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2009/05/16

今野敏/蓬莱

蓬莱 (講談社文庫)
蓬莱 (講談社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
そのゲームには「日本」が封印されている!?人気沸騰のゲームソフト「蓬莱」を開発したソフトハウスは、パソコン版に続きスーパーファミコン版を計画した。しかし、恫喝し、力尽くでその発売を執拗に妨害する巨大な力が…。バーチャル・ゲームと伝奇世界がリアルに交錯する傑作エンタテインメント巨編。

安積班シリーズの長編です。

主役は小さなゲームソフト会社の社長・渡瀬。
彼の会社の若手社員・大木が中心となって作成された「蓬莱」というゲームソフトを巡って起こる事件に所轄の担当者として安積が関わっていくという構成になっています。

いつもの安積班メインの作品とはちょっと異質な印象でしたが、とても面白かったです。

物語のキーワードとなるのは「蓬莱」と名付けられたシュミレーションゲームなのですが、このゲームのディテールの設定が見事。
重要なアイテムなのですから当然といえば当然なのですが、かなり細かい部分まで手を抜かずきちんと設定してあるし、何よりゲームとして「面白そう」と感じました。
このゲームソフトが全ての鍵を握っていて、これを中心に事件が動いていることを考えると、そのアイテムをどれだけ魅力的にみせることが出来るかがポイントだと思うのですが、そういう意味で「蓬莱」の描写は成功していたと思います。
といっても私自身はこういうシュミレーションゲームのような手の込んだゲームにはあまり興味も知識もないので、あくまで「小説の中の設定として」という判断しか出来ませんが。 

また、今回の作品では「蓬莱」自体の解説の他にも設定の元となる史実や学説、人物についての解説がかなり詳しくページ数を割いて記述されています。
私はこういう歴史的薀蓄みたいなのも好きなのでけっこう面白く読んだのですが、いつもの「安積班シリーズ」の1作品として読み始めるとちょっと面食らうかもしれません。
確かに事件のベースになる考え方だし、すごく判りやすく書いてあるのですが、物語の展開の上でここまでの分量が果たして必要だったのかどうかはちょっと疑問を感じました。
(「QEDシリーズ」に比べればカワイイものですけどね…って比べる対象が違うか^^;)

この作品では渡瀬の目を通した安積が描かれています。
(特に前半)
通常の作品では安積の心理描写が(しつこいくらい)出てくるので、安積は仕事が出来るし部下や同僚からの信頼も篤いのに心配性で気にしぃというイメージあるのですが、こうやって第三者(しかも心当たりのない暴行を受け不安な一般人)の目から見た安積は、その表情の内側で何を考えているか判らないため事務的でとっつき難い印象に映るということが(当然のことではあるのですが)新鮮でした。
(その後、時間の経過とともに渡瀬にも安積の本質が理解されていくのですが)
誰の目から見るかで同じ人物でも違った印象で見えてくるのが面白いですね。

導入部、設定、伏線、展開、エピソード、どれもスムーズですが同時に緊迫感がある展開で、非常に面白い作品でした。
登場人物も一人一人丁寧に設定されていて、物語に説得力と厚み、深みを与えていました。

これで現在出版されている安積班シリーズは全て読了。
充分楽しみましたが、もう次に買うものがないのが寂しいです…。
でも、このシリーズのおかげで今まであまり意識していなかった「警察小説」というジャンルに、興味が湧いたのでこの系統の本から次のお気に入りを探してみたいと思います。
※面白い作品をご存知の方、教えて下さい!

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