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2008/10/16

映画:容疑者Xの献身

ふとカレンダーを見たらレディスデーで1,000円で映画が観られることに気が付いたので、速攻で会社を出て映画館へ。
何にしようかちょっと迷ったけど、やっぱり一番「旬」かなあと思って「容疑者Xの献身」を見てきた。

予想していたよりもかなり面白かった。

原作をつい2ヶ月前に読んだばかりでさすがの私も(笑)ストーリーをちゃんと憶えていたので、内容がすごくよく判ったのが勝因(?)かも(笑)
動機とか、トリックとか基本的に原作に忠実に作られていた。
もちろん全部が全部そのままというわけには行かないので、省略してある部分も結構あったけど(特に人間関係とか)その切り取り方が巧いので基本的なストーリー展開には支障がなかったし、却ってシンプルになった分判りやすくなっていたと思う。
映画だと心理描写が小説ほどはきちんと伝わらないので、そういう部分をどうやって映像で観客に理解させるかが難しいと思う。
しかもこれは心理戦のミステリーだしね。
その点について巧く処理されていたんじゃないかな。

ただ、それに合わせてトリック解明の手順とかもかなりアッサリしたものになっていたのはちょっと残念。
その分判りやすくはあったんだけど、もうちょっと石神(堤真一)が仕掛けた謎に振り回される感じが出ていたほうがよかったな。

ラストはどんなシーンで終わるのかに興味があったけど…ここは期待してたほどって感じだったかな。
まあ、トリックも結末も全部判っていて見てるんだから仕方ないけどね。

あと、私としては湯川(福山雅治)が真実と友情の狭間で迷い、悩む姿がもっと見たかった。
原作では、警察の捜査とは別の部分で個人的にもっと動いていたでしょう。 そして自分の仮説を証明する事実を見つけるたびにそれによって苦しんでいた。
もちろん映画でもそういうシーンはあったけど、もっとそこを掘り下げて欲しかったなあ。

でも、全体的に丁寧に、誠意を持って作られた、原作を裏切らないいい映画になっていたと思う。
特に湯川が石神のアパートを訪ねていって、一緒に酒を酌み交わすシーン(途中で石神が数学の問題に夢中になって、湯川が待ちきれずに寝ちゃうとこ)が原作のイメージ通りですごくよかった。

心配だった内海刑事(柴咲コウ)と湯川のやり取りも、間に草薙(北村一輝)を配置することで、TVドラマのときよりも落ち着いた雰囲気で違和感なく仕上がっていた。
堤さんの石神はやっぱり原作よりもカッコよかったけどね(笑)

冬のシーンが多いので、もう少し寒くなってから見たほうが雰囲気が出ていいかも。

容疑者Xの献身

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コメント

>冬のシーンが多いので、もう少し寒くなってから見たほうが雰囲気が出ていいかも。
そうなんですよ。それ、すごく思いました。
あの雰囲気は冬でないとね。ブルーシート生活者が伏線なわけだし。堤さんの寒さに背を丸くしてマフラーに顔をうずめて歩くのが印象的でしたね。

>もっとそこを掘り下げて欲しかったなあ。
やはりそうなんですね。原作を先に読んでおくべきだったんだ。きっと、こんなはずじゃあってことがあったの。

ぶんぶんさんが貸してくださると言ってくださったので、楽しみにしてるんです。

投稿: 桜桃 | 2008/10/16 10:41

■桜桃さん
こんにちは♪

>原作を先に読んでおくべきだったんだ。

原作ものっていつも「どっちにしようか」迷いますよね。
私は(上の記事にも書いてますが)映画の心理描写を読み解くのがどうもヘタクソみたいで、「この視線の意味はなんだったんだ~!」とか、「結局嫌いなの?好きなの?どっちなの?」とか、いつもイライラしちゃいます。
(だから、あまり深い意味のないアクションとかコメディの映画が好きなんですよね(笑))
だから原作を読んでおくとそういう微妙な関係性もすごくよく理解できて「なるほど!」と思えるのですが、同時にストーリーも結末も知ってしまっているからどんなラストでも驚けないってのもあるんですよね。

特にこの作品は最後の謎解きがキモじゃないですか。
あれを知ってるのと、知らないのではどっちが幸せなのかな~と思いながら見てました。

これから原作を読むんでしたら、桜桃さんが「こんなはずじゃあ」って思った湯川先生の苦悩がたっぷり堪能できると思います。
私は読んでいる間、そういう湯川の気持ちに傾いてしまって(石神が淡々としていたから余計かも)、最後で石神の想いに同調出来なかったなあ、という感じでした。

原作の感想、楽しみにしています。

コメントありがとうございました♪

投稿: tako | 2008/10/16 21:33

こんばんは、米子からです。

湯川の葛藤と苦悩を映像で描くのは、難しいでしょうね。
あの、徹夜で数学に取り組み場面、好きです。


投稿: | 2008/10/16 22:50

■涼さん
こんにちは。

>徹夜で数学に取り組み場面

友人を訪ねるのに「数学の問題」をお土産にする湯川も、せっかく訪ねてきた友人を放り出してそれに夢中になってしまう石神もどちらも「らしくて」いいですよね(*^-^)
映画では本が山積みになった山神の部屋も、その中で窮屈そうに(でも満足そうに)眠りこけている湯川もよく撮れていてとてもいいシーンでした。

投稿: tako | 2008/10/19 14:19

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