見るとあまりにも専門的な知識が多すぎて犯人や手口を推理するという楽しみはないし実際に解き明かされた真実にもちょっと違和感を感じるけど、当事者一人一人から聞き取り調査をしてそれを積み上げていく手法、それを知識のない私でも理解できるように表現する判りやすく無駄のない文章で最後まで面白く読めた。
事件が解決して終了ではなく、その後日談も丁寧すぎるくらい丁寧に、それぞれの心情を汲み取って描ききって終わっているところがすごくよかった。
これ以降、「ナイチンゲールの沈黙」「ジェネラル・ルージュの凱旋」「螺鈿迷宮」とこのシリーズで作品を連発しているようなので、移転したらそっちの図書館で予約しなくちゃ。
(また半年覚悟かな^^;)
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コメント
こんばんは♪
今はとりあえず自宅で~す。
どうなるかわからないけれど、今のところ無事(笑)です。
そうそう、近況報告ありがとうございました。
かなりお忙しそうですが、体調管理には気をつけてくださいね。
とにかく健康が一番!
これ、面白かったです。
私にしては珍しく2回続けて読んじゃいました。
白鳥が圧巻でしたねぇ~。
この後出た、「ナイチンゲール~」と「螺鈿~」は読んだんですが、
「ジェネラル~」はまだ読んでません。
落ち着いたら私も図書館へ予約しておかなくちゃ。
しかし、現役のお医者さんってものすごく忙しいと思うんですが、
その上これだけの物を書けるってのは
いったいどういう生活をしてらっしゃるのか、
そこがものすごく不思議です。
投稿: shirokko | 2007/07/08 21:34
■shirokkoさん
…ゴメンナサイ!!!
またしても放置状態でした(T_T)
おかげさまで体調は問題ナシなのですが、とにかく忙しい&慣れない環境で落ち着かない状況の1ヶ月でした。
ここに来てなんとかようやく馴染んできたかな~といった感じ。
もちろんまだまだ問題は山積みなんですけどね(汗)
この本を読んだのも随分昔のことのような気がします^^;
>いったいどういう生活をしてらっしゃるのか、そこがものすごく不思議
ですよね~。
しかも専門的なことを書いているのに文章が判りやすいってのがすごいな~と思います。
で、これデビュー作ですか?
…才能がある人はあるんですねえ…。
私も続きが読みたいのですが、新しい住所の図書館にまだ行けていないのです…(泣)
投稿: tako | 2007/08/06 23:36