夏川草介/神様のカルテ
長野県松本市で「24時間、365日対応」を掲げる超多忙な病院に勤務する内科医・一止(いちと)の仕事と生活を描いた連作短篇。
「夏目漱石を敬愛している」という理由で古風で理屈っぽいしゃべり方をする、という一止のキャラクター設定が最後まで気になった。
同僚医師や看護師たちとの会話部分がいちいちめんどくさかった。
私が漱石をよく知らないせいもあるかもしれないけど、このしゃべり方が効果的であったとはあまり思えないんだけどな。
それに一止の性格が屈折しすぎ。
飄々として穏やかなようでいて、実はシニカル、そしてそのまた向こうに熱いものがあるという感じ。
で、その熱いものを他者に悟られるのが恥ずかしくてつい冗談で誤魔化してしまう、という感じに思えた。
ただ、それが物語の中で上手く生かされていなかったような気がする。
愛妻のハルやアパートの住人、病院でも患者との会話やエピソードは素直で屈託のない一止の部分がそのまま出ていてよかった(特に「学士殿」との別れのエピソードは泣けた)けど、それと医師としての一止の部分がうまくリンクしていなかったという印象。
病院での激務の内容についても表現が上滑りしていて全体的に散漫な印象が残った。
この作品は今年('11年)の夏、櫻井翔&宮崎あおいの主演で映画が公開される予定。
ハル=宮崎さんはイメージがぴったり収まるけど、一止=櫻井くんはちょっと微妙。
(でも白衣を着てる櫻井くんってどこかで見たことあるような気がするんだけど…気のせい?)
どんな出来になっているのかな。
単なる「泣ける映画」にだけはならないで欲しいと切に願う。
■映画「神様のカルテ」公式サイト
ところで「神様のカルテ」ってどういう意味?
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コメント
>ところで「神様のカルテ」ってどういう意味?
確かに!
投稿: ムムリク | 2011/02/05 11:33
■ムムリクさん
こんにちは~。
タイトルとしては印象的だと思うのですが、作品を読んでもそれを示唆するような記述があるわけではないんですよねえ。
どういう意味で付けたんだろう?
気になります。
投稿: tako | 2011/02/05 22:56