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2008年5月の11件の記事

2008/05/31

坂木司/先生と僕

先生と僕
先生と僕

大学入学のために上京してきた極度の恐がり屋・二葉は、初対面の中学生・隼人に誘われ彼の家庭教師を務めることになる。
二人が一緒に歩くと何故かぶつかる不思議な事件。
トラブルに巻き込まれることを恐れて腰が引けている二葉を、都会っ子で頭のいい隼人が引っ張って事件(謎)を解決していく連作短篇集。

表題作他「消えた歌声」「逃げ水のいるプール」「額縁の裏」「見えない盗品」の5編を収録。

これも面白かった。
大学生と中学生の師弟コンビが遭遇する「日常の謎」系ミステリーで、内容もそれに合わせて血生臭いところは一切なくサクサク読める。
それでいて解決までの筋道やその途中で交わされる2人の会話に適度な深みがあって、読み終わったあとに爽快感とともにちょっとした深みも味わえる作品だった。

面白くしているポイントはやっぱり、二葉と隼人、主役2人のキャラクター設定の見事さ。
関東近県の田舎町から大学入学をきっかけに上京してきた二葉。
殺人事件が出てくるミステリーが読めないほどの恐がりだけど、「覚えよう」と思って見たものは5秒で記憶できるという特技を持っている、という設定。
一方、隼人はミステリーが大好きな東京生まれの中学1年生。
二葉よりも5つも年下だけど頭の回転の速さ、知識の豊富さ、観察力、洞察力、行動力、どれを取っても二葉の上を行き、彼を引っ張っていく。
その上、外見はジャニーズ張りの美少年で、謎の究明のためには女性陣に絶大な威力を持つその特徴を利用することも厭わない性格。
…という田舎者でちょっとドンくさい大学生と、都会生まれでスマートな中学生コンビのバランスがいい。
特に、顔がよくて頭がよくて生意気で…というだけでは、何となく鼻に付くヤなガキになってしまうであろう隼人を、例えば「区民プールのウォータースライダーに目を輝かせる」なんていうエピソードを入れて「なんだ、可愛いところあるじゃない」と受け入れさせてしまうちょっとした匙加減が「巧い!」と思った。
主役が好きになれるかどうかって、こういう作品では重要なことだよね。

ただ、隼人とのコントラストのためにあまりにも二葉に「田舎育ち、世間知らず」というキャラを振りすぎたという部分はあったかも。
あまりにも彼の理解力が乏しいのでそこにイラッとさせられることが時々あった。
確かに年齢や生まれた環境の違いはあると思うけど、6年というのは全く理解できないというほど離れているとも思えないし、環境的にもいくら田舎だとはいえTVや雑誌や新聞がある限りそんなに情報に疎いということは考えにくいと思えるんだけどな…。
しかも二葉は「そこにあるものを写真のように記憶できる」という特技があるわけでしょう。
「見える」「記憶できる」ということは、それだけで洞察力、想像力に繋がる才能だと思うんだけどなあ。

でも、そういう二葉の朴訥さに隼人が少しずつ(いい意味で)影響を受けていくという展開も狙っているなら、2人の「差」が大きいほうが効果的なのかも。
この後2人がどんなふうに成長していくのか気になるので、これもシリーズ化してくれると嬉しい。

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仁木悦子/仁木兄妹の探偵簿〈1〉〈2〉

仁木兄妹の探偵簿―雄太郎・悦子の全事件〈1〉兄の巻
仁木兄妹の探偵簿―雄太郎・悦子の全事件〈1〉兄の巻
仁木兄妹の探偵簿―雄太郎・悦子の全事件〈2〉妹の巻
仁木兄妹の探偵簿―雄太郎・悦子の全事件〈2〉妹の巻

1986年に亡くなった仁木悦子さんの作品の中から、著者と同じ名前の妹とその兄・雄太郎が探偵役を務める短篇を集めた作品集。

〈1〉「兄の巻」収録作品
「灰色の手紙」「黄色い花」「弾丸は飛び出した」「赤い痕」「暗い日曜日」「初秋の死」「赤い真珠」「だだ一つの物語」「(犯人当て)横丁の探偵」
〈2〉「妹の巻」収録作品
「木からしと笛」「ひなの首」「二人の昌江」「子をとろ 子とろ」「うさぎさんは病気」「青い香炉」「サンタクロースと握手しよう」「(犯人当て)月夜の時計」

背が高くてやせっぽちで大好きな植物の研究をしているのが一番幸せな兄・雄太郎と、チビで標準より太め、不思議なことに遭遇すると自分で解決せずにはいられない妹・悦子が様々な事件に遭遇し、持ち前の好奇心と探求心でその謎を解決する物語。

仁木さんの作品を読むのはこれが初めて。
安野光雅氏の表紙とタイトルに惹かれて図書館で借りてみた。

雄太郎も悦子も一般人なのに、こんなに次々と事件(しかも殆どが殺人事件!)に巻き込まれるという展開はどうなのよ?と思わなくもないけれど、最近のミステリのように殺伐とした雰囲気ではなく人情とか、人の温かさのようなものを最後にきちんと感じさせて終わるほのぼのした作風でとても読みやすかった。
謎解きもそんなにトリッキーでなく、普通の人がちょっと悪巧みして考えた、またはそういうつもりはなかったけど偶然が重なってそうなったといったちょっと緩めの雰囲気が私好み。

でも何より魅力的なのは、探偵役の仁木兄妹。
特に語り手である妹の悦子の好奇心溢れる行動力や、豊かな感情表現が物語を支えているといっても過言ではないと思う。
最初の作品で音楽学校に通う学生だった悦子は、その後新聞社所属のヘリコプターパイロットである浅田氏と結婚し、哲彦(テッチン)と鈴子(スウ子)2人の子どものママとして登場している。
結婚し子どもを持っても彼女の好奇心は健在で、時にはテッチンをお隣に預け、むずがるスウ子をあやしながら事件解明に駆け回ったりしている。
それでも彼女の行動が自分勝手で独善的に見えないのは、事件への好奇心と同時に、事件の関係者への思いやりと自分の家族(特に2人の子どもたち)への溢れるばかりの愛情もしっかり描写されているから。
悦子とテッチン、スウ子の、事件には直接関係のない他愛のない会話がさりげなく、でも愛情を込めて描かれているのが微笑ましかった。
(特に子どもたちを車に乗せるのを「積み込んで」って表現するのが私は好きだったな)

第一巻が「兄の巻」、第二巻が「妹の巻」となっているから、「兄の巻」では全て雄太郎が、「妹の巻」では全て妹が謎解きをするのかと思ったらそうでもない。
さすがに「兄の巻」では最初の何編かは雄太郎メインだけど、それも後半からは悦子に乗っ取られ(笑)「妹の巻」では完全に悦子の独壇場。
(時々思い出したように雄太郎が出てくるけど)
多分全体的に妹メインの作品数が圧倒的に多かった、ということなんだろうけど個人的にはちょっと仙人然とした部分もある雄太郎の存在もけっこう好きだったので、もうちょっと活躍してくれたらよかったな。
仁木兄妹の全集は長編ものもあるようなので、今度はこっちも読んでみよう。

仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈1〉夏・秋の巻
仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈1〉夏・秋の巻
仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈2〉冬・春の巻
仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈2〉冬・春の巻

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2008/05/28

覚え書き:梨木香歩原作『西の魔女が死んだ』映画化

なんと、来月(6月21日~)公開だそうで。
全然知らなかった~!

「西の魔女が死んだ」オフィシャルサイト

メニューをクリックしたときに表示される、おばあちゃんちへ続く小道がすばらしくキレイ♪
大きな画面で見てみたいな。
でも、絶対泣いちゃうだろうな…。

西の魔女が死んだ (新潮文庫)
西の魔女が死んだ (新潮文庫)
フォレスト・ストーリー~Sound Scape from 映画「西の魔女が死んだ」
フォレスト・ストーリー~Sound Scape from 映画「西の魔女が死んだ」

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2008/05/26

(株)NAKANOのPAGEOPENER(ページオープナー)

池袋LOFTの文房具売り場をプラプラしていたら、ブックカバーや栞などを扱っているコーナーで「PAGEOPENER」という商品を発見。
その名の通り、本のページを開いたままキープするためのグッズ。

本体のpageopener後ろに写っている(小さい)写真にあるように、真ん中の2本のピンを本の厚みを中心に表紙側に、両端の2本を開いたページの内側になるように差して使うらしい。

普通に本を読む時は特に必要ないけど、編み物するときにテキストを開いておけるものがないかな~と探していたので「お、これは!」と思って早速買って試してみた。

結果…う~ん、編み物の本を長時間開いたままキープするのにはちょっと不安定かも。
確かに何もないよりはいいけど(当然だ^^;)、置いておくと段々端のピンが浮いて来ちゃうのがちょっと気になる。
(表紙にキッチリ折り目を付ければいいんだろうけど、それが出来ない本好きのサガ…(笑))
ピンが全部同じ長さじゃなくて、両端がもうちょっと長めだったらよかったかも。
もう一つ買って上下で押さえておけば大丈夫かな。

この商品を扱っている(株)NAKANOは音楽関係の商品の企画・開発をしている会社らしい。
(この商品にも「MUSIC FOR LIVING」の文字が刻印されている)
ということはこれも本来は「楽譜用」ってことか。
楽譜だったらこのくらいの強度でちょうどいいのかな?

サイト内の「ミュージックギフトショップマーケット」で紹介されている音楽をモチーフにした商品(ストラップとかレッスンバッグとか)が可愛い♪

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2008/05/18

手編み:夏用ショール 途中経過(1)

手編み関連の記事のアクセスが増えてきたのに刺激されて、私も夏物の手編みを始めてみました。

去年はずっと小物(ドイリーとか)ばかり編んでいたので、今年はちょっと大物狙い。
早速本屋に行ってみたところ、去年よりも凝った編み方の本が増えているみたいな印象。
みんな上達してるってことなんでしょうかね(^^)

その中から私が選んだのは『上質のレース糸で編む 涼やかなかぎ針あみ』(日本ヴォーグ社)。

涼やかなかぎ針あみ―上質のレース糸で編む (Let’s Knit series)
涼やかなかぎ針あみ―上質のレース糸で編む (Let’s Knit series)

0~2号くらいのレース針で編む涼しげで華やかなベストやカーディガン、ボレロ、ショールなどがたくさん紹介されています。

最初はこの中のネット編み風ベストを編もうかと思って始めたのですが(簡単そうに見えたので)、実際に編んでみたら結構面倒くさい^^;
その上、本に指定されていた糸はちょっと高めだったのでちょっとお手頃価格なのを色だけ見て買ってきたら材質がアクリル100%のためか滑ってしまって編みにくい。
針を太くすれば(レース針2号→普通の編み針2号)編みやすくなるのですが、そうするとサイズが大きく変わってしまうし…ということで着るものは諦めてショールに変更した、という次第。
(アクリル100%のショールってのもどうなのよ?と思いますが^^;)

現在こんな感じ。

nitting-08summer01

昨日、今日2日で20段くらい。糸が細いのでなかなか進みません。
編み図では全体で150段くらい編むことになるようなので、完成まではまだまだ遠そうです^^;

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西澤保彦/スコッチ・ゲーム

スコッチ・ゲーム (角川文庫)
スコッチ・ゲーム (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
通称タックこと匠千暁、ボアン先輩こと辺見祐輔、タカチこと高瀬千帆、ウサコこと羽迫由起子、ご存じキャンパス四人組。彼らが安槻大学に入学する二年前の出来事。郷里の高校卒業を控えたタカチが寮に帰るとルームメイトが殺されていた。容疑者は奇妙なアリバイを主張する。犯行時刻に不審な人物とすれ違った。ウイスキイの瓶を携え、強烈にアルコールの匂いを放っていた。つけていくと、河原でウイスキイの中身を捨て、川の水ですすいでから空き瓶を捨て去った、と…。タックたちは二年前の事件の謎を解き、犯人を指名するため、タカチの郷里へと飛んだ。長編本格推理。

今回は長編。
タカチこと高瀬千帆が故郷から遠く離れた安槻大学に入る(つまりタックやボンちゃん、ウサコたちと知り合う)きっかけになった、連続殺人事件の真相を探る物語。

お、重い…。
事件の内容も重いけど、解明された真実も動機もあまりにも重くて救いがない。

こんな事件の当事者(というか中心にいる人物)になってしまったとしたら、タカチがあんなにエキセントリックな性格なのも理解できる。
でも、タカチがあんななのは「この事件があったから」ではないんだよね。
逆にその前のほうが大学時代よりも更に(性格的には)過激だった印象。
その原因についても物語の中で言及されていたりはするんだけど、ちゃんと納得出来る回答は出てこなかったな。
どっちにしても「面倒くさい性格の人だなあ」という印象は変わらなかったけど(笑)

文章は簡潔で読みやすかったけど、人間関係が入り乱れていてしかもその間に事件とは直接関係のないタカチや他の登場人物たちの心情や考察が入ってくるので事件の動きを理解するのが難しかった。
しかも事実の提示方法(順番とか、タイミングとか)にちょっと違和感あり。
例えば、上のあらすじで書いてあるアリバイは同じことが小説の裏表紙に書いてあるんだけど、これが作品の中で明らかにされるのはかなり物語が進んでから、解決編の直前くらいなのだ。
あらすじを書くのは作家本人ではないんだろうけど…なんだかちょっと変な感じがした。

キャラクターの描き方は巧い。
ただ、あまりに巧すぎて誰がメインで誰が脇役なのかを判断するのが難しい、とか話が妙に長い(直接事件と関係ない話が多い)という難はあり。
私としてはその「関係ない部分」のほうが(今回も)面白かったので、個人的にはいいんだけど、ミステリーとして読んだ場合はどうなんだろう?

特にタカチやタックたちの関係性の築きかたについての考察はなかなか考えさせられるところが多かった。
ボンちゃん(ボアン先輩)みたいな人が実際にいたら救われる人ってたくさんいるんじゃないかな。
でも、もしかしたらその真意に気付かずに、単に「しつこい人」「空気が読めない人」と判断されてしまう可能性もなきにしもあらずかも…。
人間関係って難しい(というか面倒くさい^^;)。

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西澤保彦/黒の貴婦人

黒の貴婦人 (幻冬舎文庫)
黒の貴婦人 (幻冬舎文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
飲み屋でいつも見かける“白の貴婦人”と、絶品の限定・鯖寿司との不思議な関係を大学の仲間四人組が推理した表題作。新入生が自宅で会を開き女子大生刺殺事件に巻き込まれる「招かれざる死者」。四人の女子合宿にただ一人、参加した男子が若者の心の暗部に迫る「スプリット・イメージ」ほか本格ミステリにしてほろ苦い青春小説、珠玉の短編集。

先日読んだ「謎亭論拠」「解体諸因」と同じシリーズの短篇集。
表題作他「招かざる客」「スプリット・イメージ または避暑地の出来心」「ジャケットの地図」「夜空の向こう側」の5編を収録。

この間読んだ2作が面白かったので、追いかけて読んでいるけど物語中の時系列と発行順、それに発行出版社がそれぞれバラバラなのでこれがなかなか難しい。
しかも、いくら同じシリーズとはいえ、状況や設定が違えば(当然ながら)それぞれ別のアプローチの作品になっているわけなので、自分が希望する作品が読めるわけでもないというのもあるし。

この本は前に読んだのと同じように短篇集だけど、雰囲気はかなり違った。
前2冊のように事件の概要だけがどんどん提示されてそれをパズルを解くようにみんなで推理して…といったアッサリした展開ではなく(そういうのもあるけど)、それぞれの物語の登場人物の関係性が詳細に描かれていたり、心情が吐露されたりしているので事件そのものはそれほどでもないのに物語そのものはかなりヘビィな印象。
特に「スプリット・イメージ」はちょっと読むのが辛かった。

その他の話も、推理や展開にあまり説得力がなかったような気がする。
事件の話よりもレギュラーメンバーから出てくるサイドストーリーに繋がるのであろうこぼれ話のほうが面白かったかも…。

あと、太田忠司氏が書いている解説が面白かった。
「この世には『議論を好む人間』と『そうでない人間』の二種類がいる」って話。
氏自身は前者で、高校の学校帰りに級友と「カレーライスは和食か洋食か」を巡って議論した思い出などが書かれていた。
これを読んで「そういえば私も学生の頃は、結論が出ない(というよりも「ない)」話を延々と喋っているのが好きだった」ことを思い出した。
まともに利害関係が絡んでいたり、感情的になってしまう議論というのは苦手だけど、ただ言葉遊びのように議論のために議論する、というのはけっこう好き。
最近はそういう話に付き合ってくれる人がいないのであまりしないけど、例えば会社のミーティングなどでもどちらの意見が「いい、悪い」「賛成、反対」とかではなく、「こういう考え方も出来ますよね」ってそのテーブルに上がっていない考え方をただ提示していくってのは時々やってたり…(笑)
そう考えると、ある内容の事柄について頭から「絶対に○○だ」という考え方ってあまりしない人間かも。
どちらかというと「どうでもいい」「どっちでもいい」というスタンスでいることが多いので感情的に視野狭窄にならずに済んでいる部分はあるけど、反面あまり周囲に興味がないことが多いので(笑)情報量が圧倒的に少ないという弊害もあるかな。
物事に対する姿勢がニュートラルで、偏らない見方が出来る「バランスの取れた人」になるのはなかなか大変だ。

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有栖川有栖/白い兎が逃げる

白い兎が逃げる (光文社文庫)
白い兎が逃げる (光文社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
「君を好きになった。君も僕に興味を持って欲しい。それが無理なら、離れたところから君を見守っているだけでもいい」―。ストーカー行為に悩む劇団「ワープシアター」の看板女優・清水玲奈。彼女を変質者から引き離すプランは、成功した筈だった。ところが、ストーカーの死体が発見され、事件は思わぬ展開に! 臨床犯罪学者・火村英生の論理的思考が冴え渡る、4編の傑作本格推理。

臨床犯罪学者・火村助教授と推理作家・有栖川有栖のコンビが活躍するシリーズ。
表題作他「不在の証明」「地下室の処刑」「比類のない神々しいような瞬間」の4編の中編を収録。

事件の発生から、主役2人の登場、捜査、推理、解決という流れがスムーズで巧い。
短篇だと物足りないし、長編だと話が複雑になってきて付いていくのが大変になるので、「中編」と呼ばれるこのくらいのページ数の作品が一番読みやすい。

4作の中では「比類のない神々しいような瞬間」が面白かった。
著者曰く「(作品のラストに明かされるある事実は)賞味期限のあるアイディア」とのことだったけど、初出から6年経っても「おお、なるほど」と感心できる私のような読者もいるわけだからよろしいのではないでしょうか?(笑)

表題作は内容が凝っていて、二転三転する設定が面白かったしラストの謎解きは意外性があったけど、その分話に付いていくのがちょっと大変だった。
脳の持続力や瞬発力がないとミステリーを楽しむのは難しい。

牛尾篤氏によるカバーデザインが印象的。

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畠中恵/とっても不幸な幸運

とっても不幸な幸運 (双葉文庫 は 18-1) (双葉文庫 は 18-1)
とっても不幸な幸運 (双葉文庫 は 18-1) (双葉文庫 は 18-1)

内容紹介
ややひねくれているけれど、料理自慢で世話好き店長のいる酒場。今日もクセモノ常連客が、いわくつきの「とっても不幸な幸運」の缶を持ち込んだ。缶から現れた物がもたらしたのは「災い」? それとも「幸せ」? 「しゃばけ」シリーズで大人気の作家が贈る現代版ファンタジックミステリー!

ヒャッキンで買った、『とっても不幸な幸運』という名前のカンヅメ。
見た目は何の変哲もないカンヅメだが、それを開けると開けた人物の過去の記憶やそれを象徴する幻が飛び出してくるという不思議なシロモノ。
それに惹かれるように起こる事件を、新宿のバー『酒場』のマスターや常連たちが解決していく短篇ミステリー連作集。

『酒場が舞台のミステリー』というと北森鴻さんの<香菜里屋シリーズ>が最初に思い浮かぶ。
でもあんな雰囲気を想像して読み始めると物語に入っていくのがちょっと大変。
「カンヅメを開けると幻や記憶やそれを象徴するものが出てくる」というファンタジー的な設定を理解して、素早く前述の想像と入れ替えることが出来るか、がこの作品を読むポイントかも。
(または最初から先入観なしに読むこと)

私はこの切り替えがなかなか上手く行かずにちょっと戸惑った。
だってその「カンヅメから不思議なものが出てくる」というのがこの中の全ての作品に共通する設定だということに、2つめの作品を読むまで気付かなかったんだから。
(1作目だけの特殊な設定かと思って読んでいた^^;)

それに慣れてしまえば、サクサク読めて終わり方もホッと出来る作品。
…なんだけど、それでもこの『酒場』のマスターや客の言動に、なんとな~く違和感を感じてしまったのは何故なんだろう?
なんとなく「とってつけた」的な発言や行動が目に付いてしまったような気がする。
特にマスターは連作の最後に出てくる若い頃のエピソードと、今の姿が上手く結びつかなくて何となく微妙な感じのまま読み終わってしまった。

舞台がバーじゃなければ…とも思ったけど、他人の大人がこんなに親密に時間や場所を共有出来るのはやっぱり「お酒を飲む場所」でしかあり得ないのかもなあ…。


香菜里屋を知っていますか
香菜里屋を知っていますか

<香菜里屋シリーズ>もこの作品で最後みたいですね。
だんだん工藤(マスター)が千里眼状態になってきて、ミステリーとしてはあまり興味がなくなっています…。
それよりも「香菜里屋の料理本」が出たら嬉しいかも^^;

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2008/05/11

ハセベバクシンオー/「相棒」シリーズ 鑑識・米沢の事件簿

相棒シリーズ 鑑識・米沢の事件簿~幻の女房~ (宝島社文庫 610 「相棒」シリーズ) (宝島社文庫 610 「相棒」シリーズ)
相棒シリーズ 鑑識・米沢の事件簿~幻の女房~ (宝島社文庫 610 「相棒」シリーズ) (宝島社文庫 610 「相棒」シリーズ)

内容紹介
大人気ドラマシリーズ『相棒』のスピンオフ小説が、劇場版の公開に合わせて発売に! 爆弾テロ予告事件が起こった東京ビッグシティマラソン。犯人を捜していた鑑識官・米沢守は、そのマラソンの参加者に、自身の逃げた女房を見つけ出してしまう。特命係の杉下右京・亀山薫がテロ予告事件の犯人を追うなか、米沢はひとり、逃げた女房の行方を捜していた……。『相棒』の人気キャラクター、鑑識・米沢が大活躍する、文庫オリジナルストーリー。

人気ドラマ「相棒」の現在公開中の映画版のサイドストーリー。
しかも主役は鑑識の米沢守。
いわゆる最近流行の「スピンオフ」作品ということ。

ドラマ自体けっこう好きで(全編ではないけど)よく見てるし、その中でも米沢を演じている六角さんは昔何度も下北あたりの劇場で生の舞台を拝見したことがあるので(勝手に)親近感を持って見ていた役者さんだった。
(六角さんが主役をやった「夜曲」は名作!何度見ても泣けました)
このドラマでも六角さん特有のオタクっぽいけど妙に人なつっこい、不器用そうに見えて実は手先が器用で繊細で気が利く。
といった微妙なキャラクターを米沢という登場人物に反映させて、今では特命係の2人にとってもドラマ全体にとってもなくてはならない存在になっているのが印象的。
本編のノベライズは見かけても「う~ん…今じゃなくてもいいか」って感じだったけど^^;、これは見た途端「あ、面白そう!」と思って即買いだった。

爆弾テロ予告があったマラソン大会の参加者に別れた(逃げた?)女房・知子の姿を見つけた鑑識の米沢が、事件解決後彼女を訪ねて職場とアパートに赴くが実際に顔を合わせることなくその場を去る。
それから2日後、「女性の変死体発見」の出動要請に応じて出掛けた先はそのアパートの彼女の部屋だった。
動揺を隠しながら職務を遂行する米沢。
状況から彼女の死が「自殺」で片づけられようとしていた矢先、所轄署の1人の刑事が米沢を訪ねて来る…。

最初にちょっとしたミスリーディングがあって、その後よく似た境遇の「相棒」と2人独自の捜査を展開し、真相を掴んでいく過程が丁寧に、しかも読みやすく判りやすく描かれていて面白かった。
しかも、テレビで見る米沢のキャラクターがそこにちゃんといて、「確かにこんなふうに反応するだろうなあ」とか「こういうこと言いそう!」って表現がそこここにあって、ストーリーや謎解きと同時にそうした部分も楽しく読むことが出来た。
特に、「相棒」と2人で自分のマンションに向かう途中、HIP-HOPのダンサーたちや小学生の男の子に気軽に声を掛けられる、という部分。
「得体の知れなさ」が逆に「愛すべきキャラクター」に感じられる描写がよかった。

右京と薫は予告テロの後始末に追われて手助けを求められない、だから米沢が自力で…という設定や、それでいてトリオ・ザ・捜一のメンバーや角田5課長、たまきや美和子などのレギュラーメンバーをさりげなく出してくる構成も巧かった。
ホントにこのままドラマ化しても大丈夫なのでは?と思える作品。
そうなったら嬉しいんだけど…。

次は、トリオ・ザ・捜一(特に歪んだ正義感・イタミン(as 川原さん)!)やいつもマイペースな角田5課長を主役にしたスピンオフを期待!

相棒 劇場版―絶体絶命!東京ビッグシティマラソン42.195km
相棒 劇場版―絶体絶命!東京ビッグシティマラソン42.195km
相棒-劇場版-オリジナルサウンドトラック
相棒-劇場版-オリジナルサウンドトラック

相棒-劇場版-

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畠中恵/ゆめつげ

ゆめつげ (角川文庫 は 37-1)
ゆめつげ (角川文庫 は 37-1)

出版社/著者からの内容紹介
『しゃばけ』シリーズで大ブレイク中の著者が贈る、軽妙な和風ミステリ!
江戸は上野の端にある神社で神官を務める粗忽な兄としっかり者の弟。兄には夢告の能力があった。その噂を聞きつけて舞い込んで来たのが、大店の行方不明の一人息子の行方を占ってほしいという依頼だったのだが……。

表紙のコミカルなイラストから、もっと軽く笑える短篇連作集を想像していたら、実際はわりとシリアスな内容の長編ミステリ。

その最初のイメージのギャップのせいか、なかなか物語に入っていけなかった。

繰り返される弓月の夢告の内容の解釈や、色んな思惑が絡まり合った周囲の事情が今ひとつ判りにくかったし、内容がシリアスなわりに中心にいる弓月はけっこう「のほほん」としている部分があって(まあ、そういう設定なんだけどね)、読んでいるこちらとしてはどんな感じで物語を捉えればいいのか迷っているうちに読み終わってしまったよ…という感じかな。

千年の昔から神を守り続けてきた「神官」という仕事が、幕末という時代を迎えて人の手によってその方向をねじ曲げられようとしていたことを描きたかったんだとは思うけど、何だか色んなものを詰め込みすぎだったような…。
大店の札差夫婦の息子探しと、辻斬り騒動はまた別の話にしたほうが判りやすかったように思う。

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