富樫倫太郎/謙信の軍配者
早雲、信玄と続く「軍配者」三部作の最終巻。
楽しみにして読んだんだけど、三部作の最後がこれでいいのかどうか疑問が残る終わり方だった。
何よりもタイトルと内容が合ってない。
謙信の軍配者である冬之助の出番はごく僅かで、ほとんど謙信自身、あるいは「信玄の軍配者」である四郎左(勘助)の話が内容の殆どを占めている。
とにかく謙信のキャラが濃すぎ。
しかもその濃さが魅力的じゃないのが痛かった(ーー;)
自分は自国の農民が戦で死んでしまっても「どこかから連れてくればいい」とか言ってるくせに、信玄が他の領土を侵略して行くのが許せないとかよく判らない。
(しかも信玄はその後農民のことも考えた支配をしているみたいだし)
その当時の支配階級の人間の感覚としては謙信の意識が普通だったのかもしれないけど、今の感覚とはずれているんだからその辺りの補正をしないと単にわがままで堪え性のない子どもとしか思えない。
さらにその謙信の横で冬之助はただ状況を見守っているだけでほとんど何の働きもしないし、かといって彼自身の私生活が描写されるでもなく…。
これじゃあ冬之助は何のために出てきたのかよく判らないという展開。
数度に渡る川中島の戦いを中心とした武田軍と上杉軍(長尾軍)の戦いぶりなどは面白かったので、元々謙信と信玄の話だったらまた違ったのかもしれない。
小太郎もいつの間にか病気になって戦いの場に臨むシーンもなく死んでしまうし…。
最後まで読んで振り返ると信玄と謙信、そして四郎左の印象が強烈すぎる。 やっぱり最後はキャラの濃いヤツが勝つってことなのかしら。
結論:この三部作は全編四郎左の物語として読むのが一番楽しめると思う。
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