不知火京介/女形
出版社 / 著者からの内容紹介
乱歩賞作家が満を持して放つ驚異の歌舞伎ミステリー
京都と東京 同じ日、同じ時、遠く離れた舞台上で、2人の名優が怪死した。絢爛たる世界に潜む闇が蠢きだす!
2人の名優は、なぜ同時に死なねばならなかったのか。
演じる者の業、家門を守ろうとする執着 桔梗屋の内弟子・堀内すみれが、封印された梨園の謎(トリック)を解き明かしたとき、凄絶な愛憎の一幕が浮かび上がる。
歌舞伎界を舞台にしたミステリー。
事件の謎解きだけでなく、一般とは一線を画したその世界の内部事情も丁寧に描かれていて興味深いし、文章も読み易かった。
(でも、内部の人間関係は名前が入り乱れていて時々わけわかんなくなった^^;)
探偵役である若手歌舞伎役者のすみれが単に謎を解く役目だけでなく、彼自身ある秘密を持たされているところが普通のミステリーとはちょっと変わっていた。
最初は事件そのものとは無関係だったすみれがその秘密によって徐々に物語の中心人物になっていく構成が面白かった。
ただ、その秘密とは別に桔梗屋がそれほどに目を掛けるだけの実力・魅力をすみれが持っていると読者に説得する力が少し足りなかったかなあ、という印象。
加えて、作品中のすみれの言動が普通の若い子っぽすぎて、「歌舞伎役者」を感じることが少なかったのも残念だった。
いくら駆け出しとは言っても、もうちょっとそれっぽくてもよかったのでは。
ロシア系アメリカ人の歌舞伎役者 青松のキャラクターが秀逸。
2m近い身長と金髪碧眼という外見はどこから見ても外国人、とても日本人、ましてや歌舞伎役者には見えないのに、操る言葉、日本文化の知識、果ては情の世界までも日本人より日本人らしさを持つ青松に、最初は警戒していた"すみれ"や"やんま"が少しずつ心を開いて親しくなっていく様子が丁寧に描かれて、それが最後のキーマンとしての役割にきちんと繋がっているのがよかった。
また、本編にはあまり関係ないけど、彼が語る夢は「なるほどね~」と思わせられた。
そういうことを実際に考える人がいてもおかしくはないかも。
でも実際問題として、現在の歌舞伎界というのは彼のような人でも日本人と同様の条件で入門出来るのかな?
あと、名門・山城屋の御曹司 信十郎もよかった。
京都の観光名所などの話題もさりげなく入っていて、いろんな楽しみ方のできる一冊。
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