澤見彰/はなたちばな亭らぷそでぃ
神田の蝋燭問屋橘屋の手代・金一は両国橋のたもとで一匹の子犬と出会う。
冬空の下で震えている子犬を見捨てられず金一は懐に入れて連れ帰り、店の敷地内で寺子屋「たちばな堂」を営む幼なじみのお久に預ける。
身体は白いのに目の周りだけ「隈取」のように黒いのでクマと名付けられたその子犬、実は白い子狸が化けた姿だった。
うーん、どうも人物設定が雑なような気がしてならない。
お久はまだいいけど、問題は金一。
しゃべり方も行動もがさつでとてもちゃんとした店の手代さんとは思えない。
会話以外の語り口が落語調でテンポはいいんだけど、手代の金一が「八っつぁん、くまさん」みたいなノリじゃダメでしょ。
それに、隠居した先代に頼まれて店の様子をこっそり調べて報告する密偵のような役をやっているのはいいけど、天井裏に隠れる意味が判らないし。
最後も「次に続きますよ」感ありありの気を持たせる書き方で終わっていたけど、あのくらいの話ならちゃんと完結させたほうがよかったのではないかと。
時々出てくる微妙な語尾(「~なんだ(です)。」が「~なン。」となる)も気になった。
地の文にも会話にも出てくるし、そうなるところとならないところがあって法則がよく判らないので読んでいて気持ち悪かった。
<収録作品>
暮れの使い / はなむけ / 名医の秘薬 / やきもちは狸も食わぬ / 十五夜政談・上 / 十五夜政談・下
この中では「名医の秘薬」が面白かった。
井戸端でのお久と謎の人物(実は狸)との噛み合わない会話が笑えた。
ところでお店は「橘屋」、寺子屋は「たちばな堂」、じゃあタイトルの「はなたちばな亭」というのは何なんだろう?
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