ナンシー・アサートン/ディミティおばさま現る 優しい幽霊1
ディミティおばさま現わる (ランダムハウス講談社 ア 5-1 優しい幽霊 1)
内容紹介
米独立系ミステリ専門書店協会による20世紀ベスト・ミステリ100選出
幼い頃に大好きだった物語。
でもまさか、その主人公から遺言状が届くなんて!?
英国の小さな家が舞台のほのぼのミステリ
幼い頃、いつも母が聞かせてくれた『ディミティおばさまの物語』。
優しくて冒険心いっぱいのおばさまは、ロリのお気に入りだった。
でもまさか実在していたなんて!?
ある日突然、ディミティの遺言状を受け取ったロリは、指示されるがままに英国のディミティ邸へ。
すると暖炉の火がひとりでに燃えたり、白紙の日記帳に文字が浮かびあがったり――。どうやら幽霊になってもなお、おばさまは何か心の傷を抱えているらしく・・・・?
幽霊の謎に迫る、シリーズ第1弾
本の裏表紙に書かれていたあらすじ(上記と同じ文章)と、表紙の可愛らしいウサギのぬいぐるみのイラストを見て(またしても(笑))勝手に
「おとぎ話を卒業した(12歳くらい?)女の子が、昔好きだったお話に出てきた登場人物が実在していたことを知り彼女の遺した家に遊びに行く。そこにはその登場人物が幽霊として住み着いていた。その家の周囲で起こる不思議な事件を少女とおばさまの幽霊が協力して解決していく」
って感じの話かと思って読み始めたんだけど…見事に違っていた(笑)
まず主人公のロリは10代の少女ではなく、30代の女性。
しかも離婚して家庭も仕事も友達も失った上に、意地を張って疎遠になっている間にただ一人の肉親であった母も亡くしてしまい生きる気力を失いかけている…という設定。
そんなロリが、かつて自分を楽しませてくれた物語の中のディミテイおばさまが実在の人物だということ、しかも亡くなった母と親友だったことを知り、おばさまの遺言に従ってイギリスにあるおばさまの愛した小さな村の小さな家に滞在することになる。
そこでロリはおばさまが自分の中に閉じ込めて、親友である母にも明かさなかった悲しい「秘密」の正体を探し、その哀しみからおばさまの魂を解放する。
そしてそれは同時に、自分に自信を失い、母を孤独の中で一人死なせてしまったことで自分を責め続けるロリへの救いと癒しでもあった…という感じの話だった。
というわけで、思っていたのとは全く違う話だったけど、すごく面白かった。
この作品の魅力は、展開がスピーディで、登場人物が個性的かつ魅力的、しかも作品中に出てくるいくつものディミティおばさまの物語を始めとした物語の設定がきちんと考えられ読者に対して丁寧に判りやすく書かれていたところ。
そして何よりもその作品の魅力を余すところなく伝えてくれた(のであろう)鎌田三平氏の翻訳がすごく良かった。
この旅行(冒険)の中で傷ついたロリは自分への自信と母への愛を取り戻すと同時に、自分が愛する人、大切にしたい人も手に入れることになる。
私は恋愛小説は殆ど読まないのだけれど、この物語は不器用な二人が時々ぶつかりながら、でも少しずつお互いを受け入れ信頼し、寄り添い合っていく様子が丁寧に、でも邪魔になることなく書いてあるので自然に読むことが出来た。
この作品は《優しい幽霊》シリーズの1作目、とのこと。
イギリスでは14作が発表されていて、それが順次翻訳される予定らしい。
なかなか読み応えのあるシリーズになりそうなので今後の出版が楽しみ。
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