米澤穂信/犬はどこだ
内容(「MARC」データベースより)
犬捜し専門の仕事を始めたはずなのに、依頼は失踪人捜しと古文書の解読。しかも調査の過程で、ふたつはなぜか微妙にクロスして-。いったいこの事件の全体像は? 犬捜し専門(希望)、25歳の私立探偵・紺屋、最初の事件。
読み始めたときは何故かなかなか進まなかった。
一旦読むのを止めて他の本を何冊か間に挟んだあと、1ヶ月ほど経ってから読み始めたら今度は(何故か)スルスル進んだ。
読み終わってみたら、今まで読んだ米澤作品の中でも一番読みやすい作品だった。
主人公の紺屋が探偵になった理由が「アトピー性皮膚炎」というのが意外性があって面白かった。
なるほど、人はいろんな理由で自分の進む道の軌道修正をしていくんだなあ。
行方不明になった佐久良桐子(さくらとうこ)の行方を追いかけるパートは面白かった。
特にネット上のトラブルが原因で…と判明してからの展開はスピード感があって一気に読めた。
曖昧にぼかして書いたつもりでも、いくつもの記述を丹念に一つ一つ積み上げると、本人に行き着いてしまう可能性がある…ということがかなりリアルに書いてあってすごく興味深かったし、「自分は大丈夫かな…」とちょっと不安になったり。
それに対して、古文書解読の依頼のほうはわざわざ紺屋に依頼してくる理由がイマイチ判らなかったなあ。
こんなの、どこから来たのか判らないような相手にお金払って調べてもらうよりも、地元の研究家でも探した方が早そうだと思うんだけど。
(実際に調査を担当した紺屋の部下(?)のハンペーはそういう人間を見つけて調査を進めたわけだし)
この古文書の内容が桐子の事件の解決にも繋がっていくので切り離せない話だったのだと思うけど、最後まで「取って付けた」感が拭えなかったのが残念。
ラストは紺屋が桐子を見つけてエンディングなんだけど、桐子が何をしたのか(またはしなかったのか)は不明のまま終わっている。
ちょっとスッキリしないけど、物語全編に登場していながら実際に姿を現して実際に話をするのはラスト近くのほんの2ページほど、という桐子の存在とともに作品に不気味さを与えていて私はけっこう好きな終わり方だった。
この作品はこのあともシリーズで続いているようだけど、桐子はその作品にもどこかに影を落としているのだろうか。
次の作品が楽しみ。
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