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2010/12/06

東野圭吾/聖女の救済

聖女の救済
聖女の救済

内容(「BOOK」データベースより)
男が自宅で毒殺されたとき、離婚を切り出されていたその妻には鉄壁のアリバイがあった。草薙刑事は美貌の妻に魅かれ、毒物混入方法は不明のまま。湯川が推理した真相は―虚数解。理論的には考えられても、現実的にはありえない。

ガリレオシリーズ4作目で 「容疑者Xの献身」に続く長編。

冒頭に犯人が明示されて事件が発生、その後どうやってその犯行を証明するかを描く、いわゆる倒叙形式のミステリー。
犯行の可能性や手法の検証、容疑者への取調べなど一つ一つの要素が細かく丁寧に描かれているけれど、それによって物語が停滞することはない。
スピーディーな展開で興味をどんどん先へ先へと向かわせる。
その文章力と構成力が素晴らしかった。

そして湯川によって解き明かされるトリックがすごい。
技巧的にではなく、心理的な意味で。
それを可能にするために払われた犠牲と精神力、それを支えた犯人の被害者への想いを考えると下手なホラーよりも恐ろしい話だと思う。
作品中にはそういうバックグラウンドまで描かれていないけれど、トリックの内容を知った時点で読者にそこに至る犯人の心情や行動を想像させ、そして勝手に怖い思いをさせることの出来る力を持った仕掛けだった。

ただ、トリック自体は特に「物理的」ではない(むしろ「心理的」)ので、果たしてこれを湯川に解かせる必要はあるのかな?という気がしないでもない。
同じ長編の「容疑者X~」でも同じような感想を持った記憶があるので、物理トリックだけではこのくらいの長さまでひっぱるのは難しいってことなのかな。

あと、あれほど「子ども」にこだわってそれに適さない恋人をバッサリ切り捨てられるような人物であれば、結婚相手には事前にそうした検査を受けるよう強制しそうな気がするんだけど。
そうした確定的な可能性がないのに、何故彼女だけが1年の交際期間の中で捨てられずに結婚できたのかがちょっと謎だったな。

この作品で特筆すべきはTVドラマのオリジナルキャラクターである「内海薫」が登場したところ。
(実際に作品に登場するのはこの作品と同時刊行された『ガリレオの苦悩』に収録された「落下る(おちる)」のほうが先らしいけど)
ドラマとは違って草薙の直属の部下でコンビを組んで捜査する新人刑事という設定だし、キャラクター的にもドラマのほうは直感力と情熱が前面に出ている感じだけど小説ではそれもありつつそれ以上にクールな印象。
頭も良くて湯川と互角とはいかないけど、それなりに渡り合ってる。
意見が対立することがあってもドラマのように大声を出したりぜずに冷静に自分の意見を主張して、引くときは引くという感じ。
無駄なやり取りがないので展開がスピーディーで読んでいて気持ちよかった。
ただ、ドラマ(映像)的にはやっぱりもっと派手に言い合いしたり、必死さが前に出ていたほうがいいんだろうなという気もする。
作品中、内海が電車移動するときに福山雅治の曲を聞いている、というシーンがあるのが笑えた。

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コメント

実際にあっては、怖い怖
お話だと思います[最悪]

投稿: | 2010/12/15 17:20

■2010/12/15 17:20にコメントを下さったかたへ
こんにちは。

>実際にあっては、怖いお話

確かに。
ただ、ここまで精神力を持続するのは生半可のことじゃ出来ないと思うので実行するのは難しいでしょうね。

コメントありがとうございました。

投稿: tako | 2010/12/15 21:27

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