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2008/05/31

仁木悦子/仁木兄妹の探偵簿〈1〉〈2〉

仁木兄妹の探偵簿―雄太郎・悦子の全事件〈1〉兄の巻
仁木兄妹の探偵簿―雄太郎・悦子の全事件〈1〉兄の巻
仁木兄妹の探偵簿―雄太郎・悦子の全事件〈2〉妹の巻
仁木兄妹の探偵簿―雄太郎・悦子の全事件〈2〉妹の巻

1986年に亡くなった仁木悦子さんの作品の中から、著者と同じ名前の妹とその兄・雄太郎が探偵役を務める短篇を集めた作品集。

〈1〉「兄の巻」収録作品
「灰色の手紙」「黄色い花」「弾丸は飛び出した」「赤い痕」「暗い日曜日」「初秋の死」「赤い真珠」「だだ一つの物語」「(犯人当て)横丁の探偵」
〈2〉「妹の巻」収録作品
「木からしと笛」「ひなの首」「二人の昌江」「子をとろ 子とろ」「うさぎさんは病気」「青い香炉」「サンタクロースと握手しよう」「(犯人当て)月夜の時計」

背が高くてやせっぽちで大好きな植物の研究をしているのが一番幸せな兄・雄太郎と、チビで標準より太め、不思議なことに遭遇すると自分で解決せずにはいられない妹・悦子が様々な事件に遭遇し、持ち前の好奇心と探求心でその謎を解決する物語。

仁木さんの作品を読むのはこれが初めて。
安野光雅氏の表紙とタイトルに惹かれて図書館で借りてみた。

雄太郎も悦子も一般人なのに、こんなに次々と事件(しかも殆どが殺人事件!)に巻き込まれるという展開はどうなのよ?と思わなくもないけれど、最近のミステリのように殺伐とした雰囲気ではなく人情とか、人の温かさのようなものを最後にきちんと感じさせて終わるほのぼのした作風でとても読みやすかった。
謎解きもそんなにトリッキーでなく、普通の人がちょっと悪巧みして考えた、またはそういうつもりはなかったけど偶然が重なってそうなったといったちょっと緩めの雰囲気が私好み。

でも何より魅力的なのは、探偵役の仁木兄妹。
特に語り手である妹の悦子の好奇心溢れる行動力や、豊かな感情表現が物語を支えているといっても過言ではないと思う。
最初の作品で音楽学校に通う学生だった悦子は、その後新聞社所属のヘリコプターパイロットである浅田氏と結婚し、哲彦(テッチン)と鈴子(スウ子)2人の子どものママとして登場している。
結婚し子どもを持っても彼女の好奇心は健在で、時にはテッチンをお隣に預け、むずがるスウ子をあやしながら事件解明に駆け回ったりしている。
それでも彼女の行動が自分勝手で独善的に見えないのは、事件への好奇心と同時に、事件の関係者への思いやりと自分の家族(特に2人の子どもたち)への溢れるばかりの愛情もしっかり描写されているから。
悦子とテッチン、スウ子の、事件には直接関係のない他愛のない会話がさりげなく、でも愛情を込めて描かれているのが微笑ましかった。
(特に子どもたちを車に乗せるのを「積み込んで」って表現するのが私は好きだったな)

第一巻が「兄の巻」、第二巻が「妹の巻」となっているから、「兄の巻」では全て雄太郎が、「妹の巻」では全て妹が謎解きをするのかと思ったらそうでもない。
さすがに「兄の巻」では最初の何編かは雄太郎メインだけど、それも後半からは悦子に乗っ取られ(笑)「妹の巻」では完全に悦子の独壇場。
(時々思い出したように雄太郎が出てくるけど)
多分全体的に妹メインの作品数が圧倒的に多かった、ということなんだろうけど個人的にはちょっと仙人然とした部分もある雄太郎の存在もけっこう好きだったので、もうちょっと活躍してくれたらよかったな。
仁木兄妹の全集は長編ものもあるようなので、今度はこっちも読んでみよう。

仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈1〉夏・秋の巻
仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈1〉夏・秋の巻
仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈2〉冬・春の巻
仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈2〉冬・春の巻

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