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2011/01/16

中山七里/さよならドビュッシー

さよならドビュッシー
さよならドビュッシー

火事に巻き込まれ、大好きな祖父といとこを失い自身も全身に大やけどを負った少女・遥。
一時は生きる気力を失った遥だったが、新進気鋭のピアニスト岬洋介に出会いピアニストへの夢を目指して再び血の滲むようなレッスンを始めやがてそれは少しずつ実を結び有名なコンクールに学校代表として出場するまでになる。
しかし、そんな遥の身辺で再び不吉な事件が相次ぎ、ついには身近な人間の死へと繋がっていく。
犯人は誰なのか、そしてその目的は?…というお話。

面白かった。

まあ、かなり無茶な話だとは思う。
火事で全身の3分の1に重度のやけどを負って全身を皮膚移植手術したっていうのに、退院してすぐにピアノを引き始めて数ヵ月後には有名なコンクールで優勝を競うまでになる…って普通あり得ないでしょ。
いくら若くて体力があって、もともとピアノの才能があるといってもかなり無理のある展開なのでは。

ただ、そういう部分を「お話」として割りきってしまえば、スピード感、文章の読みやすさ、先が見えない展開、そして何よりピアノ演奏シーンの描写の緻密さが魅力的でどんどんページが進んで一気読みしてしまった。

でも、ピアノの話と事件は別々のほうがよかったなあ。
ピアノの部分(レッスンや遥の学校生活)と事件の部分の描写のバランスがよくない。
前者が丁寧で迫力があるのに対して、後者はなんとなく弱く量も少なくて「付け足し」みたいな印象を受けた。
ピアノの話ですごく盛り上がっていてもその途中で刑事が出てくるシーンになると、急にテンポが悪くなるようなそんな感じ。
探偵役のピアニスト岬洋介にしても、純粋にピアニストとして人間として魅力的に描けているから別に謎解きをする必要はないと思うし。
あの結末を持ってくるには事件性が必要だったんだろうと想像は出来るけど、あの謎解き自体、読んだ後「やられた!」でも「ズルイ」でもなく「あ~…なるほどねえ」としか思えなくて後味が悪いのであまり得策とも思えないんだけどな。
そういう意味でももっと素直にピアノによって少女が成長する話でもよかったような気がする。


『このミステリーがすごい!』大賞STORIES (別冊宝島) (別冊宝島 1711 カルチャー&スポーツ)
『このミステリーがすごい!』大賞STORIES (別冊宝島) (別冊宝島 1711 カルチャー&スポーツ)

ところでこの話を読む前に偶然手にした「『このミステリーがすごい!』大賞STORIES」という雑誌。
ここにも山本さんの短編「要介護探偵の冒険」が掲載されていたんだけど、この作品は遥のおじいちゃんが主人公(探偵役)。
自分の管理する不動産の敷地内で起きた殺人事件を車椅子のまま精力的に動きまわって解決する、という内容だった。
なのでこちら(「さよなら~」)でもそういう役割なんだろうと思って読み進めていたら、早い段階で火事で死んでしまうという展開だったのですごくビックリした。
作家さんというのはいろんな手を持ってるものなのね~(笑)

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