今野敏/イコン
内容(「BOOK」データベースより)
マニアを熱狂させるバーチャル・アイドル、有森恵美。主役が登場しない奇妙なライブで、少年が刺殺された。警視庁生活安全部少年課の宇津木真は、仮想現実の世界で生まれたリアルな殺意の真相を探る。電脳メディアに宿る、現代の「聖画」とは!?若者たちの神々は降臨するのか…。傑作長編ミステリー。
安積班シリーズの長編。
この作品が書かれた1985年当時は「バーチャルアイドル」なんて概念はまだまだ「知る人ぞ知る」って感じだったんでしょうねえ。
情報だけの存在に人々の関心が集まり、熱狂し、ビジネスになり、やがてそれが実体を持って行く…今まで考えたこともないそんな存在をどう理解したらいいか判らず右往左往する(安積班を含めた)警察の捜査陣の混乱ぶり、そしてその混乱の中にあっても、刑事としての勘や積み上げてきた捜査資料から着実に真実に迫っていく様子が非常に丁寧にしかも読みやすく描かれていて読み応えがある作品でした。
それにしてもいまやインターネットという情報網は私たちの生活にとって当たり前のものになりそこから発信される膨大な情報、知識を日々受け取り続けている現在の状況を考えると、その侵食力・影響力の大きさに改めて脅威を感じますね。
この作品では事件の捜査を通して安積、速水、そして本庁生活安全課の宇津木という3人の同年代の警察官が登場します。
この3人の対比もかなり興味深いものがありました。
特に今までは仕事にもやりがいを見出せず、家庭も崩壊寸前だった宇津木が、安積と捜査活動を共にし、その仕事ぶり、部下との接し方に触れることで少しずついい方向に変わっていく過程が非常に印象的でした。
公的な犯罪捜査の部分と、こうした私的な部分が乖離せずにどちらも一人の男の人生の要素として自然に描かれている部分に深みを感じました。
3人の中ではやっぱり一番速水がカッコいいなあ、と思うのですが、彼はある意味ズルい役ではありますよね(笑)
でも安積がいつも細かいことに心を砕いて周囲と接しているように、速水には速水なりの気遣いや想いや迷い、悩みがあると思うので、そういう部分が描かれている作品が読んでみたくなりました。
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