森谷明子/七姫幻想
内容(「BOOK」データベースより)
遙か昔から水辺に住み、日ごと機を織る美しい女たち。罪の匂いをまとう織女をめぐり、物語が密やかに始まる。時を超えて語られる織女伝説ミステリー。
タイトルの「七姫」というのは、七夕の織女(織姫)の異称のことらしい。
それぞれ「秋去姫(あきさりひめ)」「朝顔姫(あさがおひめ)」「薫姫(たきものひめ)」「糸織姫(いとおりひめ)」「蜘蛛姫(ささがにひめ)」「梶葉姫(かじのはひめ)」「百子姫(ももこひめ)」の七つ。
織姫様にこんなにいろんな名前があったなんて初めて知った。
特に「蜘蛛姫」なんて見た目ちょっとビックリな名前だけど、機織りの糸から想像された名前なのかな。
これはそのたなばたの七姫をモチーフにした短篇集。
「ささがにの泉」「秋去衣(あきさりごろも)」「薫物合(たきものあわせ)」「朝顔斎王」「梶葉襲(かじのはがさね)」「百子淵(ももこのふち)」「糸織草子」と、それぞれの物語に七姫を重ねた名前が付いている。
でも物語に七姫の名前を持った登場人物が直接出てくるわけではない。
古代から江戸までのそれぞれの時代のさまざまな状況のなかで、お互いに愛し合い結ばれた、または愛を閉じ込め愛しい人と別れなければならなかった女たちの物語が語られていく。
ある人は伝説になり、ある人は子孫になり、時代と姿を変えながら脈々と受け継がれていく「七夕」の物語。
全体的にそれぞれの時代の習慣や風俗よりもあくまでも恋人たちやその周囲の「人」の生活を中心に描くことで時代性を表現してあるため、すんなり物語の世界に入っていくことが出来た。
ただ、物語の中にミステリーの要素も含んでいるので、会話や物語の流れに含みがありすぎたのがちょっと気になった。
もっとスッと流れる文章で書かれていた方が綺麗な物語になった気がする。
七編の中では無欲で世間知らずの元斎王が身近にあった幸せを掴み取る「朝顔斎王」がよかった。
タイトルも物語も『源氏物語』を敢えて意識しつつ別の結末に持っていっているのがいい。
それに唯一のハッピーエンドらしいハッピーエンドだったしね(^^)
それぞれの物語に合わせて選ばれ、物語の中で重要な役割を果たす実在の和歌の数々も印象的だった。
ちなみに「朝顔斎王」ではこんな歌。
君こずは 誰に見せまし わがやどの かきねにさける 朝顔の花
(拾遺和歌集 詠み人知らず)
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