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2008/05/31

坂木司/先生と僕

先生と僕
先生と僕

大学入学のために上京してきた極度の恐がり屋・二葉は、初対面の中学生・隼人に誘われ彼の家庭教師を務めることになる。
二人が一緒に歩くと何故かぶつかる不思議な事件。
トラブルに巻き込まれることを恐れて腰が引けている二葉を、都会っ子で頭のいい隼人が引っ張って事件(謎)を解決していく連作短篇集。

表題作他「消えた歌声」「逃げ水のいるプール」「額縁の裏」「見えない盗品」の5編を収録。

これも面白かった。
大学生と中学生の師弟コンビが遭遇する「日常の謎」系ミステリーで、内容もそれに合わせて血生臭いところは一切なくサクサク読める。
それでいて解決までの筋道やその途中で交わされる2人の会話に適度な深みがあって、読み終わったあとに爽快感とともにちょっとした深みも味わえる作品だった。

面白くしているポイントはやっぱり、二葉と隼人、主役2人のキャラクター設定の見事さ。
関東近県の田舎町から大学入学をきっかけに上京してきた二葉。
殺人事件が出てくるミステリーが読めないほどの恐がりだけど、「覚えよう」と思って見たものは5秒で記憶できるという特技を持っている、という設定。
一方、隼人はミステリーが大好きな東京生まれの中学1年生。
二葉よりも5つも年下だけど頭の回転の速さ、知識の豊富さ、観察力、洞察力、行動力、どれを取っても二葉の上を行き、彼を引っ張っていく。
その上、外見はジャニーズ張りの美少年で、謎の究明のためには女性陣に絶大な威力を持つその特徴を利用することも厭わない性格。
…という田舎者でちょっとドンくさい大学生と、都会生まれでスマートな中学生コンビのバランスがいい。
特に、顔がよくて頭がよくて生意気で…というだけでは、何となく鼻に付くヤなガキになってしまうであろう隼人を、例えば「区民プールのウォータースライダーに目を輝かせる」なんていうエピソードを入れて「なんだ、可愛いところあるじゃない」と受け入れさせてしまうちょっとした匙加減が「巧い!」と思った。
主役が好きになれるかどうかって、こういう作品では重要なことだよね。

ただ、隼人とのコントラストのためにあまりにも二葉に「田舎育ち、世間知らず」というキャラを振りすぎたという部分はあったかも。
あまりにも彼の理解力が乏しいのでそこにイラッとさせられることが時々あった。
確かに年齢や生まれた環境の違いはあると思うけど、6年というのは全く理解できないというほど離れているとも思えないし、環境的にもいくら田舎だとはいえTVや雑誌や新聞がある限りそんなに情報に疎いということは考えにくいと思えるんだけどな…。
しかも二葉は「そこにあるものを写真のように記憶できる」という特技があるわけでしょう。
「見える」「記憶できる」ということは、それだけで洞察力、想像力に繋がる才能だと思うんだけどなあ。

でも、そういう二葉の朴訥さに隼人が少しずつ(いい意味で)影響を受けていくという展開も狙っているなら、2人の「差」が大きいほうが効果的なのかも。
この後2人がどんなふうに成長していくのか気になるので、これもシリーズ化してくれると嬉しい。

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コメント

私も坂木さんの本とても好きですshinenote
まだ、「先生と僕」「青空の卵」しか読んだ事ありませんが、読みやすくて、面白い場面もあり、感動する場面もあってとても好きですshine

投稿: 檸音 | 2008/07/25 13:44

■檸音さん
こんにちは。はじめまして。

坂木司さん、読みやすいですよね。
ハートウォーミングで、きっちりエンドマークがつく作品ばかりなので読後感がとてもいいですし、どんどん作を重ねるごとに、文章や構成が上手くなっていると思います。
これからも活躍してもらいたい作家さんです。

取りあえずは「先生と僕」の続編が出ることを祈りたいです。

コメントありがとうございました[ハート]

投稿: tako | 2008/07/27 20:28

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