東野圭吾/容疑者Xの献身
内容(「BOOK」データベースより)
これほど深い愛情に、これまで出会ったことがなかった。いやそもそも、この世に存在することさえ知らなかった。運命の数式。命がけの純愛が生んだ犯罪。
直木賞受賞作。
映画化に合わせて(?)文庫になっていたので読んでみた。
「ガリレオ」シリーズ初の長編。(400ページ弱)
最近、本を読むパワーが衰えていてついつい短篇集を選んでしまうことが多かったので、長編を読むのは久しぶり。
特に東野氏の長編には苦手意識があったのでちょっと不安だったけど、全体の展開にスピード感があったし内容も判りやすくて読みやすかった。
ただ、短篇のときのようにトリック自体が物理学を応用した原理がどうのってことではなく、犯人側の登場人物が湯川の大学の友人だったということで「ガリレオ」シリーズになっているのは何となく微妙な感じ。
その友人も「不遇な日々を送る数学の天才」という設定だけど、数学がどうこうってことでもないし。
といっても、「だからこそ判りやすかった」という部分も否定できない、というかまさに「正解」なのでそこを突っ込んではいけないんだろうな(笑)
ラストの謎解きは想定していたわけではなかったけど、思ったほど意外な内容ではなかった。
あ、なるほど、そういうことか~という感じ。
それよりも、物語の中では真相を知らされた登場人物たちはみんな衝撃を受けているのに、読んでる私は「まあ、そのくらいするかもね」なんて暢気に思っているあたりの心情的ギャップは一体何なんだろう?という疑問のほうが大きかったかも。
もちろん私だって現実の世界でそんなことが起こったら驚くだろうけど、推理小説の世界って何が起きてもおかしくないって状況になってるから読者を驚かせることが出来るのか、感動させられるのかというのは難しい問題なんだろうな。
ただ、この作品の魅力は、そうした意外性とかトリックとかではなく「石神」という登場人物をひたすらストイックにぶれのない人物像として書き上げたということではないかと。
実際にそういうタイプの男性が魅力的かどうかは謎だけど(だってやってることはストーカーと紙一重なんだから、されてる方としては相手の心の中が見えない限りやっぱり怖いと思う…)、この物語の中ではそういったことも含めて「石神」という人物を描き切ったことが単なる謎解き以上のものを読者に与えることが出来たのだと思う。
小説では大学の同級生で刑事の草薙が湯川のパートナー。
大人の男同士の会話がスムーズで、お互いを思い遣る気持ちに余裕と長い時間をかけて積み上げてきた信頼があって安心して読めた。
それがドラマ版では草薙の後輩の女性刑事・内海(柴崎コウ)が湯川と絡む役割になった。
今回の映画版でももちろんドラマ版を下敷きにした役割分担になるのであろう。
絵的には男女のペアのほうが華やかで面白いのかもしれないけど、湯川と草薙のやり取りの部分が映画版ではどうなってしまうのだろうか。
不安だけど興味深い。
またそれ以上に興味深いのは登場人物のキャスティング。
石神が好意を寄せる隣人・靖子役は松雪泰子。これはいい。
問題は石神。
石神は小説中では、
ずんぐりした体型で、顔も丸く、大きい。そのくせ眼は糸のように細い。頭髪は短くて薄く、そのせいで五十歳近く見えるが、実際はもっと若いのかもしれない。
と書かれちゃうような、いわゆる(見た目は)風采のあがらないオジサンとして設定されている。
その石神を演じるのがなんと堤真一!
どこをどうしたら、そういうキャスティングになるのだ?!^^;
いくら服装を地味にしたところで、堤さんは堤さんだと思うんだけどなあ。
まあ、主役の湯川が福山だから相手役があまりにも地味すぎたら、食われすぎて話にならないのかもしれないけどね。
一方、靖子が昔働いていたスナックの常連で、靖子も憎からず思っている印刷会社の社長・工藤。
工藤は金持ちでセンスがいいって設定なんだけどこっちの配役はダンカンらしい。
別にダンカンが悪いわけじゃないけど…堤さんとだったら、ねえ…?(失礼!)
このキャストでこの作品の雰囲気をどうやって再現するのか、あるいはしないのか(!)非常に興味が沸いてきたな。
映画は10月4日公開。
■容疑者Xの献身
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