越水利江子/花天新選組-君よいつの日か会おう
内容(「BOOK」データベースより)
現代の少女がタイムスリップし、幕末の新選組隊士に!否応なく戦闘に巻き込まれ、泣いたり、わめいたりしながらも、やがて総司への想いを胸に、鳥羽伏見の戦いに…。壮絶に燃える幕末ファンタジー。
前作では幕末の沖田が秋飛のいる現代に飛んできた、という設定でしたが、今回は秋飛のほうが幕末にタイムスリップして新選組の隊士になる(死にかけた隊士の身体に秋飛の意識だけが入り込む)という設定になっています。
新選組の隊士たちのキャラクターや史実、時代の中で果たした役割などは丁寧に判りやすく書いてあるのですが、そこがあまりにもカッチリし過ぎていて「秋飛」という異分子が入り込んだことによる「ずれ」とか「遊び」の部分があまりなく、全体的に普通の「新選組もの」になってしまっているのが残念でした。
元々は女の子であった、とか剣の修行をしていた、とかいう前提の部分を活かせば、もっと「物語」として膨らますことが出来る部分が多かったような気がするのですが。
逆に考えれば、それだけ著者が「新選組」という集団に対して真摯であったという証なのかもしれませんが。
一番気になったのは、幕末に飛んでから最後まで秋飛が一度も現代に戻る部分がなかったということ。
秋飛にとっては沖田が一番大切な人物になっていたということや自分の意志でどうこうできることではなかったということだと思うのですが、現代にもまた秋飛を心配している家族や友人、仕事仲間がいることを考えれば何かのきっかけで少しの間でも現代に戻るシーンがあってもよかったのでは。
そして本来の秋飛としての人生や生活に心を残しながらも、その上でやはり沖田のいる時代に戻ることを自分の意志で選択して、その時代に戻るという設定にしたほうが秋飛の真剣さがより強調されたような気がしました。
または沖田が死んでから現代に戻ってきて、自分の生きる意味や進む道を真剣に考えて生き始めるとか…。
自分で捨ててきたわけでもないのに突然タイムスリップしてそのままそこで終わってしまい残された現代の状況には何も触れないというのはちょっと不親切だなあ、と思いました。
新選組本として読めば丁寧な文章できれいにまとまっているし沖田や土方ら主要な人物はかなり魅力的に描かれている作品だと思うのですが、せっかく歴史小説以外の要素を持ち込んでいるのですからその視点からのアプローチがもっとあったらよかったのに…と思います。
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