'10年07月の読了本
- 恩田陸『朝日のようにさわやかに』(新潮文庫)
残念ながら今ひとつ。物語の持つ雰囲気はいいんだけど、長編のさわりの部分だけを読んでいるみたいで読み終わっても満足感があまりなかった。あとがきの作品紹介は面白かったので、個人的にはこっちを先に読んでいたほうがよかったかも。 - 山之口洋『天平冥所図会』(文春文庫)
奈良時代の日本を舞台にした歴史ファンタジー。最初想像したよりはちょっとシリアスで血生臭い部分もあったけど、この辺りの時代を描いた作品としてはダントツに読みやすくて面白かった。ユーモアもあって登場人物の書き分けも見事でした。 - 伊坂幸太郎『フィッシュ・ストーリー』(新潮文庫)
中編4本。どれもゆったりした雰囲気で読みやすかった。表題作がよかった。特に正義の味方になるエピソードがすごく好き。 - 縄田一男 編『歴史・時代アンソロジー 吉原花魁』(角川文庫)
吉原花魁をテーマにした短編小説のアンソロジー。編者は縄田一男氏。全体的に吉原内部よりも、その外での話が多かったのが残念。もっとどっぷり吉原な話を期待していたんだけど。隆慶一郎『張りの吉原』、宇江佐真理『紫陽花』がよかった。 - 三浦しをん『星間商事株式会社社史編纂室』
会社の社史とやおい系同人誌とコミケの話w 面白かった。反対勢力からの妨害や相手との駆け引きがもうちょっとあってもよかったかも。 - 岩井三四二『踊る陰陽師』(文春文庫)
室町時代末期を舞台にした短編5編。最後の一編は良かったけど、それ以外は全体的にピリッとしたところがなくて今ひとつ。5編全部に登場する貧乏公家の山科卿や家来の掃部助のキャラクターはよかったんだけど。 - 柴田よしき『小袖日記』(文春文庫)
30歳OLが突然平安時代にタイムスリップして『源氏物語』のネタ探しに奔走するという話。設定はかなり緩いけど、その緩さが却って物語に広がりを与えていたと思う。源氏をベースにしたストーリーも良かったし、OL目線の時代描写も楽しかった。 - 海堂尊『ジーン・ワルツ』(新潮文庫)
海堂さんにしては落ち着いた静かな作品。登場人物が少ないし、しゃべくり倒すおじさんたちがいないからねw 代理母ってもっと大問題だと思うのに結構サラッと流されているのでちょっとビックリ。最後の方、彼にとってはある意味ホラーでしたね^^; - 清水義範『読み違え源氏物語』(文藝春秋)
源氏物語に出てくる女たちの物語を現代風、日記風、推理小説風などいろいろな趣向で書いた短編集。面白いのとつまらないのの差がけっこう大きかった。一番最初の「夕顔殺人事件」が面白かったので、全編こんな感じでもよかったんだけどな。 - 荻上チキ『ウェブ炎上―ネット群集の暴走と可能性』(ちくま新書)
タイトルは過激だけど内容は非常に冷静なインターネット論。平易な文章で書かれているので読み易かった。「ネットリテラシーは重要だけど、リテラシーが相対的に低くても平気なアーキテクチャが設計された方がいい」という部分が印章的。 - 岡部敬史『ブログ進化論~なぜ人は日記を晒すのか』(講談社新書)
'06年に出版された本。インターネットの世界での4年という時間を実感。随分遠くに来てしまった気がした。でも、基本的な語られ方は今の「ツイッター本」とあまり変わらない感じ。何であっても結局は利用者側がどう使うかが問題なのね。 - 近藤史恵『エデン』(新潮社)
『サクリファイス』の続編。前作のように大きな事件が起きるわけではなく、ただひたすらチカが出場するツール・ド・フランスを追いかける展開。リーダビリティがよくスピード感もあってすごく面白かった。感動的で前向きな結末もあって読後感も○ - 小路幸也『リライブ relive』(新潮社)
死ぬ直前に出会った「獏」によって人生をもう一度生き直した人々の物語。どれも読んだ後優しい気持ちになれる温かい話ばかり。特に「あらざるもの」がよかった。設定はもっとシンプルでもよかったかも。 - 小路幸也『僕は長い昼と長い夜を過ごす』(早川書房)
色んな要素がたくさん入ってるのに、混乱することなくするする読めちゃうのが凄い。それでいて最後までどこに着地するか判らないワクワク感もあって。そして何より人と人の繋がりの深さ、温かさが気持いい作品だった。 - 恩田陸『夏の名残りの薔薇』(文春文庫)
読了…と言っても、大量の引用部分はどうしても読みづらくて殆ど飛ばし読みだったけど。雰囲気は嫌いじゃないけど、小説としては感想が難しい。舞台作品のほうが似合いそうな気がする。 - 小松エメル『一鬼夜行』(ポプラ文庫)
百鬼夜行の列からはぐれた子供の姿をした鬼と、鬼のような顔をした人間の若者の奇妙な同居生活。人物設定は面白かったけど、関係性がちょっと屈折しすぎていて分かりにくかった。もっとシンプルな話で読みたかったな。
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