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2010年9月の5件の記事

2010/09/30

万城目学/プリンセス・トヨトミ

プリンセス・トヨトミ
プリンセス・トヨトミ

内容(「BOOK」データベースより)
このことは誰も知らない。五月末日の木曜日、午後四時のことである。大阪が全停止した。長く閉ざされた扉を開ける“鍵”となったのは、東京から来た会計検査院の三人の調査官と、大阪の商店街に生まれ育った二人の少年少女だった―。前代未聞、驚天動地のエンターテインメント、始動。

面白かった~!!

会計検査院のエリート調査官と女の子になりたい男子中学生+その幼馴染の女子中学生…第1章が終わった時点ではこの組み合わせでどんな話が展開するのか全く予想出来なかったけど、まさかこんな話だったとは!

実在する地名、固有名詞を多用して超現実的な大阪を舞台にしていながら、そこに描き出されるのは壮大なSFファンタジーの世界だった。
「あり得ない!」と思いつつ、その緻密に計算され積み重ねられられる設定にどんどん惹きこまれていく。

特にクライマックスに向かって状況がどんどん盛り上がっていくあたりのパワーが凄い。
長い間秘められていた場所に向かってただ進んでいく物語の中の人物たちの興奮と熱気がこちらにまで伝わってくるようだった。

そしてその山場を越えてからエンディングに向けての収束の仕方も見事。
広げまくった風呂敷を端から音が聞こえそうなくらいきれいに畳んでいく手際が素晴らしかった。

「鴨川ホルモー」を読んだときも思ったけど、万城目さんの文章は非常に映像的だよね。
「鴨川~」のときは先に映画化されたときの写真を見ていたのでそう感じるのかな?とも思ったけど、この作品はそうした画像を見ていないにも関わらず登場人物の表情や言動、立ち位置、周りの情景まで、まるで書いてある内容がそのまま頭の中のスクリーンに映し出されるようにクッキリと思い描けるような作品だった。
この作品も来年の夏に映画化されるらしい。
自分の思い描いた内容がどんな風に実際にスクリーンに出てくるのかすごく楽しみ。
(「イメージが違っていたらイヤだな」とあまり思わずに、単純に楽しみに思えるのもこの作品の不思議なところ)
Wikipwdeiaの情報によると会計検査院の3人は松平:堤真一、旭:岡田将生、鳥居:綾瀬はるからしい。
堤さんの松平はぴったりだな~。
本を読んでる途中でこの情報を知ったので、私の脳内スクリーンでも松平は堤さんだったものw
部下の2人は男女逆転してるけど、考えてみるとなるほどなキャスティング。
中学生に見えるおじさんって探すの難しそうだもんねw
でもそうするとラスト近くで大阪府警で展開されるあの即興劇はどうなるのか…?
それ以上に、原作のラストの旭の告白のシーンはどうするのかな?あれは旭が女だから有効だろうに…といろいろ想像してみたり。
それもまた楽しからずや。
なにより、あの壮大な大阪城決戦がどんな演出になっているかが楽しみ。
早く見てみたいな~♪

それにしても大阪だったらホントにこういう意味はよく判らないけど奥が深い、壮大な地下組織がホントにありそうだと思えるところが何よりスゴイと思うな(笑)
楽しい時間だった♪

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坂木司/和菓子のアン

和菓子のアン
和菓子のアン

内容(「BOOK」データベースより)

やりたいことがわからず、進路を決めないまま高校を卒業した梅本杏子は、「このままじゃニートだ!」と一念発起。デパ地下の和菓子屋で働きはじめた。プロフェッショナルだけど個性的な同僚と、歴史と遊び心に満ちた和菓子に囲まれ、お客さんの謎めいた言動に振り回される、忙しくも心温まる日々。あなたも、しぶ~い日本茶と一緒にいかがですか。

デパ地下の和菓子屋さんを舞台にした日常の謎系ミステリ。

導入部がちょっともたついてたけど、本編に入ってからの展開はスムーズで読みやすく、雰囲気もよかった。
でも、全体的な感想としては今ひとつかなあ。

登場人物がどうもしっくりこなかった。
お店の仲間3人はそれぞれ「一見こう見えるけど実は…」という個性的な性格の持ち主という設定がされている。
例えばきりっとした美人で頼りになるけど株にハマっていてオヤジ体質の店長とか、すらっとしたイケメンで仕事は完璧だけど心は乙女な先輩社員とか。
それはそれで面白かったんだけど、あまりにも突飛過ぎて上手く2つの面が融合していない感じがした。
それに対する主人公の杏子(きょうこ)のほうは逆にあまりにも普通過ぎて輪郭が曖昧な感じ。
それに何となくいつもウダウダ悩んでるばっかりの子に思えて、あまり好きになれなかった。
それなのに杏子がみんなに大事に好かれてされていたり、性格設定も好みもバラバラな店員が何故上手くいってたりすることの説得力が今ひとつ足りなかったように思えた。

物語自体は四季折々の和菓子が丁寧に紹介されていて細かい薀蓄も嫌味にならずに上手く使われていたし、謎の内容や解決もこういう舞台にふさわしくて気軽にサクサク読める作品だったので、登場人物もあんなに手の込んだ性格ばかりにせずもっと自然でよかったんじゃないのかなあ。

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2010/09/10

永井路子/乱紋(上・下)

乱紋〈上〉 (文春文庫)
乱紋〈上〉 (文春文庫)
乱紋〈下〉 (文春文庫)
乱紋〈下〉 (文春文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
織田信長の妹・お市と近江の雄・浅井長政の間には三姉妹がいた。長女・お茶々は、秀吉の側室として権力をふるった後の淀君。次女・お初は京極高次の妻となり、大坂の陣で微妙な役割を演じる。そして、最も地味でぼんやりしていた三女・おごう。彼女には、実に波乱に満ちた運命が待っていた―。おごうの生涯を描く長篇歴史小説。

だめだー、苦手だった。

信長に滅ぼされた浅井家三姉妹の末娘でのちに二代将軍・徳川秀忠の正室となるおごうの生涯を描いた長編小説なんだけど、誰にも感情移入が出来なかった。

特に語り手であるおごうの侍女のおちかが苦手。
この人、侍女としてあまり適性がないような気がする。
少女時代からおごうに付き従って、その人生の変遷を一緒に渡り歩いて来ているのに何かっていうと動揺しすぎ、周囲にまどわされ過ぎ、状況が見えなさ過ぎ。
この時代の女性が全て有能だったわけではないだろうけど、それでも激しい流転の果てに征夷大将軍の正室となったほどの女性のそば近く仕える役目がおちかに務まるとは到底思えないんですけど。
ていのいい「人質」として他家へ嫁いでいく女主人もそうだろうけど、主人を守るために同行する侍女だってある意味命がけなはず。
なのに、最初のうちはともかくおごうの立場がどんなに変わっても、同じようにちょっと何かあると一人でうろたえて騒いでるばっかりの侍女って…違和感ありすぎです。
で、騒がしいわりに気が利かない。
いくら自分で出産の経験がないと言ったって、女主人の懐妊を2回も見逃すお傍付きの侍女なんて意味ないんじゃ?
一回なんて「具合が悪いから」とお寺にお参りに行って、その途中であった男に「それはご懐妊なのでは?」といわれて初めて気がつく始末。
ぼんやりしてるにもほどがあるってば。

そのほかの話の内容も「姉妹の誰が美人」だの、「秀吉がおごうに色目使った」だの、「あの人は私が好きなんだろうか…」だのそんな話ばっかりにページが割いてあって、もっと重要な局面、例えば秀吉が死ぬところや関が原で西軍が負けるところなんかはひどくあっさりとしか書いてない。
さらには、おごうがどんな人物なのかが全く見えない。
もともと華やかで饒舌な2人の姉たちとは違い、地味で口数少なく気の効いたことも言えない、という性格設定ではあるんだけど、それにしても語らなすぎ。
普通ならそれを語り手であるおちかが補うところだと思うんだけど、そういう方向にはいかなくていつも「まったくおごう様はいつも無口で困ったものだ」という同じような感想で終わってしまう。
むしろ彼女の二人の姉茶々とお初のほうが性格も行動もハッキリと丁寧に(というか「しつこく」)描かれていて判りやすかった。
特に最後のほう、大阪城落城のあたりは茶々(淀)とお初は出ずっぱりだけど、おごうは全く出番ナシ。
ラストもおちかが密かに(?)思いを寄せていた男の死を看取るところで終わりって…いったい、これは誰の物語だったんだろう??

おしゃべり好きなおばさんの井戸端会議か、OLの給湯室での噂話を延々聞かされた気分。
それが意識したものであれば手法としてはアリだと思うけど、だったらもっと徹底して欲しかった。
取り敢えず、おちかをもうちょっと芯のしっかりした人物にして欲しかった。
これなら、男好きで噂好きちょっとだらしないけどそういう自分を受け入れて、自分の生き方を貫いた"おたあ"のほうが好感が持てるなあ。

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2010/09/06

映画:特攻野郎Aチーム THE MOVIE

TVシリーズもこの映画の内容もほとんど知らないまま、ただTVCMの雰囲気のみで判断して見に行ったんだけど「当たり」でした。
面白かった~♪
こういう「何も考えずにただ楽しめばいい」映画は大好き。(^^)

ほとんど説明らしい説明もなくいきなり戦闘状態で始まって、そのまま最後まで突っ走っていく。
ストーリーはあるといえばあるけど、単純だし万が一判らなくても大丈夫。
メインの4人だけ見てれば問題なしですw
戦闘機やヘリを使った空中戦もカーチェイスも街の真ん中での銃撃戦も何もかもが全て派手。
あまりに派手すぎて笑えます(笑)

もっと暢気な話なのかと思っていたら割とシリアスな展開だったのが意外。
個人的にはもっと「おバカ」な感じでもよかった気がする。
と言っても暗くなるわけではないし、どんな逆境に立たされても最終的に「主役は不死身」のお約束は有効なので心配は不要。
主役4人も含め私が知ってる役者さん皆無という作品だったけど、十分楽しめました。

個人戦が殆ど無いから残酷なシーンは少ないけど、どんだけ火薬使ってるんだという爆破シーンの連続、しかもやたらアップでの撮影が多いので目が弱い人は注意したほうがいいかも。
あと、音もけっこううるさいです。

特攻野郎Aチーム THE MOVIE 公式サイト

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2010/09/01

'10年09月の読了本

  • 万城目学『鴨川ホルモー』(角川文庫)
    最初はなかなか入っていけなかったけど、途中から面白くなって読む速度が上がった。あんな内容なのに最後は爽やかな青春小説で終わる所が見事。キャラ的には安倍よりも高村のが好きだな。映画では濱田岳くんだったのね。ピッタリだ。
  • 柳瀬尚紀『日本語は天才である』(新潮文庫)
    「フェネガンズ・ウェイク」を翻訳した著者による日本語についての文章。興味深い話がたくさん書いてあったけど、ちょっと自由すぎて私の固まった頭では理解するのが難しかった。「爆笑戯曲 シチ派 vs ナナ派」が一番分り易くて面白かった。
  • 石持浅海『Rのつく月は気をつけよう』(祥伝社文庫)
    連作ミステリー集。学生時代の友人3人+ゲスト1人で開催される飲み会の席でゲストが話す思い出話に隠された真実を他の3人が見つけ出す、という内容。面白かった。「酒の席での話」という設定に合った語り口と内容で気楽に読めた。オチもなかなかシャレてました。
  • 永井路子『乱紋(上)』(文春文庫)
    浅井家三姉妹の末娘・おごうの生涯を描いた作品。おごうの侍女おちかの視点で語られるんだけど、一人で勝手に焦ったり困ったり悩んだりしててやたらに慌ただしい。もうちょっと落ち着いた視点のほうが良かった。三姉妹の性格設定は面白い。
  • 永井路子『乱紋(下)』(文春文庫)
    最後まで苦手だった。意地悪おばさんの井戸端会議、あるいはOLのストレス発散愚痴大会を延々聞かされていたような感じ。それなのに結局おごうはどんな人物だったのかさっぱり判らなかった。2冊も読んだのに…orz
  • 高橋克彦『京伝怪異帖』(文春文庫)
    「前に読んだことあるかも…」と思いつつ読んでみたらやっぱり再読だったw 文章のテンポがいいので飽きずに読める。ただ、全体的にセリフで物語が進んでしまう感じなので、仕掛けが複雑だとちょっと理解しづらい部分もあった。
  • 浅田次郎『中原の虹(第1巻)』(講談社文庫)
    まだ取っ掛かりの部分だけど、多彩な登場人物とスケール感でワクワクする。これから何が起こっていくのか楽しみ。『蒼穹の昴』とは別の物語なので忘れていても大丈夫そうだけど、これ読んだら再読してみようかな。
  • 浅田次郎『中原の虹(第2巻)』(講談社文庫)
    泣けた。1巻は新しい登場人物の紹介といった感じだったけど、2巻では西太后や春児など知ってる顔がどんどん登場。しかもみんな終焉に向かって進んで行くので泣き所満載だった。次は新しい時代の話になるのかな。来月が待ち遠しい。
  •  天野純希『桃山ビート・トライブ』(集英社文庫)
    桃山時代にロックバンドがあったら…という発想は面白かったけど、それが生かしきれてないような。主役4人の性格とそれぞれの繋がりをもっと丁寧に描いて欲しかったな。
  • 坂木司『和菓子のアン』(光文社)
    デパ地下の和菓子屋さんを舞台にした日常の謎系ミステリー。すごく読みやすいし面白かったんだけど、何となくスッキリしない。主人公以外の登場人物が個性的すぎて主人公のイメージが曖昧になってた気がする。もうちょっと爆発させてもよかったのでは。
  • 万城目学『プリンセス・トヨトミ』(文藝春秋)
    面白かった~!!超現実の中に突如立ち上がってくるファンタジーの世界。クライマックスに向かって話がバーっと広がって行くスケール感、山場を超えた後それがきれいに畳まれて行く緻密さが違和感なく同居していて素晴らしかった。満足♪

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