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2008/01/03

田村裕/ホームレス中学生

ホームレス中学生

内容紹介
麒麟・田村のせつな面白い貧乏生活がついに小説に!
中学生時代の田村少年が、ある日突然住む家を無くし、近所の公園に一人住むようになる超リアルストーリー。
ダンボールで飢えを凌ぎ、ハトのエサであるパンくずを拾い集めた幼き日々から、いつも遠くで見守ってくれていた母へ想いが詰まった、笑えて泣ける貧乏自叙伝。

私にしては珍しく「ベストセラーど真ん中」の作品。
実家に帰ったら、父親が図書館で借りてきた本があったので読ませてもらった。
(自分では買いもしないし、借りもしないと思ったので)

読み始めてすぐに感じたのは「うわ、へたくそな文章だなぁ」ということ(笑)
ですます調とだである調が混在しているし、文章がぶつ切りだし、話が前後するし、重要な話とそうでない話が並列で書いてあるので全体的に平板になってしまって、盛り上がりに欠ける感じ。
タレント本ってよく「本人じゃなくてゴーストライターが書いている」とかって話があるけど、ここまで下手なら本人が書いたんだろうなあということは納得できる出来だったかも(笑)

で、問題の内容だけど…全編が話題になっている内容(「自宅を借金で差し押さえられて住む家がなくなり、父親の「解散」の一言で家族全員がバラバラになり中学2年生だった著者は一人で公園のすべり台で暮らす」)について書いてあるわけじゃないのね。
それについて書いてあるのは全体の約3分の1程度(190ページ中約60ページ)で、また実際にホームレスだったのも約2週間くらいの期間だったらしい。

もちろん、中学2年生でいきなり自宅がなくなったうえに「解散」の一言で親に見放されて一人放り出され、何の後ろ盾も先行きへの見込みもない状態で公園で野宿することを余儀なくされるというのは2週間だったとしても異常、というか極限的な状況だと思う。
だから本の紹介をするときにその部分が強調されるのは仕方ないと思うけど、「それしか」話題にならないというのも読み終わってみるとちょっと腑に落ちない部分はあるかな。

というのも、この本はそういう異常な生活の様子よりもそうした環境の中でも失われなかった兄弟(著者と兄、姉)の絆や死んでしまった母への思慕、借金を残したまま自分たちを捨てて失踪してしまった父親に対する思いなどの家族の話と、著者を厳しい環境から救ってくれた友達、その家族、近隣の人々、学校の先生などたくさんの人々への感謝の気持ち、それによって変化した著者の心境などのほうが重要なのではないのかと思えるから。

中でも著者にとって重要だったのはまさかのホームレス生活よりも、むしろ最愛の母親の死だったように思う。
幼いころに味わったその大きな喪失感を見ないふり忘れたふりをすることで自分を守っていたけれど、成長してものごとを理解するなかでその問題と向き合わざる得ない状況になり、その結果生きることへの目的も見失い無気力な状態になってしまう。
それでも家族や周囲の人々の支えを糧にそこから立ち直り、誰を恨むわけではなくそうしたものがあったからこそ「今の自分がある」という心境に至る著者の変化こそが重要な部分だったのでは。

最初に本の内容を知ったときに感じた「笑える悲惨さ」ではなく、「哀しみを乗り越えたものだけが得られる本物の明るさ」みたいなものが感じられる作品だった。

ただ、それさえもあまりにもへたくそな文章であるために内容を理解することに気をとられてしまい、あまり感情移入できずに読み終わってしまった感はぬぐえない。
確かに経験した人にしか表現できない臨場感というのはあるのかもしれないけど、それを表現するにもやはり最低限の表現力というのは要求されるんじゃないかなあ。
リアルであることも大切だけど、もうちょっと添削するとか構成を整えるとか読みやすさを調整する必要はあったのでは。
そうした結果があれだったのならもう何もいうことはないけどね。
もしかしたらそうした流暢すぎない部分が売れている要因の一つなのかも?
あと、まさかとは思うけど「わざとそう書いた」のだとしたら…かなり腹立たしい。

現在この本の発行部数は180万部(!)だとか。
どこかで「世界一売れているノンフィクション作品だ」という話を聞いたんだけど…ホント?
まあ基本的にノンフィクションの本が売れないという事実があるからかもしれないけど、この本がそういう位置に置かれてしまうというのは何かが間違っているような気がするなあ…。

※この↓話と勘違いしてるかな?
麒麟田村“貧乏本”ギネス申請も検討

「ホームレス」から想像されるダンボールを使った装丁は好き。
下手な手書きで書かれた文字がタイトルになった表紙もいいけど、背表紙で同じダンボールの隙間からちらりと外の景色(マンションらしき白い壁とその周囲の木)が見せているところがよかった。
その隔てられた「あっち」と「こっち」にあるのは薄っぺらなダンボール1枚だけど、それこそが「超えることが出来ない厚い大きな壁」であるということが端的に表現されていたと思う。
(実際にはダンボールに住んでいたわけではないけどね)
本文中には著者によるヘタくそなイラスト付き。(これは別になくてもよかったかも…^^;)

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コメント

takoさん、お久しぶりです。
最近、少し落ち着いてきて、少しでも自分が楽しめて集中できる時間を作ろうと、1ヶ月に1冊本を読むことにしました。
テレビ(ドラマ)も面白いけど、見れない確率の方が高く、それにイライラしてしまいそうなのに比べ、本だと空いている時間に読めて想像力を膨らませながらどっぷり自分時間に浸れそうだと思ったからです^^
と言っても、読み始めるとそんなに長くかからないのでもっと読みたい!!と思ってしまうのですが、
それくらいのが次の月に繋がっていいのかも・・なんて思ってます。(笑)

前置きが長くてすみません。
今度は何を読もうかなと思って、こちらでアレコレ探していましたら、
なんとまさかな「ホームレス中学生」発見!!(笑)

>自分では買いもしないし、借りもしないと思ったので
>ここまで下手なら本人が書いたんだろうなあということは納得できる
思わず笑ってしまいました。私もこの本を読んだのですが、(話題だったし、息子も読みたいとのことだったので)納得な感想です。

私も本を読み終わって印象に残ったことは、ホームレス生活ではなく、お母さんの死とこの人の恵まれた人間関係でした。というか、やはり著書自身がしっかりと愛情をもって育てられたのだろうと思いました。

ちなみに私は泣いてしまいました。(@単純。笑)

今月の本は、「容疑者Xの献身」だったんですよ♪
私は「重い」東野圭吾さんの作品が結構好きです( ̄◇ ̄)b グッ♪テーマは殺人だけど、それを思わせないのはやはりスピード感なのでしょうか。読んだ後も、爽快感があったりして。
・・と。違う本の感想までこちらに書いてしまいましたが・・ヾ( ̄▽ ̄;)o

これからもこちらで参考にさせていただきますので、よろしくです。
長々と書いてしまってすみませんm(*- -*)m

投稿: sacchi | 2008/09/03 17:22

■sacchiさん
こんにちは。コメントありがとうございます。
ご無沙汰していますがお変わりありませんか?

お返事が遅くなってごめんなさい[汗]

>1ヶ月に1冊本を読む

じっくり選んでじっくり読む、というのもいいですね。
「ホームレス~」と「容疑者Xの~」の感想ありがとうございました。
同じ本を読んでも感じ方、考え方、響き方は人それぞれですよね。

最近読んだ中では森絵都さんの「DIVE!」が面白かったです。
(まだ感想は書いてません)
高飛び込みに青春を掛ける男子中高生のお話です。
展開がスピーディだけど無理がなくてスムーズに流れていくし、文章もすごく読みやすいです。
何より登場人物たちが魅力的!
もし機会があったら読んでみて下さい[♪]

あ、あと意外にも「陰日向に咲く」(劇団ひとり)が面白かったですよ(笑)

読書にピッタリの季節です。
これからもいい本をゆっくり味わって読んで下さいね。

投稿: tako | 2008/09/10 21:18

[涙] 人の文章どうのと言える文章を、あなたはお書きでないと思われるのですが・・・。

投稿: | 2010/12/11 15:27

■2010/12/11 15:27にコメントを下さった方へ
こんにちは。

たしかにその通りですね。お気に触ったら申し訳ありません。
ただ、私の場合、この文章によって利益が発生しているわけではない、という言い訳はしておきます。
対してこの本は商品です。
商品として本を書くのであれば、たとえ著者がプロの作家ではなくてもそれなりのクオリティが必要だと思っています。

コメントありがとうございました。

投稿: tako | 2010/12/11 16:40

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