石田衣良/非正規レジスタンス―池袋ウエストゲートパーク8
「IWGP」シリーズ最新刊。
この作品はシリーズ8作目なんだけど、私は4作目の『電子の星』以降読んでいなかったのですごく久しぶり。
以前は新刊が出るたびにサイン会にも行っちゃうくらい好きだったのに、最近とんとご無沙汰だった。
(というか、衣良さんの作品自体、最近読んでないな^^;)
そんな状態で何故いきなり出たばかりのこれを読んだかというと、会社の後輩くんが
「読み終わったんで貸しますよ~」
と言ってくれたから。
でなければ、この作品を読むのは早くても文庫に落ちる2~3年後だったかも…。
そんなわけでIWGP8作目「非正規レジスタンス」なわけですが。
…なんだかパンチが足りない…。
文章は相変わらずスピード感があってすごく読みやすいんだけど、あまりにもスムーズすぎて引っかかりが全然ないんだよね。
スルスルスル~ッと読めちゃうんで、ボーッと読んでいたらそのまま終わってしまった、って感じ。
特に最初の2作(「千川フォールアウト・マザー」「池袋クリンナップス」)にそれを強く感じた。
元々マコトたちっていろいろぶっ飛ばしているように見えて実は一番大事な、譲れない部分はきちんと守っているという人間的な正しさというものをちゃんと持っているところが魅力。
私もそこが好きで、その部分に何度も泣かされた。
だから今回も最後がきれいに終わるのはいいんだけど、そこに至るまでの展開がなんだか薄い感じがするんだよねえ。
「いや、そんなのマコトじゃなくても解決できるんじゃ?」と思ってしまうことが多かった。
特に各編の最初の部分で、マコトの独白の形でこれから始まる物語がこんな話だって解説してあるのがすごく気になった。
(前もこんな始まり方だったっけ?)
確かに「切り捨てられていく社会的弱者」の問題も「環境」の問題も大切かもしれないけど、それをわざわざ「こういう話が書いてあるんだよ」って説明しなくてもいいんじゃないの?
それを言わなくても、理解させるのが「物語の力」ってヤツなんじゃ?
それとも、そうでもしないと伝わらないと衣良さんは思っているということなのかなあ…。
でもさすがに表題作「非正規レジスタンス」は面白かった。
これだけは積み重ねられたエピソードのバランスや細かい伏線、ざらつく手触り、愛すべき登場人物たちの痛みや苦しみがきちんと伝わってくる作品だった。
現実と比較して考えるとラストがちょっと上手く行きすぎって感じがあったけど…お話だからこれでいいのかな。
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