竹内真/イン・ザ・ルーツ
陽気なジャズトランペッターの祖父から形見として託された根付に込められた謎(物語)をそれぞれの方法で紐解いていく三兄弟の物語。
こういう話って、みんなで一斉に謎に取り組むってパターンが多いけど、この作品は三兄弟それぞれ謎を解くアプローチの仕方もその時期もバラバラなのが面白かった。
人生の転機になる時期に根付の謎と向きあうことで、三兄弟それぞれの生き方や成長にそのまま直結していくという構成がよかった。
三人がそれぞれ個性的だし、周囲の人間関係やエピソードなどもすごく丁寧に描かれていたので一つ一つ独立した物語としてもとても面白かった。
その分長い物語になっているけど(2段組412ページ)文章が軽快でなのですごく読みやすかった。
ただ、同年代の男の子が喋ってるシーンが多いせいか、セリフの部分は時々誰が喋ってるのか判らなくなるときがあったかな。
三人がそれぞれ自分なりの解答を見つけた後に死んだはずの祖父からのメッセージが突然届いて真相を語るというラストも感動的。
ちょっと長くて説明的なパートだけど、それを読者に納得させる上手い演出になっていたと思う。
ただ、祖父と三人の孫ばかりが前面に出ていて、間にいる兄弟の両親はちょっと影が薄くてかわいそう…。
特に家庭を顧みずに自分の好きなことばかりして来た奔放な父親と上手く付き合えなかった息子(三兄弟の父親)には最後にもうちょっと言葉を掛けてやって欲しかったな。
でも全編通して明るさ、前向きさを感じさせてくれる物語で読後感もとてもよかった。
初めての作家さんだったけどとても気に入ったのでまた別の作品も読んでみよう。
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