恩田陸/夏の名残りの薔薇
内容(「BOOK」データベースより)
沢渡三姉妹が山奥のクラシック・ホテルで毎年秋に開催する、豪華なパーティ。参加者は、姉妹の甥の嫁で美貌の桜子や、次女の娘で女優の瑞穂など、華やかだが何かと噂のある人物ばかり。不穏な雰囲気のなか、関係者の変死事件が起きる。これは真実なのか、それとも幻か?巻末に杉江松恋氏による評論とインタビューも収録。
各章ごとに登場人物が1人ずつ謎の死を遂げるのに、その時間の延長として始まる次の章にはその死んだはずの人物が生きて登場する、
物語の中には外部作品(アラン・ロブ=グリエ『去年マリエンバートで/不滅の女』)が大量に引用されている、
という異色の作品。
雰囲気としては嫌いじゃないけど、物語よりも設定の方に気を取られてしまうせいか「小説を読んだ!」という満足感はあまりなかったな。
膨大な引用文もどうも違和感があって、その部分はほとんど読み飛ばしてしまったし。
物語はちゃんと閉じないまま結末を迎えるけど、個人的にはそれはそれでこの作品の雰囲気に合っていてよかった。
逆に途中でちょっと収束しようとしてアリバイや言い訳みたいな事実が出てくるあたりがこの小説のスタイルを崩しているような感じがしたな。
もっと徹底的に曖昧なまま終始してもよかったかも。
最終章で登場人物がそれぞれの物語をぶつけ合うシーンはすごく印象的。 ここを舞台でやったら迫力ありそう。
小説って手軽だけど、雰囲気も舞台も登場人物も全部自分で設定して行かなくちゃならないし何かの拍子ですぐに現実に引き戻されてしまうけど、演劇(舞台)や映画はわざわざ「そこ」に行かなくちゃならない手間はあるものの、入ってしまえば自分で意識しなくてもその世界に没入出来る。
映画(しかもかなり実験的な作品だったらしい)をモチーフにしたこの小説も現実世界とは切り離されたどこか特別の場所(出来れば物語と同じような、山の中の小さいけれど豪奢なホテルで)で読むともっと楽しめるのではないかと思う。
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