伊藤遊/鬼の橋
自分の過失で義母妹を死なせてしまった少年・篁は大きな喪失感と罪悪感の中で鬱々とした毎日を送っていた。
そんなある日、篁は死んだ父親の作った橋を守る天涯孤独の少女・阿子那と出会う。
ときならぬ大雨に流されてきた大木が橋の橋脚にからまりこのままでは橋が壊れてしまう、助けて欲しいと叫ぶ阿子那の前に現れたのは地獄から逃げて来た鬼・非天丸だった。
大切なものを失い自暴自棄になっていた篁が、阿子那と非天丸の信頼の強さ、前向きな明るさに触れて大人になっていく過程を描いた物語。
丁寧に描かれた子ども達、そして何より地獄から逃げてきて阿子那と出会い己の過去を反省し急速に人間らしくなっていく非天丸の心情が胸に迫る。
児童文学とのことだけれど、確かに主人公は子どもではあるけれど作品自体は「子ども向け」の曖昧さはない。
平安時代の習慣や言葉遣いなども注釈なしできちんと描かれ、「子どもには難しいのでは?」と思うくらい。
でも、こうしたきちんとした文章で心に響く物語を読むことが子供たちを育てて行くんだろうな。
期待していた内容ではなかったけれど、面白かった。
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コメント
福音館で創作童話ですか。
しかも内容はなんとなく「曽我兄弟」とか「扇の的」とか、なんだか昔のおはなしを集めたようなものを連想させるような時代背景なんですね。
なかなか出会えないタイプのお話かも。
#しかも、福音館。<ややクドイです
投稿: ムムリク | 2011/10/15 13:15
■ムムリクさん
コメントありがとうございます(^^)
主人公が最近お気に入りの小野篁だったので読んでみたんですよ。
残念ながら私が期待したような内容ではなかったけど、読みやすいし登場人物の心情が丁寧に描かれていて面白く読みました。
>しかも、福音館
福音館って何かあるんですか?
投稿: tako | 2011/10/15 13:34
>福音館って何かあるんですか?
いえ、児童書というのはよいとして、あまりこうした時代を思わせるようなタイプはイメージになかったものですから。
福音、館。でもありますし(^^;
投稿: ムムリク | 2011/10/17 11:45