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2008/04/27

西澤保彦/謎亭論処(めいていろんど)-匠 千暁の事件簿

謎亭論処―匠千暁の事件簿 (祥伝社文庫 に 5-3)
謎亭論処―匠千暁の事件簿 (祥伝社文庫 に 5-3)

出版社 / 著者からの内容紹介
呑むほどに酔うほどに冴える酩酊推理!
女子高の正門前に車を停め、夜の職員室に戻った辺見祐輔(へんみゆうすけ)は憧(あこが)れの美人教師の不審な挙動を垣間(かいま)見た。その直後、机上の答案用紙が、さらに車までがなくなった。ところが二つとも翌朝までに戻されていた。誰が、何のために? 辺見の親友であり、酒に酔うほど冴(さ)え渡る酩酊(めいてい)探偵・匠千暁(たくみちあき)に相談すると……。続発する奇妙な事件を、屈指の酒量で解く本格推理の快感!

基本的に主人公を始めとして登場人物の人物設定や心理描写が丁寧に描かれている作品が好き。
推理小説で言えば人間関係がまずあって、その上で事件があり、謎がある、といった感じの物語。
逆に謎のためにストーリーが動いているような物語はあまり好きじゃない…と思っていた。

ところが、この作品は目一杯、それこそ今まで読んだどの作品よりもパズル的要素大の作品なのに、これがすごく面白かったのだ…自分でもビックリ。

とにかくひたすら事件についての概要と、その謎の推理と検証だけが繰り返されていくというストイックさがスゴイ。
誰が、何故、どのようにしてその事件を起こしたのか。
それが合理的に説明出来るポイントのみを目指してストーリーが構成されている。

更にスゴイのは、その推理が「真実かどうか」は言及されていない部分。
事件の第三者の視点から謎が推理され、検証や訂正、情報の追加などが繰り返されて、その人々の間で最終的な回答に辿り着くんだけど、その後事件に直接関わった人からその推理が「真実」であるかどうか語られることはない。
誰かが謎に対して合理的な説明を付けられた、時点でその物語は終了してしまうのだ。

確かに、普通の推理小説にしても、例えば探偵や警察や犯人自身が語る「真相」がその事件にとって真実であるというのは「作家がそう宣言している」だけの話でしかないんだから、信憑性は変わらないわけだよね。
そう考えると決してこの作品が突飛であるわけではないんだろうけど…何だか最初はすごく違和感があった。
それだけ読者というのは、物語の中の探偵や警察のような存在に勝手に権威みたいなものを与えてしまっていたってことなのね。

収録されている8つの短篇全てがほとんどそんな感じの展開なんだけど、中でも由起子が刑事である夫の総一郎とある事件の真相について語り合う「呼び出された婚約者の問題」は一番その特徴が顕著だった。
総一郎が提示する情報に、由起子がそこから導かれる可能性を(間違っているのも気にせず)どんどん提示しては修正を繰り返し、また質問しては情報を引き出していくという殆ど全編が会話文で成立している作品。
その会話のテンポの良さと、読者にも等しく提示されていく情報の中でどんどん変化していく推理の面白さに引き込まれ圧倒された。

こういう作品って心情的に「後に何かが残る」ということは少ないけど、本を読むことの楽しさは充分感じられてすごく面白かった。

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