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2011年7月の19件の記事

2011/07/31

宮木あや子/雨の塔

雨の塔 (集英社文庫) 
雨の塔 (集英社文庫)

都会から遠く離れた港町にある資産家の娘だけが入学を許可される女子大。
広い敷地の中に生活に必要なすべての施設が立ち並び、すべてのものが学生証だけで手に入る。
ただ一つ外界からの情報を除いては。

緩やかで贅沢な牢獄に閉じ込められた4人の美しい少女たちの美しくて儚くて静かで哀しい物語。
淡々とした硬質な文章が印象的で、作品のイメージにあっていてよかった。

登場人物が4人しかいないのに、それぞれの名前とキャラクターがなかなか結びつかなかった。
特に小津と矢咲は2人がごっちゃになってしまって、3分の1くらいまでは最初の出会いのシーンを何度も読み返した。
みんな苗字だけで呼び合っていたことも影響しているのかな。
結末は今ひとつ中途半端な印象で残念。
苦しいことも辛いこともあるけど、それでも全員に明日への希望と力を与えて欲しかった。

カバーイラストも作品の雰囲気と合っていてとてもよかった。
鳩山郁子さんという漫画家さんの作品らしい。
単行本のカバーも同じ方の作品らしいけど4人が直接描かれている単行本版より、暗喩的に小さな綺麗なものがたくさん描かれている文庫版のイラストのが私は好きだな。
背景の色もとても綺麗。
今度作品も読んでみよう。

鳩山郁子OfficialSite「@spangle」

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2011/07/29

山本一力/八つ花ごよみ

八つ花ごよみ 
八つ花ごよみ

江戸で暮らす人々の暮らしを綴った短編集。

いい話ばかりではあるのだけれど、なんとなく全体的にぼんやりとしていて今ひとつ。
もうちょっと意外性のある展開が欲しかったな。

そんな中では、痴呆で何も出来なくなった妻を献身的に支える夫の姿を描いた「路ばたのききょう」がしみじみとよかった。
一時的に記憶が戻った妻の姿に喜び連れ立って久しぶりに外出する二人。
いつまでもこのままで…という願いも虚しく少し目を離した間にまた手の届かない世界に行ってしまった妻を見つけた夫の哀しみに胸が詰まった。

<収録作品>   
「路ばたのききょう」「海辺橋の女郎花」「京橋の小梅」「西應寺の桜」「佃町の菖蒲」「砂村の尾花」「御船橋の紅花」「仲町のひいらぎ」

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2011/07/28

宮木あや子/ガラシャ

ガラシャ   
ガラシャ

主君殺しの重罪人となり殺された明智光秀の娘であるガラシャこと玉子の哀しみに覆われた半生を描いた作品。

想っても想っても報われない人たちばかりが出てきて全体的に重く苦しい物語だった。
この話を読む限りでは玉子にとって信仰が救いだったのかどうかも疑問。

基本的に誰にも共感できないまま読み進んでいたけど、玉子が死に望むシーンはとてもよかった。
Wikipedeiaで玉子の最期のときに糸は立ち会っていないと書いてあるのを読んで、「かなり精神的にも近い関係だったろうに何故かな?」と思っていたけどその疑問への回答が描かれていた。
ただ、この場面でかなり感情的に盛り上がって「これで終わったのね」って気持ちになっていたので、その後に続く「幽斎」の章はちょっと長すぎて飽きた。
ラストは少しだけ明るく晴れ晴れとしたシーンで終わってホッとできた部分もあるし書いてある内容(幽斎と光秀の関係)は興味深かったので不要だったとは思わないけど、もう少し短いか、あるいは内容を分割して他の章の間に入れるとかしたほうがよかったのではないかと思った。

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2011/07/26

木内昇/茗荷谷の猫

茗荷谷の猫 
茗荷谷の猫

幕末の江戸から昭和の東京まで。   
それぞれの時代に生きる市井の人々の生活を切り取った短篇集。
それぞれの話が前に出てきたどれかの物語とほんのちょっとずつ緩やかに繋がっている構成が上手い。
どの話も普通の人々のとらえどころのない日々が書いてあるだけなので大きな驚きや感動はあまりない。
あまりにも淡々としすぎていて私なんかではまだそのよさを上手く受け止めることができない感じ。

そんななかでちょっと異色なのが「隠れる」という短編は面白かった。
誰にも縛られず、誰にも干渉せずにただ自分の好きなように、流れるように生きたいと願い、一時はそんな生活を手に入れたかのように見えながら、その実 どんどん人に干渉され生活を侵食されいく男・耕吉。
逃れようとすればするほど深みにはまり搦め捕られていく耕吉の姿が滑稽でもあり、恐ろしくもあった。

表題作のほか「染井の桜」「黒焼道話」「仲之町の大入道」「隠れる」「庄助さん」「ぽけっとの、深く」「てのひら」「スペインタイルの家」を収録。

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2011/07/24

柳広司/吾輩はシャーロック・ホームズである

吾輩はシャーロック・ホームズである (小学館ミステリー21)
吾輩はシャーロック・ホームズである (小学館ミステリー21)

慣れないイギリスでの生活とプレッシャーでノイローゼになり、自分をシャーロック・ホームズだと思い込んだ日本人留学生K・ナツメは彼を心配した下宿先の老姉妹によってドクター・ワトソンのもとに連れてこられる。
ちょうど不在だったホームズ本人の勧めもありワトソンはナツメ・ホームズの妄想に付き合い始めた矢先、2人は本当に殺人事件に遭遇してしまう…。

細かい設定と丁寧な書き込みでホームズも漱石もそんなに知らない私でも楽しめた。
特にナツメとワトソンの漫才のような噛み合わない会話が笑える。

またパロディとしてだけではなく、ミステリとしても丁寧に作られていて読み応えがあった。

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渡瀬草一郎/陰陽ノ京 月風譚 黒方の鬼

陰陽ノ京 月風譚 黒方の鬼 (メディアワークス文庫)
陰陽ノ京 月風譚 黒方の鬼 (メディアワークス文庫)

時の左大臣・藤原実頼の屋敷で彼を呪う呪符が発見される。
犯人は不明だが都の重臣の身を案じ陰陽頭・加茂保憲は長子であり陰陽寮の歴生でもある光榮(みつよし)と安倍晴明の長子である吉平(よしひら)に大臣の極秘の警護を命じる。
見回りを始めたその夜、光榮は屋敷近くで鬼と戦う異国の少女・藤乃に出会う。
藤乃は実頼が昔短い期間面倒を見たことがある異国の美女・桔梗の娘だった。

陰陽寮の道士たちと異形の鬼との闘いの物語。
陰陽寮を預かる賀茂家の長子でありながら姿形にも礼儀も無関心で「変人」扱いされながらもその卓抜した力で一目置かれている光榮をはじめ、光榮のライバルで一緒にいても全く話は咬み合わないがいざ祓うべきものの前に立つとお互いの役割を無言のうちに分かり合える相手である兼良(かねら)、年齢に似合わぬ落ち着きと実務能力に長け保憲からも重用される吉平、少年のなりをしているが実は吉平と同年代の少女である貴年(たかとし)ら道士たちがみんな個性的で楽しい。
言動も首尾一貫していてきちんと設定されているなあというのがよく判る。

敵もかなり手ごわくて読み応えあり。
ストーリー展開も丁寧だし伏線も効いていて面白かった。

実頼が左大臣という身分なのにいい人で泣ける。

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2011/07/23

日本推理作家協会 編/MARVELOUS MYSTERY

MARVELOUS MYSTERY 至高のミステリー、ここにあり ミステリー傑作選 (講談社文庫)   
MARVELOUS MYSTERY 至高のミステリー、ここにあり ミステリー傑作選 (講談社文庫)

7人の作家による短編ミステリーのアンソロジー。   
収録作品は横山秀夫「罪つくり」、桜庭一樹「脂肪遊戯」、門井慶喜「早朝ねはん」、三上洸「スペインの靴」、大崎梢「標野にて 君が袖振る」、薬丸岳「オムライス」、北森鴻「ラストマティーニ」の7編。

「好きな作家さんがたくさん入ってる」と思って買ったら、7編のうち4編は既読だったという…orz
まあ、考えてみれば好きな作家の作品はそれなりに読んでいるわけだから、新作書きおろしでもなければ既読の作品に当たる確率も高くなるわけだから仕方ない。
それに好きな作品ばかりだったので再読でも面白かったのでヨシとしよう。

未読の中では三上洸「スペインの靴」がヤなヤツばっかり出てくる話で読後感はよくなかったけど、それも含めて印象に残った。
ただ、最後の最後で支配者と被支配者の立場が逆転するんだけど、そのきっかけとなる出来事に今ひとつ意外性がなかったのが残念。
それにこれってミステリーなのかな?という疑問もあったり。
これもミステリーの範疇なのだとしたらますますジャンル分けというのもが見えなくなる感じ…。
といっても単なる読者としてはジャンルに関わらず面白い作品が読めればそれでいいだけだけどね。

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2011/07/20

大沼紀子/真夜中のパン屋さん 午前0時のレシピ

真夜中のパン屋さん (ポプラ文庫)
真夜中のパン屋さん (ポプラ文庫)

人のよさそうな笑顔が印象的なオーナーと、仏頂面のイケメンパン職人の2人で切り盛りするパン屋「Boulangerie Kurebayashi」(ブランジェリークレバヤシ)。
営業時間が夜中の23時から29時までという一風変わったパン屋を舞台にしたハートウォーミングストーリー。

もっとさっくり軽い内容かと思ったら意外にみっしりと中身が詰まったちょっとハードなテーマの物語だった。
既にいない人を中心に知らない同士が集まってくるという設定だけど変に感傷的にならない所がいい。
展開される物語も少し辛口だけど結末は暖かく読後感もよかった。

ただ、どう考えても昼の営業のが客が入るだろうに何故営業時間が夜中なのかが謎。
店側に売る気がないならともかくイケメンパン職人・弘基は「一人でも多くの人間が俺のパンを食うべき」とまで言っているわけだから、その時間に営業すると決めたのには何か明確な理由があるはず。
物語的には営業時間が夜だからこその出会いや事件があるという設定なんだと思うけど、そうであればこそ「そういう設定」で流すのではなくきちんとその理由を説明したほうが説得力があったのではないかと思う。
あと、最初に出てくる営業時間の記述が「午後23時から午前29時」って書いてあるのが、どうにも気持ち悪い。
午前って書くなら5時でいいのでは?

パン屋の居候女子高生・希実(のぞみ)が1日中制服を着てるのもなんとなく不自然。
作品中で「着るものに興味がないし合理的」といったような理由付けが書いてあった気がするけど、ずっと着れてば傷むし汚れるんだから却ってお金が掛かりそうな気がするけどなあ。
学校の制服なんか洗濯するの大変だと思うんだけど。
しかも夜中に外に出ることが多いのに制服のままってちょっと解せない。

それから(パン屋って設定だから仕方ないかなとは思うけど)人がいっぱいいてしかも小さい子どもまでいるのに、ちゃんとした食事のシーンがないのもちょっと気になった。

ちょっとオタクっぽくてストーカー体質の斑目氏やニューハーフのソフィアのキャラクター設定と、物語への絡ませ方はなかなか面白かった。

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2011/07/18

三浦しをん/仏果を得ず

仏果を得ず (双葉文庫)
仏果を得ず (双葉文庫)

文楽の義太夫の芸に魅せられ一生をこの道に捧げると決めた青年 健(たける)の成長物語。

面白かった。

展開が速くて読みやすいし、相変わらず登場人物が生き生きしていて楽しい。
文楽の世界も丁寧に、でもしつこくなく描いてあって効果的。
舞台が見たくなった。
悪人が出てこないので安心して読める分、ちょっと盛り上がりには欠けるけど明るく前向きな結末で読後感も○。

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Fantasy Seller

Fantasy Seller (新潮文庫)
Fantasy Seller (新潮文庫)

『Story Seller』の番外編。
全員が日本ファンタジーノベル大賞の大賞あるいは優秀賞受賞者という贅沢な8人によるファンタジー短編のアンソロジー。

ファンタジーのアンソロジーって読んだことなかったけどこうやって並べて読んでみると、いろんなパターンのストーリーや舞台設定があるんだなと改めて実感。
加えてどの作品も短編ながら深みのある読み応えたっぷりの作品ばかりで大満足の1冊だった。
多くの作品が著者のシリーズ物に出てくる登場人物が主役になっていて、「番外編」的な物語になっているのもファンには嬉しいんじゃないかな。
どれも面白かったけど、なかでも仁木英之「雷のお届け物」、紫野貴李「哭く戦艦」、石野晶「スミス氏の箱庭」がよかった。

そのほかの収録作
畠中恵「太郎君、東へ」、森見登美彦「四畳半世界放浪記」、堀川アサコ「暗いバス」、遠田潤子「水鏡の虜」、宇月原晴明「赫夜島」

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2011/07/16

佐藤亜紀/醜聞の作法

醜聞の作法 (100周年書き下ろし)
醜聞の作法 (100周年書き下ろし)

18世紀のフランスでは訴訟を有利に運ぶために相手の悪行を取りざたした怪文書をわざと流出させて世間に醜聞を振りまくことが流行していた。
そんな中、ある貴族の夫婦に育てられた美しい娘が、夫の友人で裕福だが色好みの老人に気に入られ後妻になる話が持ち上がるが、娘は結婚を誓った相手がおり養父の勧めを頑として受け入れない。
そんな娘に合を煮やした養父は彼女を無理やり修道院に閉じ込めてしまう。
娘に同情していた養母は彼女を無事救い出し、恋人と結婚させるために流行の方法で情報を流すことを思いつく。
雇い主である妻と、彼女に怪文書の手配を依頼された男、さらに男に大金で雇われ怪文書を書くことになった売れない弁護士の3人による全編書簡形式の小説。

書簡という形式を取っているので内容は読みやすく判りやすかった。
けど、読みやすい分、理解できたのは表面的なものだけで、もう一段深いところにある意味は読み取れていない気がする。

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2011/07/15

海堂尊/ブレイズメス1990

ブレイズメス1990
ブレイズメス1990

1年半の外部研修から東城大附属病院に戻された世良は、佐伯病院長直々にフランスで開催される学会で発表する垣谷講師のお供を言い付かる。
そのとき世良は垣谷のアシスタント役だけではなく、ある重要な任務を佐伯から受け取っていた…。

モナコで悠々自適な生活を送りながら独自のルールに基づき医療活動を行っていた天才医師・天城を召喚し、東城大附属病院に心臓外科センターを開設させる話。

最初世良がモナコから天城を連れてくるまではなかなか物語に入れなかった。
原因は今回初めて出てきた新人研修医の駒井の存在。
卒業旅行で訪れたフランスで学会に参加する垣谷と世良に会い、行動を共にするという設定なんだけど、この駒井の使う九州弁がすごく邪魔だった。
他の登場人物がほとんど標準語なのに、駒井一人が

「自己紹介もせず、失礼ばつかまつりました。あんまり奇遇で、つい馴れ馴れしく話しかけてしまったとです。無礼ば、お許しつかあさい。~」

…てな感じでずっと喋るので違和感だらけで物語に入っていけない。
あまりに違和感があるので、実は何か重要な役割を担っている人物で最初に見せたあけっぴろげで人懐こい性格は実は表面だけなんじゃないの?と穿った見方をしてしまうくらいだった。
彼の存在自体はともかく、あの喋り方は不要だったんじゃないかと思うけどな。

そんな駒井の登場シーンが日本に来てからはグンと減るのでここからは一気読み。
スピード感があって面白かった。

東城大学に招聘されるだけあって天城もまた個性的かつ好戦的。
それに押されて今回はあの高階が防戦一方なのが新鮮だった。

『ブラックペアン1988』のときはタイトルにあるブラックペアンが内容にもきちんとリンクしていたけど、この作品ではブレイズメスが特に内容に関わっているようには思えなかったのが残念。
続きを暗示させる終わり方をしているので、次の天城の活躍を期待したい。

ところで世良と花房はいつの間にそういうことに?
ちなみに例の火災事故はこの翌年らしい。
そこで花房と速水は出会うわけでしょ。
その時にはまだ世良はハートセンターにいるんじゃないかと思うので、いつどうやって心が動いていったのか気になるところだ。

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2011/07/12

ココログ:「スパム防止認証画像」を設定しました。

ここしばらくなくなっていたスパムコメントが、今日突然バンバン飛んできてメールの受信箱もコメント一覧もいっぱいになってしまいました。
消しても消してもやってきて邪魔臭いので、取り急ぎコメントに「スパム防止認証画像」の設定をしました。

コメントする際に下記のような認証画像が出てきたら、グレーの背景の中に書いてある数字とアルファベットをその下のテキストボックスに入力して「送信ボタン」を押してください。

spamninshou

しばらく様子を見て大丈夫そうならそのうち外しますので、それまでの間お手数ですがよろしくお願い致します。

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中野京子/残酷な王と悲しみの王妃

残酷な王と悲しみの王妃
残酷な王と悲しみの王妃

ヨーロッパ各国の王と、彼らに翻弄された王妃たちの物語。
小説ではなく歴史解説本。

バカで乱暴者ってだけでも十分酷いのにそこにお金と権力がプラスされると目も当てられないっていう話が山盛りだった。
ただ、この本では王様の非情っぷりばかり書いてあるけど、視点を変えれば王妃側にだってそういう要素がなかったとは言えないだろうなと思う。
王や王妃だからって幸せとは限らないのね。

それにしてもヨーロッパの王室は血縁関係がぐちゃぐちゃでよく判らない。
しかも名前もみんな似てるし。
日本も平安あたりまで行くとだんだん分かりにくくなるけど、ヨーロッパの複雑さには敵わないね。あっちで歴史を勉強する人は大変だろうなあ。

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2011/07/11

中野京子/怖い絵 3

怖い絵3 
怖い絵3

シリーズ最終刊。
相変わらず1枚ごとに丁寧な解説がついているので、読みながら何度も各章の最初のページに掲載された図版を確認して楽しめる。
ただやはり大きさが制限されているため細かい部分は見えないのが残念。
こういう昨品こそ電子ブックにしてくれると図版を拡大して見ることもできるので便利だと思うんだけどなあ。

今回一番印象的だったのはフーケの『ムーランの聖母子』
真っ白い肌でスキンヘッドの年齢不詳の女性と彼女に抱かれる丸々とした赤ん坊。
そのバックには赤と青に塗り分けられた天使たち…。
なんだかすごく無機質でサイボーグみたい。
600年も前に描かれた絵とは思えない。
ちなみにこの絵のモデルはフランス王・シャルル7世の寵姫・アニエス・ソレル。
実際もこの絵のように片胸を出した服を着ていたらしい(!)。
で、まわりの女性たちも負けじと真似したとか…15世紀のフランス恐るべし(ーー;)

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2011/07/10

ほたるの夕べ@椿山荘

昨日、友人と椿山荘にホタルを見に行ってきました。

椿山荘のホタル観賞は以前から話には聞いていたのですが、実際に足を運んだのは今回が初めて。   
椿山荘の緑深い木々に囲まれた庭の遊歩道に作られたコースに沿って自由に散策しながらホタルを探します。    
今年の無料開放期間は5月21日~7月10日。    
終了間際だったのでもう数が少なくてほとんど見られないのでは?とちょっと心配でしたが、歩き出してみれば遊歩道に沿って流れる小川の草むらや池の周りで予想以上に強く明るく光る小さな黄緑色の光をいくつも見つけることが出来ました。

東京の真ん中で、しかも近くに水があり湿度も高いせいか暗くなってもかなり蒸し暑かったですが、なかなか風情のある幻想的な経験が出来ました。

毎年同じ時期に開催されているようですので、来年の夏に訪れてみてはいかがでしょうか。  

椿山荘 ほたるの夕べ~Firefly Festivities~

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椿山荘に行く前に最寄り駅の地下鉄有楽町線・江戸川橋駅近くにある「ビストロ・ソレイユ」さんで食事をいただきました。   
ネットで検索して見つけたお店だったのですが、とても素敵なお店でした。

こじんまりした田舎風の佇まいも、出迎えてくれるスタッフのかたの笑顔もとても気持よかったです。   
メニューはディナーコース(3500円)と、2人で取り分けられるペアコース(2人分で5500円)の2種類。    
私たちはディナーコースをいただきました。    
アントレ、サラダあるいは前菜、メインの3種類をメニューから1品ずつ選んで、そこにデザートとコーヒーまたは紅茶つき。    
写真は私がいただいた「鶏レバーのパティ」「真子ガレイのカルパッチョ」とデザートのシャーベットです。    
(ホントはデザートの前にメインの「豚肉とじゃがいもの田舎風ロースト」があったのですが、写真があまりにもボケボケで載せられませんでした。下のはまだマシですがピンボケなのは変わらないので拡大は出来ません^^;雰囲気だけ察してくださいw)    
どの料理もかなり量がたっぷりでしたが、味付けがくどくないのでどんどん食べられました。   
このボリュームで3500円は安い!   
もちろん味も美味しくて大満足でした(^^)

こちらのお店もオススメですが、テーブル席のみで20席弱くらいの店内は7時前にはほぼ満席になっていましたので行かれる際は予約をお勧めします。

ちなみにランチは前菜、メイン、パンと飲み物で1000円とか!   
わざわざでも行きたいかも(^^)

ビストロ・ソレイユ (Bistro Le Soleil)

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20110709-02

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柳広司/キング&クイーン

キング&クイーン (100周年書き下ろし)
キング&クイーン (100周年書き下ろし)

元SPの安奈は勤めているバーのオーナーと常連客のリコに頼まれ、何者かに命を狙われている風変わりなチェスの元世界チャンピオンを一人で警護することになる。

読みやすくて面白かったけど、最初に広げた風呂敷が少々大きすぎたかも。
最後に明かされるタイトルの意味や今まで見えていたものがひっくり返る構成の面白さはあったけど、最初の印象が強かっただけに最後に語られる真実は意外ではあるけどちょっとスケールダウンしてしまった感は否めない。
(Amazonのレビューに書かれているほどひどいとは思わないけど…)

古武術の達人で元SPの安奈、警察を辞めても面倒なことに首を突っ込む安奈に「もうやめろ」と言いつつも情報を提供し、最後にはわざわざ出張ってくれる元上司という安奈側の人物設定はよかった。
この組み合わせの話はもっと読んでみたいな。
特に上司の首藤と北出がカッコよかったので彼らが主人公も話が読んでみたい。

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2011/07/08

島田荘司/写楽 閉じた国の幻

写楽 閉じた国の幻
写楽 閉じた国の幻

息子の死をきっかけにして家族も仕事も失った主人公が、起死回生を図るために誰も解き明かしたことのない「写楽の謎」に迫る。
残された数少ない記録を元に構築した推理の結果導き出された意外な人物像とは…。

や、やっと読み終わった…。
覚悟はしていたけどやはり680ページは長かった(ーー;)

写楽の正体としてどんな人物像を想定しているのかは途中で何となく見当はついたけど、そこに辿りつくまでの論理の組み立てに説得力があって面白かった。
特に後半は一気読み。

ただ、物語の冒頭にある死亡事故や家族間の諍いの部分は本当に必要だったのかがとても疑問。
それを切っ掛けに重要な協力者である片桐と出会うわけだけど、出会うだけなら別にあそこまで悲惨な内容にすることもないんじゃないのかな。
しかも物語の後半になると、それらについてもほとんど触れられなくなっていくし。
却ってそれによって引き起こされたとされて物語の中に度々登場する主人公の体調や精神の不調が物語のスムーズな進行を妨げていたように思う。

あと、最初に出てきた謎の肉筆画の正体はなんだったの?
浮世絵には何の知識もないキャラクターだったように見える片桐が、「写楽とは関係ない」とあそこまで断言する根拠は何?
片桐は何を知ってるの?

主人公である佐藤を始め、登場人物にはあまり魅力を感じなかった。
何となく誰にも思い入れが出来ないというか。
写楽の謎自体が既に大きい物語なんだから、登場人物には逆にあまり背景を持たせないほうがスッキリしていてよかったんじゃないのかなあ…。

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2011/07/02

桜庭一樹/伏 贋作・里見八犬伝

伏 贋作・里見八犬伝
伏 贋作・里見八犬伝

内容紹介
娘で猟師の浜路は江戸に跋扈する人と犬の子孫「伏」を狩りに兄の元へやってきた。里見の家に端を発した長きに亘る因果の輪が今開く。

人間と犬の子孫である"伏"という凶暴な存在がいる江戸。
数少なくなった伏と天才的な狩りの腕を持つ少女・浜路の攻防と、両者の間に芽生える奇妙な友情…という展開は面白いと思ったけど、なんとなく今ひとつ。
全体的に小説として書かれたのではなく同じタイトルの小説ではない作品(映像とか舞台とか)があってそれを文章に写した作品みたいな感じがして、その距離感がどうもしっくり来なかった。
それに、伏が人間と犬の子孫であることは判ったけど、それが何故凶暴で忌み嫌われる存在になってしまったのかの説明が足りないように思った。

読み終わった後、作品の感想をネットで見て歩いていたら「劇団☆新感線でやったら面白そう」と書いてあるブログがあってなるほど!と思った。
元々「八犬伝」自体新感線向きの題材ではあるけど、更に過激でアクションシーン満載のこの作品は確かに新感線でやったら見応えありそう。

アニメ映画の企画が進行中との噂もあるらしい。
多分、この作品はビジュアル化したほうが生きると思うな。

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