近藤史恵/ヴァン・ショーをあなたに
下町の気取らないフレンチ・レストラン「ビストロ・パ・マル」のお客が持ち込んでくる謎を無愛想なシェフ・三舟が解決する作品を中心にした連作短篇集。
表題作他「錆びないスキレット」「憂さばらしのピストゥ」「ブーランジェリーのメロンパン」「マドモアゼル・ブイヤベースにご用心」「氷姫」「天空の泉」の7作を収録。
先日読んだ『タルト・タタンの夢』の続編。
前作では、全ての作品が「ビストロ・パ・マル」で起こった謎をギャルソンの高築くん視点で書いてあったけど、今回は7編のうち最初の4編が同じパターン、残りの3編のうち「氷姫」は「パ・マル」とは全く別の場所、別の人間関係の中で起こった悲しい物語に三舟シェフが回答を与える物語。
(これはよく読む近藤さんの他の作品にイメージが近い感じ)
そして、残りの2編は「パ・マル」のシェフになる前に世界中を放浪していた三舟青年を描いた物語になっている。
作品の構成は若干変化があったけど、どの作品も柔らかい雰囲気と納得できる展開、そしてそこに上手く「料理」というモチーフをきれいに組み込んだ前作同様魅力的な作品集になっていた。
そして何よりも読み終わったあとに、ホッと息をつけるそんな結末が全ての物語に与えられているのが素晴らしかった。
どれもよかったけど、中でもこの作品集の多くの作品で、疲れ果てたお客に三舟が振る舞うヴァン・ショー(シナモンやオレンジなどのスパイスを漬け込んだ赤ワインを温めたもの)の由来を描いた表題作が絶品。
無愛想だけど、洞察力に優れて、何より美味しいものを食べること、作ることに情熱と愛を持っている三舟青年が老婦人の心に刺さった棘を抜いて「安らかさ」を取り戻してあげる結末が見事だった。
もっともっと続編が出るのを期待したいシリーズ。
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