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2009/08/03

大石直紀/輪廻の山 京の味覚事件ファイル

輪廻の山―京の味覚事件ファイル (光文社文庫)
輪廻の山―京の味覚事件ファイル (光文社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
「奥様料理研究家」を目指す凪子は、結婚生活五年目に夫である準平とともに京都に引っ越すことになった。準平が、勤務先のソース会社で京都転勤になったのだ。食文化が異なる京都で苦戦する準平を尻目に、京都での料理生活を満喫する凪子であったが、食材や料理の陰には、なぜか、ミステリアスな事件が潜んでいて…。古都を舞台に、ミセスが魅せる名推理!文庫書下ろし&オリジナル。

何となく全体の設定がずれている感じがして、違和感を持ったまま読み終わってしまいました。

主人公は料理好きで「奥様料理評論家」になることが夢の主婦・凪子。
ソース会社の営業マンである夫・準平の転勤に伴って京都に引っ越してきた凪子は「料理の勉強のため」と近所のスーパーのおばさんに京都特産の野菜農家を紹介してもらって訪ねて行くのですが、何故か行く先々で事件に遭遇する・・・という展開の話(短編集)です。

警察関係者ならともかく、一般人が普通に生きてきて事件(それも人の生き死にに関わるような)に遭遇する確率なんてそんなに高くないですよね。
そんな経験、それこそ「未曾有の出来事」だと思うんですよ。
まあ、それでもたまたまその「未曾有の出来事」に遭遇してしまった、そして素人ながらたまたまその事件に深く介入する事態に巻き込まれてしまったと言う「お話」があってもいいと思います。
でもその人物が動くたびに待っていたかのように新聞沙汰になるような事件が起こるなんてお話だとしても設定としてちょっとどうなのよ、と思ってしまうのです。
そんな人がいたとしたら、事件そのものよりもその人のほうが「危ない」ってことになると思うのですが。

しかも、どの話もその前半、事件現場に行くまでの凪子がやけにハイテンションなのもイラッとする原因でした。
料理のことで頭がいっぱいで、スーパーのおばさんに強引に頼み込んで相手先を紹介してもらい、しかも「面倒くさいからいやだ」と言ってる旦那を無理やり同行して初めての場所に乗り込んでいく。
それなのにいざそこに行ってみると、初対面の凪子たちに向かって何故か相手はみんな「実は・・・」と内緒の話をし始めて、その話が「何だか気持ち悪い、何か起こりそう」と早々に退散してくる。
その直後にその家で惨劇が起きて、それを知った凪子は「ああ、やっぱり…」と思うという「なんじゃ、そりゃ」な展開の連続。

しかも、凪子は事件を「解決」も「解説」もしないんですよ。
「こういうことなのでは・・・」と予測(推測)する程度で、最終的な回答はその事件の当事者によって独白で語られるという形式なのです。

何だか勝手に人の家に押しかけて明けちゃいけない扉を開けて「ヤダ、気持ち悪い」って言って開けっ放しでサッサと帰ってくる、そしてその後は急に傍観者になってしまうような自分勝手な人にしか思えませんでした。
そういう頭で呼んでいるせいか、凪子は「霊感が強い」とか「一度見た人の顔は忘れない」とかいう怪しげな特徴が少しずつ出てくるのも「都合がいいなあ」と感じてしまいました。

全体的に残念な感じの話が多かった中で表題作の「輪廻の山」だけは、凪子の友人の身内の話であり過去の話として完結していてキレイにまとまっていたと思います。
(ただ、後味はあまりよくありませんでしたが…^^;)

私の個人的な好みの問題だと思うのですが、ミステリーの場合、人物や物語の設定と、謎の性質が乖離している作品ってあまり好きじゃないんですよね。
お料理好きで好奇心旺盛でちょっと強引で社交的な凪子の性格(私はどうしても「サザエさん」を連想してしまう…(笑))はいいと思うし彼女の作るお料理は確かに美味しそうだったのですが、その設定を活かすならもっと彼女の日常やお料理にまつわるちょっとした謎や不思議をテーマにしてラストもちょっと笑えたり、温かい気持ちになれる物語にしたほうが座りがよかったんじゃないかなあと思いました。

表題作他「呪詛の森」「怨霊の屋敷」「霊気の古樹」「幽鬼の沼」「鎮魂の塚」の6編を収録。

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