石持浅海/賢者の贈り物
内容紹介
古今東西の古典・名作が、現代に蘇る――。同期の女の子を呼んで開いた週末の鍋パーティー。みんなを送り出した翌朝、部屋には、女物の靴が一足。代わりに家主のサンダルがなくなっていた!――週明け出社しても、その間違いを誰も申し出てこないのはなぜ? (ガラスの靴)。フイルム・カメラから、デジタル・カメラに切り替えた私に、妻がプレゼントしてくれたのは「カメラのフイルム」だった!? 私がフイルム・カメラを使用していないことは、妻も知っているはずなのになぜ? (表題作・賢者の贈り物)。本格推理の新旗手が、軽妙、洒脱に古典・名作に新たな息吹を吹き込んだ意欲作10篇を収録する。
自分の身の周りで起きたある状況について主人公(+その仲間)が何故そうなったのか、相手は何を考えているのかを考察して答えを導き出すという思考系ミステリー短篇集。
物語のモチーフはそれぞれ古典文学や昔話から取られている。
こういうタイプのミステリーって嫌いじゃないけど、10編も続くとやっぱり飽きるというか読むのがめんどくさくなってくるな(笑)
「ああでもない」「こうでもない」って悩んでる登場人物を見てると、「もうどっちでもいいじゃん」って言いたくなってくる。(身も蓋もない^^;)
読みやすかったけど一気に読まずに少しずつにしたほうがよかったかも。
以下、一話ずつ感想。
「金の携帯 銀の携帯」
モチーフは「金の斧と銀の斧」。
これはなかなか面白かった。
確かにこの状況になったらけっこう迷うかもなあ…。
で、私はけっこう小心者で、それでいて思い切りもよくないので結局一番中途半端な真ん中を選んでしまうような気がするw
ただ、主人公が直った携帯をどうやって受け取ったのかが謎。
普通預けた店に引取りに行くでしょう。
じゃないと代替機も返せないし。
「ガラスの靴」
モチーフは「シンデレラ」。
飲み会の帰りに女の子が靴を間違えたくらいでなんでそんなに悩むのかが理解出来ない。
まあ、そうでないと話が終わってしまうわけだが。
「最も大きな掌」
モチーフは…「パリスの審判」かな?
命題の意味は何だったのか謎のまま終わってしまうのはずるいと思う。
「可食性手紙」
モチーフは「やぎさんゆうびん」。
設定が面白かった。
試験の最中に発生した謎を前に、試験に集中しようと思いつつもついつい思考が謎に引っ張られてしまう主人公の女子高生の心理描写がリアルで微笑ましい。
ただ、その後の謎解きの部分はちょっと性急で直球すぎたかな。
もうちょっと余韻が欲しかった。
「賢者の贈り物」
モチーフはそのまま「賢者の贈り物」。
「面倒くさいけどいい話」と読むべきか、「いい話だけど面倒くさい」と読むべきか。
(まあ、この中にあるのはみんなそんな感じだけどね(笑))
その答えが合ってるかどうかよりも、自分の行動についてこんなに考えてくれるパートナーがいるだけで幸せなんじゃないの?という気がするな。
ただオリジナルの「賢者の贈り物」を踏襲してお互いに贈りあう設定が欲しかった。
「玉手箱」
モチーフは「浦島太郎」。
これも「結局なんだったんだよー!」という結末。
途中の推理もあまり好きじゃないなあ。
例えば現金が入ってたとしても、その現金に来歴が書かれているわけでもないんだから何のお金か判らないんじゃないの?という疑問が。
そこには言及しないの?
「泡となって消える前に」
モチーフは「人魚姫」。
これはロマンチックなラブストーリー。
でも、まあ本人たちはともかく傍から見るとやっぱりちょっと面倒くさいな(笑)
「経文を書く」
モチーフは「耳なし芳一」。
落とし所が強引。
「条件反射」って…。
「最後のひと目盛り」
モチーフは「最後の一葉」。
身体に悪そう。
「木に登る」
モチーフは「旅人とクマ」…らしい。(私は知らないお話だった)
なんで最後腹立ててるのかよく判らない。
「人の気も知らないで」ってことだと思うけど、自分も損しなかったんだからそんなに怒ることないんじゃないの?
という10編でした。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 田牧大和 / 泣き菩薩(2015.07.24)
- 山本兼一 / 黄金の太刀 刀剣商ちょうじ屋光三郎(2015.07.23)
- 田牧大和 / 春疾風 続・三悪人(2015.07.22)
- 田牧大和 / とんずら屋弥生請負帖(2015.07.21)
- 里見蘭 / 暗殺者ソラ: 大神兄弟探偵社(2015.07.19)
「読了本」カテゴリの記事
- 田牧大和 / 泣き菩薩(2015.07.24)
- 山本兼一 / 黄金の太刀 刀剣商ちょうじ屋光三郎(2015.07.23)
- 田牧大和 / 春疾風 続・三悪人(2015.07.22)
- 田牧大和 / とんずら屋弥生請負帖(2015.07.21)
- 里見蘭 / 暗殺者ソラ: 大神兄弟探偵社(2015.07.19)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント