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2008年6月の10件の記事

2008/06/22

宮部みゆき/孤宿の人(上下)

孤宿の人 (上) (新人物ノベルス)
孤宿の人 (上) (新人物ノベルス)
孤宿の人 (下) (新人物ノベルス)
孤宿の人 (下) (新人物ノベルス)

内容紹介
それは海うさぎとともにやってきた。
江戸から金比羅代参で讃岐を訪れた九歳の少女ほうは、丸海の港で置き去りにされ、たった一人見知らぬ土地に取り残される。幸い、丸海藩の藩医・井上舷洲宅に奉公人として住み込むことになった。それから半年……、この丸海の地に幕府の罪人・加賀殿が流されてくること……。海うさぎが飛ぶ夏の嵐の日、加賀殿の所業をなぞるかのように不可解な毒死事件や怪異現象が井上家と丸海藩に次々と起こっていく……。
宮部みゆきが紡ぎ出す時代ミステリーの最高傑作! 装いも新たにノベルスで登場。

ちょっと話が入り組みすぎていたかな~…という印象。
登場人物が多くて視点がその都度入れ替わってしまったことや、自然現象として起こったこと、人間が意図的に起こしたことの区別が曖昧だったこと、同じ内容がなんども繰り返されていたこと、などが原因かな。

江戸で重職に就いていながら、家族、部下を斬殺した罪で遠く離れた丸海藩に流され、幽閉されることになった加賀殿の存在。
この物語の中心となる人物の持つ意味や、裏に隠された真実というものがなかなか明かされず、その周辺で起こる不思議(不気味)な事件のみが前面に出てしまったことが物語を曖昧にしてしまっていたと思う。

登場する人物の多くは、そうした藩の重大事項に触れられる身分のものではなかったから、彼らの目や耳にはそうした「真実」は現れず、ただある意図をもった「噂」や「伝聞」だけで右往左往している姿が描かれているということなのだろうと思う。
そして最初のうちは、その描かれない加賀殿に対する不安が物語を盛り上げていたことも確か。
でも、それが何度も繰り返されるうちにちょっと飽きてきて「そろそろホントのことを明かしてくれてもいいのでは?」と思ってしまったのであった。

だから、下巻で加賀殿の事件の真実が明かされ、やがて「ほう」との交流が始まりその人間性が少しずつ明らかになってきてからは物語がスムーズに流れ出したように思う。

とはいっても、それでもどんどん読ませてしまう、そして最後に泣かせて納得のエンドマークで終わらせるところに宮部さんの実力を感じるわけだけど。

相変わらず心に沁みる小さなエピソードが巧い。
特にそれまで「阿呆の「ほう」」とバカにされ続け、自分でも自分に自信がもてなかったほうに、加賀殿から新しい名前の漢字を贈られるエピソードがとてもよかった。

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2008/06/21

映画:「西の魔女が死んだ」

本日封切り。
たまたま出勤日だったので会社帰りに観にいってきた。

全体的に柔らかい印象。
声高な主張や喧噪がなく、静かな会話や繊細な表現の中で進んでいく物語。

おばあちゃんの住む緑溢れる田舎はとてもキレイだしその堅実で静かで健やかな暮らしぶりもとても素敵だった。
でも、その分なんとなく「現実離れ」してるってイメージがずっとあって(まあ、「お話」なんだから仕方ないのかもしれないけどね)何となく物語の中に入って行きづらく、気持ちが寄り添う部分が少なかったのが残念だった。

原作を読んだのが随分前だったので大筋しか覚えていなくて、やたら「泣いた」という記憶だけが残っていたので期待しすぎてしまったのかも。
(と言いつつ、ラストはやっぱり泣いたけど^^;)

何も起こらずただ淡々と過ぎていく時間がけっこう長くて、それがちょっと退屈だった。
いつも何か事件が起こっているジェットコースターのようなTVドラマや小説に毒されているのかなあ。
または直接的な言葉で説明されないと理解、というか納得できなくなっているのかも。
気配とか雰囲気とかを感じる感覚が鈍っているのかな…。

それから、食事にパン(洋食)しか出てこないのもちょっと違和感。
確かに庭の畑から穫ってきたレタスで作るサンドウィッチや、手作りのワイルドベリージャムをたっぷり載せたトーストは美味しそうなんだけど…いくらおばあちゃんはイギリス人だといっても、あれだけ長く日本で暮らしているなら時々は和食も食べて欲しかった。
あと、食事のシーンは多かったのに「おいしい」って言葉があまり出てこないのもちょっと気になったかな。

傷ついたまいを温かく静かに受け止めるおばあちゃんの家での暮らし。
その中で唯一まいの心を乱す隣人・ゲンジの存在がとても印象的だった。
粗野でだらしなくずうずうしい、ずけずけとものを言うゲンジはまいにとって「汚らしい大人の男」の象徴だったんだろうねえ。
そんな象徴の役をキム兄が巧く演じていた。(←誉めてるのか?(笑))
最後、おばあちゃんを亡くしたまいに彼が「いい人」の部分を垣間見せるシーンが印象的。
こういう部分を違和感なく演じられるところが「キム兄らしい」と思った。

でも、改めて思うけどまいってすごく恵まれてるよね。
急に「学校に行きたくない」って言い出す娘に、何も訊かずに「判ったわ。少し休みましょう」って言える親ってあまりいないでしょ?
で、実際にストレスの元から離れて、あんな優しい、全身で自分を受け入れてくれる誰かの元で傷を癒すことの出来たんだから。
もちろん、傷つかずに済むならそれにこしたことはないけど、傷ついてもそれを手当されることなく生きて行かなくちゃならない人が多いってことを考えたら、そういう環境があるまいは幸せだよね、と思うな。

エンディングで流れる主題歌『虹』(歌:手嶌葵)が印象的。
タイトルロールのバックは黒画面じゃなくて、2人が暮らしたおばあちゃんの家の映像だったらもっと良かったのに。

映画『西の魔女が死んだ』オフィシャルサイト


虹

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2008/06/16

金城一紀/映画編

映画篇
映画篇

出版社 / 著者からの内容紹介
物語の力が弾ける傑作!!
笑いと感動で胸が温かくなる傑作ぞろいの作品集。『ローマの休日』『太陽がいっぱい』など不朽の名作をモチーフに、映画がきっかけで出会った人々の友情や愛を描く。

映画をモチーフに、といってもその映画そのものをなぞるわけではなく、エピソードの一つとして使われているといった感じ。
いや、私が気が付いていないだけでもっと深くシンクロしているという可能性もあるか…^^;
でも、そういう知識がなくても気持ちよく楽しめる短篇集。
最初ちょっと重めな話で始まるので「ずっとこの雰囲気なのかな~?」と不安になったけど、だんだん柔らかで暖かな内容になってきたので安心して読めた。

特に愛する夫を亡くして元気がなくなった祖母を元気づけるために孫たちが2人の思いでの映画を上映する計画を立てる「愛の泉」がとてもよかった。
おばあちゃんの思い出話、個性的な孫たちそれぞれの生活と関係、そして中心人物(孫の1人)哲也の生活と恋の物語などいくつものストーリィが短い物語の中にきちんと収まっていて読み応えがあった。

昔自分の家族を殺した仇敵に立ち向かっていくパンチパーマで5等身のおばちゃんと両親が離婚しそうな小学生の男の子の1日だけの友情を描いた「ペイルライダー」も面白かった。

この作品で哲也たちが区民会館で無料上映する「ローマの休日」が全編に共通して出てきて、それぞれの登場人物たちが(そうとは知らずに)その上映会に集まってくるという設定が効果的。
映画という媒体の持つパワーを感じさせてくれる作品だった。

「太陽がいっぱい」「ドラゴン怒りの鉄拳」「恋のためらい/フランキーとジョニー もしくは トゥルー・ロマンス」「ペイルライダー」「愛の泉」の5編を収録。

「この世界は見えないシーソーみたいなものでさ、悪いほうに傾き過ぎたりすると、浜石教授みたいな人がそれに気づいてもう片っぽのほうに乗っかってくれるから、なんとかバランスを取れてるんだよね。わたしももっとがんばって、いつかちゃんとしたほうに乗っかれる人になりたいな」(「愛の泉」p342より)

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2008/06/11

ココログ:フリー版の広告が更にスゴイことに!

フリー版のココログに検索サイト経由でアクセスすると、記事の上部に広告が1つ余計に表示されるようになったという記事(「ココログ:フリー版の広告(Sponsored Link)表示がいつの間にか増えている件」)を書いたのは今年の1月。
この時も「広告が付くのは仕方ないけど、告知もなしに記事上部に表示を増やすなんてヤな感じ~」と思ったんだけど、今日久しぶりに検索からフリーのココログに飛んでみて驚いた。

記事下の広告が画像になってるんですけど~っ!しかもデカイ!

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しかもせっかく設定した「この広告はココログが自動的に挿入してるんですよ、私じゃないですよ」って注意書きも思いっきりなくなってるし、更に記事の幅と広告の幅が合ってないのです~ごく不細工だ…シクシク(泣)

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うわ~…こんなのまで出てきた…。
なんかちょっと泣きそうです(泣)

ココログさん、ここまでやりますか…。

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2008/06/09

文庫なのに?!

帰ろ~と思って池袋まで来たら、西武線が人身事故で運転見合わせ中。
「あ~あ」と思いながら、時間潰しに池袋リブロへ。

文庫の新刊平台を眺めていたら、以前読んだ『中村雅楽シリーズ』の著者戸板康二氏のエッセイ集『思い出す顔』を発見。
その後、ぐるっと棚を回っている間にもう一冊。
(なんと、谷崎の『細雪(上)』)

文庫2冊だし、どちらもそんなにページ数も多くない(300ページ前後)から1,500円も出せばお釣りが来るくらいかな~…くらいに思っていたのに、実際に会計したら合計が1,929円もしたのでちょっとビックリした。
取りあえずそのままお金を払ったけど、レジを離れた後念のため本を取りだして値段をチェックしてしまった。
(最近レジ打ちを間違われることが何度かあったので)
もちろん間違いではなくホントに1,400円と書いてあったわけだけど…こんなに高い文庫本を買うのは多分初めてだった。
1,400円って言ったら、もう殆どハードカバー価格じゃないですかっ!
(もちろん『思い出す顔』のほう。『細雪』は438円という文庫らしい価格だった(笑))

でも、講談社文芸文庫ってみんなこのくらいの値段なのね。
次に買うときは驚かないようにちゃんと覚えておこう。

思い出す顔 戸板康二メモワール選 (講談社文芸文庫 とF 1)
思い出す顔 戸板康二メモワール選 (講談社文芸文庫 とF 1)
細雪 (上) (新潮文庫)
細雪 (上) (新潮文庫)

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2008/06/08

【訃報】:氷室冴子さん死去

「なんて素敵にジャパネスク」 作家の氷室冴子さん死去(アサヒ・コム)

今日は朝から出掛けていてニュースも見ていなかったので、さっき帰ってきてムムリクさんのブログ記事(「ふたつの訃報」)にて訃報を知った。

私はコバルト文庫に代表されるような少女向けの小説にあまり夢中にあまり興味がなかったので氷室さんの作品もそれほど読んだ記憶がない。
覚えているのは上記のニュース記事のタイトルにもなっている『なんて素敵にジャパネスク』とあと数点くらい。
その中で一番印象的で今でも氷室さんの名前を聞くと真っ先に思い出すのは『なぎさボーイ』と『多恵子ガール』。
中学生(だったよね?)のなぎさと多恵子の不器用な恋の行方を描いた作品なんだけど、ほぼ同じ期間に起きたエピソードを『なぎさボーイ』ではなぎさ視点で、『多恵子ガール』では多恵子視点で書かれているのがとても新鮮で、「視点が変わるだけでこんなに物事って違うように見えるのね」と驚きながら読んだ記憶がある。
渡辺多恵子さんによる表紙のイラストがなぎさと多恵子のキャラにピッタリだったのも効果的だった。
(このシリーズはこの他『北里マドンナ』も読んだ記憶あり。ただ覚えているのはかろうじてタイトルだけみたい…)

それからAmazonで作品リストを見ていたら、マンガ『ライジング!』の原作って氷室さんだったのか~とか、『シンデレラ迷宮』ってずっと前にキャラメルボックスの舞台で見たなぁ、とか小説以外の部分でも作品に触れていたことが判った。

ここ10年ほど新作は発表していなかった模様。
ずっと闘病生活をされていたのだろうか。

ご冥福をお祈りします。

なぎさボーイ (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
なぎさボーイ (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
多恵子ガール (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
多恵子ガール (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
北里マドンナ (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
北里マドンナ (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
ライジング! 【コミックセット】
ライジング!  【コミックセット】
シンデレラ迷宮 (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
シンデレラ迷宮 (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
 

※ムムリクさんの記事にトラックバックさせて頂きました。

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2008/06/04

コンビニスイーツ:ハーゲンダッツ カシス&オレンジ

「季節限定」に惹かれて思わず購入。
バニラクリームとカシスのソルベがマーブル状になっていて、中にオレンジピールの粒々が入っていた。
カシスのソルベが濃厚だけど後味サッパリで美味しかった♪

かなりお気に入り~♪

※カシスリキュールが使ってあるので「アルコール分0.1% お酒に弱い方はご注意下さい」とのこと。

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2008/06/03

転換期~「選択する」ということ

私は「何かを選択する」ことがとても苦手である。

もちろん日常の中では、「今日着て行く服」とか「この仕事を今日やるか、明日に回すか」とか「この本を買うかどうか」とか「今夜何を食べるか」とか、さまざまな選択肢から何かを選ぶことは出来る。
(それが出来ないと生活がかなり大変そうだ…^^;)
でも、そういう日常的な「どっちを取ってもそんなに大差ない」選択ではなく、こと人生を左右するような選択についてはこれまで出来るだけ「しないように、しないように」生きてきてしまったように思う。

私の数十年の人生の中でも、それなりに大きな環境の変化や大切な人との出会いや別れがあったけれど、思い返してみるとそれが私が選択した結果であったことはそんなにないような気がする。

殆どの場合、周囲の動きに合わせて「じゃあ、あなたはこっちね」と割り振られるまま、相手に請われるまま自分をそこに動かしてその場に馴染ませて来た、という気がする。
自他共に認める「面倒くさがり」の私はこんなことも「面倒くさい」と思ってしまうのだ。
それってヒトとしてどうなのよ…という感じである。
(でも、そうやって人に割り振られたことでも、それで納得したのは自分だから、という意識はあるのでその結果が自分にとって不本意だったとしても、相手のせいにはしない、というくらいの矜持はある)
更にこれは「捨てることが出来ない」ということにも共通することかもしれない。
その内容が重要であればあるだけ、そのうちのどちらを捨てるか決めることを出来るだけしたくないと思ってしまうのだ。
(「選択すること」を『どちらかを得る』じゃなく、『どちらかを捨てる』と考えるあたりが私の性格を物語っているなあ…^^;)

そんな私に、降ってわいたように大きな選択が突きつけられたのはつい昨日のこと。
その前日まではそんなことが自分の身に起こるとはこれっぽっちも考えていなかったので、本当にビックリした。
その内容が自分の中で消化出来ず、実際に気持ち悪くなってしまったくらいの精神的ダメージだった。
(詳細を書くといろいろと障りがあるので曖昧でごめんなさい)

今まで大抵のことは、自分で決められないでいると誰かが適当に決めてくれたり、いつのまにかウヤムヤになったりしていたものだけど、今回のこの件ばかりはそうもいきそうにない。

2つのうちどちらかを自分で選んで、しかるべき時期までに回答をしなければならない。
そしてそれはどちらを選んだとしても、私のこれからの人生にとって大きな選択になるだろう。

今まで自分で考えて決める、ということを避けて来てしまった分、そうしたことに耐性がない自分がかなり不安ではあるけれど、これからのまだ短くはない(と思われる)人生の中で出来るだけ後悔をしないためにも、充分考えて答えを出したいと思う。

この件について家族に報告したところ、両親も弟も揃って
「どっちを選んでも応援するから、自分が好きな方を選べばいいよ」
と言ってくれた。
有り難いな~…と思う反面、「こっちにしろ!」って決めてくれたらもっと楽なのに…とちょっと思った自分が情けない(泣)

しっかりしろ!>自分

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2008/06/01

米澤穂信/氷菓

氷菓 (角川スニーカー文庫)
氷菓 (角川スニーカー文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実―。何事にも積極的には関わろうとしない“省エネ”少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ登場!第五回角川学園小説大賞奨励賞受賞。

久々の米沢作品。
「古典部シリーズ」第一弾、とのこと。
舞台は部活動がさかんな進学校、神山高校。
「無駄なことはしたくない」がモットーの省エネ高校生・奉太郎がひょんなことから廃部の危機に瀕していた古典部に入部したところから事件は始まる…。

小さな謎の積み重ねがあって、そこから物語全体に関わる大きな謎解きに繋がっていくというスタイル。
各章に散らばった小さい謎解きのほうはけっこう面白かったけど、古典部の部長になる"千反田(ちたんだ)える"の持ち込んだ謎については引っ張ったわりに結末はあまり意外性を感じなかった。
これは、私が年齢的に奉太郎たちよりも、謎の中心人物であった"える"の伯父のほうに近いというのが影響しているんだと思うけど。
もちろん、私自身がそれを体験した世代ではないけど、「その頃そういうことがあった」というのは知識として知っていて当然という程度には近い世代であったということ。
(少なくとも「そんなことがあったんだ」と初めて聞く話ではなかった)
更には「何があったのか」と並んでもう一つの謎であった、古典部の文集の名前「氷菓」についての謎解きもヒントが提示された時点でピンと来た。
これについてはアイドル系の歌謡曲の歌詞として頭にインプットされていたので、作品の中で登場人物の高校生が(その意味に)衝撃を受けている描写と私の頭の中でグルグル回ってるその明るいフレーズとの間のギャップが凄くて全然感情移入が出来なかったのだった…^^;

でも、そんなことより私がずっと違和感を持っていたのは主人公・奉太郎の性格。
まだ高校1年生の奉太郎が、

「やらなくていいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に」

という省エネスタイルを貫く理由がよく理解できなかった。
高校1年生の男子っていったら、放って置いても無駄なエネルギー放出しまくり、って存在じゃないの?
(すごい偏見ですが(笑)あ、そのエネルギーを何かに転換出来ればいいのかも~(笑))
もちろん、人はどんなモットーを持っていてもいいと思うし、実際私も基本的に「面倒くさいことは大嫌い。しなくていいことはしたくない」という性格なのでそういう考え方自体を否定するわけではない。
でもだからこそ、そういう性格って「気が付いたらそうだった」って類のものであって、「これが自分のモットーです」って他人に言ったりするものではないような気がするんだけどなぁ。
それを奉太郎はあまりにも何度も口にするから、私にはそれが自然と身に付いた、または元々彼が持っている性質なのではなく、敢えて自分に言い聞かせているように感じられた。
もしかしたらそれも一つの謎なのかしら。それとも考えすぎ?

ちょっと微妙な違和感があったけど短くて読みやすい作品、しかもシリーズものなので、このあとも読んでみる予定。

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東野圭吾/黒笑小説

黒笑小説 (集英社文庫 ひ 15-8)
黒笑小説 (集英社文庫 ひ 15-8)

出版社 / 著者からの内容紹介
東野圭吾が描く、「黒い笑い」
平静を装いながら文学賞の選考結果を待つ作家、内心では「無理だろう」と思っている編集者――。文壇事情を皮肉たっぷりに描く短編の他、笑いをテーマにした作品を収録した傑作短編集。(解説/奥田英朗)

東野さんの作品は「長くて、シリアスで、重いもの」のほうが評価が高いみたいだけど、個人的にはこういう「短くて、ふざけてて、ニヤッと出来る」作品のが好きだな。

誰かの行動やある現象を角度を変えて描くことでそこに立ち現れてくる違和感と可笑しさを扱った作品が多いんだけど、その題材の選び方、悪意の込め方、題材への執着加減が絶妙。
これ以上やったら醜悪になる、不愉快に感じられるというレベルギリギリのところで踏みとどまる自制心がスゴイ。
決して爆笑出来る内容ではないけど、「こんなことよく考えつくよな~」と思いながら読みながらニヤニヤ笑える作品ばかりで面白かった。

「もうひとつの助走」「線香花火」「過去の人」「選考会」「巨乳妄想症候群」「インポグラ」「みえすぎ」「モテモテ・スプレー」「シンデレラ白夜行」「ストーカー入門」「臨界家族」「笑わない男」「奇跡の一枚」の13編を収録。

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