北村鴻/冥府神(アヌビス)の産声
内容(「BOOK」データベースより)
脳死臨調でリーダー的存在であった帝都大学医学部教授の吉井が刺殺された!かつて吉井の部下だった医療ライターの相馬は、やはり研究室を去った元同僚を追う。その男、九条は、新宿のホームレス街にいた。不思議な能力を持つ少女、トウトとともに…。九条と殺人事件との関係は?また、彼が行った禁断の実験とは?深い余韻を残す医療ミステリーの傑作。
日本で"脳死"という概念が法律的に認められたのが1997年。(臓器移植法)
その"脳死"をテーマとしたこの作品の初出も同じ1997年。
帯のコピーに「北森鴻、初期の傑作」と書いてあったけど、この発表のタイミングを考えただけでも「さすが」という感じ。
内容は脳死の法整備に対して推進派のトップであった大学教授が何者かに殺された事件の真相をかつて彼の教え子であった医療ライターの相馬が一人で追いかけ、ついに意外な犯人をつきとめる…というストーリー。
登場人物が多いので途中ちょっと混乱するところもあったけど、全体的に読みやすく判りやすいストーリーの物語だった。
物語の中盤で推進派のリーダーと保守派のリーダーの考えが入れ代わっていたことが判明するんだけど、その原因がある酷似したことがそれぞれの身近に起こったことだった、という展開がとても印象的だった。
"脳死"というものの持つデリケートさ、割り切れなさが非常に巧く表現された部分だったと思う。
新宿西口のダンボール村の住人たちとか、製薬会社の怪しい営業部員とか脇役の使い方も巧かった。
ただ事件には直接関係しないものの物語の象徴的な存在として登場する謎の少女・トウトは印象的ではあるものの、結局何者だったのかよく判らないまま終わってしまったのがちょっと腑に落ちなかったな。
「敢えて」そういう書き方をしたのかもしれないけど。
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