西澤保彦/黒の貴婦人
内容(「BOOK」データベースより)
飲み屋でいつも見かける“白の貴婦人”と、絶品の限定・鯖寿司との不思議な関係を大学の仲間四人組が推理した表題作。新入生が自宅で会を開き女子大生刺殺事件に巻き込まれる「招かれざる死者」。四人の女子合宿にただ一人、参加した男子が若者の心の暗部に迫る「スプリット・イメージ」ほか本格ミステリにしてほろ苦い青春小説、珠玉の短編集。
先日読んだ「謎亭論拠」「解体諸因」と同じシリーズの短篇集。
表題作他「招かざる客」「スプリット・イメージ または避暑地の出来心」「ジャケットの地図」「夜空の向こう側」の5編を収録。
この間読んだ2作が面白かったので、追いかけて読んでいるけど物語中の時系列と発行順、それに発行出版社がそれぞれバラバラなのでこれがなかなか難しい。
しかも、いくら同じシリーズとはいえ、状況や設定が違えば(当然ながら)それぞれ別のアプローチの作品になっているわけなので、自分が希望する作品が読めるわけでもないというのもあるし。
この本は前に読んだのと同じように短篇集だけど、雰囲気はかなり違った。
前2冊のように事件の概要だけがどんどん提示されてそれをパズルを解くようにみんなで推理して…といったアッサリした展開ではなく(そういうのもあるけど)、それぞれの物語の登場人物の関係性が詳細に描かれていたり、心情が吐露されたりしているので事件そのものはそれほどでもないのに物語そのものはかなりヘビィな印象。
特に「スプリット・イメージ」はちょっと読むのが辛かった。
その他の話も、推理や展開にあまり説得力がなかったような気がする。
事件の話よりもレギュラーメンバーから出てくるサイドストーリーに繋がるのであろうこぼれ話のほうが面白かったかも…。
あと、太田忠司氏が書いている解説が面白かった。
「この世には『議論を好む人間』と『そうでない人間』の二種類がいる」って話。
氏自身は前者で、高校の学校帰りに級友と「カレーライスは和食か洋食か」を巡って議論した思い出などが書かれていた。
これを読んで「そういえば私も学生の頃は、結論が出ない(というよりも「ない)」話を延々と喋っているのが好きだった」ことを思い出した。
まともに利害関係が絡んでいたり、感情的になってしまう議論というのは苦手だけど、ただ言葉遊びのように議論のために議論する、というのはけっこう好き。
最近はそういう話に付き合ってくれる人がいないのであまりしないけど、例えば会社のミーティングなどでもどちらの意見が「いい、悪い」「賛成、反対」とかではなく、「こういう考え方も出来ますよね」ってそのテーブルに上がっていない考え方をただ提示していくってのは時々やってたり…(笑)
そう考えると、ある内容の事柄について頭から「絶対に○○だ」という考え方ってあまりしない人間かも。
どちらかというと「どうでもいい」「どっちでもいい」というスタンスでいることが多いので感情的に視野狭窄にならずに済んでいる部分はあるけど、反面あまり周囲に興味がないことが多いので(笑)情報量が圧倒的に少ないという弊害もあるかな。
物事に対する姿勢がニュートラルで、偏らない見方が出来る「バランスの取れた人」になるのはなかなか大変だ。
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