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2011年12月の4件の記事

2011/12/31

夢枕獏/秘帖・源氏物語 翁‐OKINA

秘帖・源氏物語 翁‐OKINA (角川文庫)
秘帖・源氏物語 翁‐OKINA (角川文庫)

光源氏の妻・葵の上に取り憑いた物の正体とそれが出した謎々の答えを光と芦屋道満が探る物語。

いかにも獏さんらしいアプローチの源氏物語。
面白かった。
私はここに出てくる、好奇心旺盛だけどものごとに動じず、自分の感情もあまり表に出さない光が好きだな。
このくらいエキセントリックなほうが、あの物語の主人公らしい。
ただ、それではこんなに長く読まれなかったろうけどねw

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2011/12/19

富樫倫太郎/謙信の軍配者

謙信の軍配者
謙信の軍配者

早雲、信玄と続く「軍配者」三部作の最終巻。

楽しみにして読んだんだけど、三部作の最後がこれでいいのかどうか疑問が残る終わり方だった。

何よりもタイトルと内容が合ってない。
謙信の軍配者である冬之助の出番はごく僅かで、ほとんど謙信自身、あるいは「信玄の軍配者」である四郎左(勘助)の話が内容の殆どを占めている。

とにかく謙信のキャラが濃すぎ。
しかもその濃さが魅力的じゃないのが痛かった(ーー;)
自分は自国の農民が戦で死んでしまっても「どこかから連れてくればいい」とか言ってるくせに、信玄が他の領土を侵略して行くのが許せないとかよく判らない。
(しかも信玄はその後農民のことも考えた支配をしているみたいだし)
その当時の支配階級の人間の感覚としては謙信の意識が普通だったのかもしれないけど、今の感覚とはずれているんだからその辺りの補正をしないと単にわがままで堪え性のない子どもとしか思えない。
さらにその謙信の横で冬之助はただ状況を見守っているだけでほとんど何の働きもしないし、かといって彼自身の私生活が描写されるでもなく…。
これじゃあ冬之助は何のために出てきたのかよく判らないという展開。

数度に渡る川中島の戦いを中心とした武田軍と上杉軍(長尾軍)の戦いぶりなどは面白かったので、元々謙信と信玄の話だったらまた違ったのかもしれない。

小太郎もいつの間にか病気になって戦いの場に臨むシーンもなく死んでしまうし…。
最後まで読んで振り返ると信玄と謙信、そして四郎左の印象が強烈すぎる。 やっぱり最後はキャラの濃いヤツが勝つってことなのかしら。

結論:この三部作は全編四郎左の物語として読むのが一番楽しめると思う。

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2011/12/13

梓崎優/叫びと祈り

叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)
叫びと祈り (ミステリ・フロンティア)

外国語に堪能で、それを生かして国際的な雑誌の記者として働く青年・斉木を主人公にした連作短編集。

なんだか不思議な味わいの物語だった。
ミステリーでもあるし、同時に斉木の心象風景でもあるような。

サハラ砂漠の真ん中や、アマゾンの奥地など物語の舞台となる場所があまりにも自分のいる場所とかけ離れているので、その場所の情景をイメージするのが難しかった。
斉木も主人公ではあるのだけれど、どこか印象が薄いし。

でもそれがすべて最終話「祈り」の圧倒的なラストシーンで覆される。
非常にきちんと計算された物語だったんだなあと思う。

「祈りは届く」

<収録作品>
砂漠を走る船の道 / 白い巨人(ギガンテ・ブロンコ) / 凍れるルーシー / 叫び / 祈り

あ、ただ「凍れるルーシー」の結末はよく判らなかったな。
これってホラーなのかな?

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2011/12/11

ジェフリー・ロビンソン/ザ・ホテル-扉の向こうに隠された世界

ザ・ホテル―扉の向こうに隠された世界 (文春文庫)
ザ・ホテル―扉の向こうに隠された世界 (文春文庫)

ロンドンの高級ホテル「クラリッジ」で働く人びとの仕事ぶりを描いたノンフィクション。
韓国大統領の滞在と英王室の公式晩餐会という大きなイベントを中心に、ホテルを訪れるお客様の満足のためのスタッフの奮闘ぶりが多彩なエピソードによって綴られている。

エピソードは数も多く内容も様々で興味深いものも多かったけど、ただ並列にズラズラと並んでいるだけなので全体的にちょっと冗長な印象は残った。
それと、やっぱり翻訳モノだからなのか時々意味(意図)がよく判らないものも。
また、ほとんどの場合登場人物(スタッフ)が役職抜きの名前(姓)だけで出てくるので、「この人は何の担当だったっけ?」と何度も巻頭の登場人物一覧を見直す必要があった。

それでもホテルでは宿泊客が想像も出来ないくらいのスタッフが日夜動いているからこそ、 「心地よさ」が維持されているのだなあということが理解できた。

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