大崎梢/平台がおまちかね
智紀は中堅どころの出版社・明林書房の新人営業マン。
先輩から譲られた担当エリアの本屋をスムーズに回ること、自分の顔と名前を覚えてもらうことが当面の目標。
そんな智紀が出先の書店で遭遇するちょっとした謎を営業仲間の真柴らと一緒に解決していく連作短篇集。
表題作他「マドンナの憂鬱な棚」「贈呈式で会いましょう」「絵本の神さま」「ときめきのポップスター」の5編を収録。
面白かった!
大崎さんの本は「成風堂書店シリーズ」を3冊読んだけど3冊とも「う~ん…」という感想を書いてきたので、ここで「面白かった!」と書けるのがすごく嬉しい!(笑)
だって、タイトルが「平台がおまちかね」なんだよ。
本好き、本屋好きならどんな内容かな~と思うでしょう?(笑)
で、読んでみたらすご~く面白かったので、大満足!でした。
「成風堂シリーズ」と今回の作品は本質的にはそんなに差はないんじゃないかと思う。
一番の違いは成風堂の登場人物が女性の本屋の店員さんで、この作品は男性の営業マンって部分。
ここがやっぱり大きいのかなあ。
中にいる人と外に出られる人の行動範囲は格段に違うものね。
あと、主役(語り手)の傍で解決に手を貸してくれる人たちも今回の作品のほうが役割をきちんと果たしているように思えたし、間違った推理が出てきてもそれをいつまでも引っ張らずにすぐに修正するスピード感もよかった。
うん、全体的に「成風堂シリーズ」よりも謎にまつわる部分がスムーズに読めたのがよかったのかも。
その分、物語のその他の部分に気持ちを入れて読むことができた。
みんな面白かったんだけど、特に閉店してしまった地方の小さな本屋の看板にまつわる謎を描いた「絵本の神さま」がよかった。
初めて訪問した地方の書店が閉店していたことにショックを受けた智紀が、そのお店がどんな営業をしていたか、どんなにお客さんに愛されていたかを知っていく過程がすごくスムーズ。
その中で、その書店が抱えていたある問題に辿り着き、そこに存在していたわだかまりを解く手助けをする話。
最初に出てきたある小道具が最後の解決に生かされている物語作りもよかったし、同時に全体に流れる「町の小さな書店」への愛の籠もった視線もとてもよかった。
「成風堂シリーズ」同様、書店や出版社周辺のお仕事事情がさりげなく、でも丁寧に書き込んであるのも読み応えがあって○。
最後の「ときめきのポップスター」に成風堂の多絵ちゃんの話がちょっとだけ出して前作を読んでる読者をニヤリとさせてくれる辺りも上手い、と思った。
オススメです。
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