梨木香歩/沼地のある森を抜けて
内容(「BOOK」データベースより)
始まりは「ぬかどこ」だった。先祖伝来のぬか床が、呻くのだ。変容し、増殖する命の連鎖。連綿と息づく想い。呪縛を解いて生き抜く力を探る書下ろし長篇。
梨木さんの本は今までに何冊か読んでいるけど、読むたびに意外な感じを受ける。
イメージが一定しない、というか。
最初の頃に読んだ『裏庭』や『西の魔女が死んだ』のイメージが大きくて、そこが基準になっているせいなのかな。
この作品はそんな中でもかなり「意外」な作品。
主人公・久美の家に代々伝わる家宝の「ぬか床」。
独身のまま急死した母方の叔母からマンションとともにそのぬか床を譲り受けた久美の周囲で不思議なことが起こり始める。
それをきっかけに自分の家族や祖先が住んでいた「島」について調べはじめ、ついにはその「島」に渡ることを決意する。
ぬか床を持って渡った島で久美が知った真実とは…。
ぬか床が呻いたり、いつのまにか卵が入っていたり、更にはそこから人(のようなもの)が生まれてきたり…と前半はSFというかホラーの世界。
でも、それを見ている久美はパニックになったりせずかなり冷静に「それ」の存在を観察しているので緊迫感はない。
もちろん多少のストレスはあるんだけど、むしろ彼女は「それ」に共感や懐かしさを感じているように思えた。
(恩田陸の「月の裏側」をちょっと思い出した)
「ぬか床」という家庭料理の基本のような存在のもののなかから、母性や性的なものへの嫌悪、コンプレックス、トラウマが出てくるというのは、「ぬか床」自体が「家」そのもの、また「自分自身」を表現してるってことなのかな。
よくわかんないけど。
後半出てくる暗喩のような「僕」の物語もかなり謎だった。
(もしかして細胞の話なのかなあ、と思ったりしたけど…)
読み始めたらスルスル読めたけど、全体的に「なるほど」な感じは殆どない、でも読後感も悪くないという不思議な物語だった。
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コメント
どちらかというと「からくりからくさ」と同じような方面なのでしょうか(そうでもないのか)。
「月の裏側」はちょっと消化不良というか、結局はっきりしないまま終ってしまって、うーむ、という記憶が。
投稿: ムムリク | 2007/12/15 15:04
■ムムリクさん
こんにちは。
>どちらかというと「からくりからくさ」と同じような方面
なるほど。方向性としてはそうかもしれませんね。
ただ、物語の中に占める「リアル」な部分と「幻想」の部分の比率が違うってことでしょうか。
『からくり~』はもうちょっと現実に即した物語だったので、理解しやすかったような気がします。
ちなみに私は『村田エフェンディ滞土録』が一番好きです[♪]
コメントありがとうございました[ハート]
投稿: tako | 2007/12/15 18:37