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2008/02/17

五十嵐貴久/相棒

相棒
相棒

『相棒』…といっても、人気のTVドラマシリーズではない。(こっちも好きだけど(笑))

慶応3年10月。
大政奉還を間近に控えた早暁、薩摩藩・西郷吉之助との極秘対談に向かっていた十五代将軍・慶喜が何者かに狙撃される。
幸い慶喜に怪我はなかったが、誰が命を狙っているか判らない状況に慶喜は大政奉還の取りやめを考え始める。
この事態を収拾するために幕府方の重職・永井玄蕃守と板倉伊賀守は将軍暗殺の下手人探しをある男たちに要請する。
それは新選組副長・土方歳三と土佐藩脱藩・海援隊の坂本龍馬という誰も考えないような組み合わせだった…。

佐幕派の急先鋒として不逞浪人を厳しく取り締まっている新選組の鬼の副長と、勤王派の長州と薩摩を同盟させ幕府に大政奉還させようとしている張本人とがコンビを組んで、将軍暗殺の犯人を捜す…という破天荒な設定の話。

帯の内容からミステリーかと思って読み始めたら、そうじゃなかったというのが一番の感想。

徳川幕府開闢以来の出来事、将軍暗殺の犯人を捜して薩摩、会津、長州、陸援隊、高台寺党、岩倉具視公…とその時点で幕府に影響力がある組織の主だった人々を、2人の人脈と知名度を頼りに次々に訪れてそれぞれの立場の意見を聞くことに多くの枚数が費やされている。
これはまさに現代の刑事ものの「聞き込み」に当たる作業なんだけど、この作品のなかでのそれは犯人探しというよりも慶応3年当時の日本の勢力図を確認する作業のように思えた。

当時の重要人物を次々に登場させて時には死をも覚悟して探ったのに、その結果浮かび上がった犯人への幕府からの最終的な処断は特にないまま曖昧に終わっている。
このあたりもこの話がミステリーではなく、歴史の部分に比重を置いているからではないかと思う。
ただ、その一連の証言やそれぞれの人物、組織の内部事情、人間関係などについて丁寧に記述されている文章はとても判りやすく、「大政奉還」という大事の前夜、それを囲む様々な立場の人間たちが何を考えていたのかを理解するいい材料だった。

また、2人に与えられた時間がたった2日間ということで、2人で夜中まで京の町を走り回ったり、クソ忙しいのにわざわざ状況報告に二条城に呼び出されてムカっ腹立てたり、長州との対面では一触即発の事態に陥ったり…と、重厚な中にもスピード感のある展開でとても読みやすかった。

残念だったのは、土方と龍馬のやり取りにあまり意外性がなかったところ。
せっかく土方と龍馬という2人の人気者(笑)を主役に据えるのだったら、もう一歩踏み込んだやり取りが読めたらもっとよかったなあ…と思う。
(個人的には土方はもうちょっと「マヌケ」な部分があったほうが好きです(笑))
それぞれの敵陣へ踏み込み、時に命の危険に晒される中で少しずつお互いに対する信頼や友情が芽生える部分は感じられたけど…「もう一声!」かな(笑)
2人だけよりもむしろ新選組の沖田と海援隊の陸奥陽之助(後の宗光)が主役2人といるときのほうが印象的なシーンが多かった。

龍馬の最期のところは、事前に思いっきり伏線が張ってあったので「多分そうなんだろうなあ」と思ったらやっぱり「そう」だった、という感じ。
(ネタバレなので曖昧表記で失礼します^^;)
ちょっと分かり易すぎ。
ただ、そういう成り行きは龍馬らしいと思うし、そう思いたい部分もあるのでヨシとしよう。

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