上田早夕里/ショコラティエの勲章
内容(「BOOK」データベースより)
絢部あかりが勤めている老舗の和菓子店“福桜堂”。その二軒先に店をかまえる人気ショコラトリー“ショコラ・ド・ルイ”で、不可解な万引き事件が起きた。その事件がきっかけで、あかりはルイのシェフ・長峰と出会う。ボンボン・ショコラ、ガレット・デ・ロワ、新作和菓子、アイスクリーム、低カロリーチョコレート、クリスマスケーキ―さまざまなお菓子をめぐる人間模様と、菓子職人の矜持を描く、小松左京賞作家の鮮やかな力作。
老舗和菓子店の売り子をしているあかりと、人気ショコラトリーのシェフ・長峰が周囲で起こるスイーツ絡みの騒動や謎を解決していく連作短編集。
表題作他「鏡の声」「七番目のフェーヴ」「月人壮士」「約束」「夢のチョコレートハウス」の6編を収録。
コージーミステリーらしく丁寧で穏やかな語り口で話が進み最後もきちんとエンドマークが付けられるのですが、「みんなの誤解が解けてめでたし、めでたし」というまん丸なものではなく、それぞれの気持ちのどこかにちょっとだけ引っ掛かりを残したままのほろ苦い結末の作品が多かったような気がしました。
これも「チョコレート」がテーマだからなのかな。
主役のあかり、長峰を始めとした主な登場人物も、包容力があり大人の分別を持った落ち着いたキャラクターが多く、全体的に大人っぽい雰囲気の作品。
作品中に出てくるお菓子の描写もすごく丁寧で美味しそうだし、物語の中での役割も不自然ではなく上手くまとまっていて気持ちよく読めました。
ただ、読むのに邪魔ってほどではなかったですが、お菓子についての専門用語がすごく多いなあと思いました。
専門家である長峰はともかく、単に「お菓子好き」という設定のあかりの口からもどんどん専門用語や蘊蓄が出てくるんですよね。
いくら父親が菓子職人で、本人も無類のお菓子(スイーツ)好きだとしてもちょっと詳しすぎでは…。
それとも最近の女の子はこのくらい当然なのでしょうか?(汗)
でも、そうした専門的な用語が多用されているにも関わらず 鼻につかないのは、文章や構成がスッキリとまとまっているからなんでしょうね。
ちなみに私はこの本を読んで「ここに出てくるようなチョコレートとかケーキとかにあまり興味がないんだな~」ということを改めて実感しました(笑)
もちろん嫌いではないので目の前にあれば美味しく頂きますが、こういう小説を読んでどうしても食べたくなって思わず買い(食べ)に行ってしまうようなタイプではないみたい。
そんな私でも面白く読める作品でした。
甘いもの好きの人だったら絶対気に入ると思うのでぜひ。
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