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2012年1月の13件の記事

2012/01/31

今野敏/任侠学園

任侠学園
任侠学園

「素人さんに迷惑をかけない」が信条の人情派ヤクザが赤字続きで立ち行かなくなった高校を再建する話。

内容的にはこういう設定にありがちな展開で目新しさはなかったけど、人物設定がはっきりしているので感情移入がし易くて面白かった。

主役側にもうちょっと弾けた登場人物がいたり、吹っ切れた展開があったりしてもいいんじゃないかなあと思える部分もあったけど、あくまでリアリティを交えて真剣に悩んだり、怒ったり。
それに加えて語り手が心配症の若頭だったりするのも今野さんの作品らしくてよかった。

次は『任侠病院』らしい(笑)

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2012/01/30

中山七里/要介護探偵の事件簿

要介護探偵の事件簿
要介護探偵の事件簿

『さよならドビュッシー』の主人公の少女の祖父である、香月玄太郎氏を主人公にしたミステリー短篇集。

面白かったー(^^)

やっぱり中山さんは緊迫した状況を時間経過と共に描く部分がとても上手い。
今回も銀行強盗とか、最後のカーチェイスとかハラハラドキドキさせてくれて楽しかった。
あと「介護」という扱いが難しいテーマもうまく取り入れていたと思う。

ただこの後、『さよならドビュッシー』に続くんだなーと思うと複雑な心境。
あの、目の前の邪魔ものを蹴散らしていくパワーと、そこで懸命に咲く花を愛おしむ繊細さを合わせ持った玄太郎さんを待っている運命を思うと胸が痛みます。

<収録作品>
要介護探偵の冒険 / 要介護探偵の生還 / 要介護探偵の快走(チェイス) / 要介護探偵と四つの署名 / 要介護探偵最後の挨拶

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2012/01/28

有栖川有栖/作家小説

作家小説
作家小説

「作家」を主人公にした8つの短篇集。

ミステリーではなく、SFのようなファンタジーのようなホラーのような…ちょっと筒井康隆氏を彷彿とさせる作品群。
いつもの有栖川さんの作品とはかなり趣きが違うけど、いろんな趣向の作品があってとても面白かった。

特に(ご本人は不本意かもしれないけどw)「作家漫才」がすごく面白かった。
今は読書芸人が集まって番組をやれるような時代になってきたんだから、ホントにこういう漫才コンビが出て…来るわけないかw

<収録作品>
書く機械(ライティング・マシン) / 殺しにくるもの / 締切二日前 / 奇骨先生 / サイン会の憂鬱 / 作家漫才 / 書かないでくれます? / 夢物語

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2012/01/26

安澄加奈/いまはむかし ~竹取異聞~

いまはむかし―竹取異聞
いまはむかし―竹取異聞

月から地上の若者に嫁いだかぐや姫がもたらした5つの宝。
今では人々の間で無用な争いを招き多くの人々を傷つけるものになってしまったその「宝」を探して月に返すために困難な旅を続ける、かぐや姫の末裔の少女と彼女を守るために育てられた少年の物語。

表現が硬い部分もあったけど、ひたむきで前向きな二人の気持ちが真っ直ぐ伝わってくる気持ちのいい作品だった。
二人が旅の途中で出会う若者たちも爽やかで好感が持てた。

ただ敵役の大人が典型的で面白味や迫力に欠けていたのがちょっと残念。
特に『竜の首の珠』を持つ里長はもうちょっとどうにかならなかったのかな。
それだけの力のある宝を持てるのであれば、その人間自身も(善きにつけ悪しきにつけ)それだけの力がなければバランスが取れないように思うのだけど。
ただ、最初からそんなに強敵ばかりだったら話がどんどん長くなるから大変かな。
その点、『燕の子安貝』と『蓬莱の玉の枝』が2人の手に渡る展開はスムーズで納得しやすかった。

それぞれの道を歩き出した若者たちのその後も見守っていたくなる清々しい作品。

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2012/01/24

西澤保彦/腕貫探偵、残業中

腕貫探偵、残業中
腕貫探偵、残業中

『腕貫探偵』の続編。

前作とは微妙に雰囲気が違うけど、全体的に話の展開は面白かった。
特に殺人のようないかにもな事件よりも、事件性はないように見えるけど調べてみたら実は…という展開の話が面白かった。
なかでも、誰もが質素で堅実だと思っていた女性教師が密かに楽しんでいた"趣味"について描いた「青い空が落ちる」は快作。
いろんな意味でかなり怖かった。

今回、腕貫氏は実は美味しい物を食べることにかけては妥協をしないグルマンだということが発覚。
その彼に懐いていく食いしん坊の美人女子大生ユリエがいい。
最初登場したときはうるさいだけのキャラに思えたけど、その後の何回かの登場でかなり印象が変わった。
彼女が登場する物語って他にないのかな?

<収録作品>
体験の後 / 雪のなかの、ひとりとふたり / 夢の通い路 / 青い空が落ちる / 流血ロミオ / 人生、いろいろ。

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2012/01/20

小路幸也/猫と妻と暮らす 蘆野原偲郷

猫と妻と暮らす 蘆野原偲郷
猫と妻と暮らす 蘆野原偲郷

亡くなった恩師の一人娘・優美子を娶い、自身も東京の大学で研究者として働く和弥は特別な土地である「蘆野原」の長筋の家系の人間であった。

読む前にどんな話なのかまったく知識がなかったので、冒頭の「家に帰ったら妻が猫になっていた」という展開にはびっくりしたけど、その後のすべてを包み込むように穏やかに流れていく物語がしみじみとよかった。
和弥が「こと」を「為す」様子、特に呪文が印象的。
こういう意味のある、そして決して軽々しくない言葉を、音の響きも考えながら組み合わせてそこにあるにふさわしい「呪」としていくのは、普通の文章を書くよりも難しいんだろうなあ。
「こと」の邪気を祓うだけでなく、その後の存在を寿ぐ意味もあるような言葉の組み合わせが素敵だった。

蕩々と滔々と、炎々と延々と、遠々と縁々と、流れて薙がれて和がれて消えよ
(p56「御禍付(みかづき)」より)

それから、長の家系でありながら土着の土地を出て東京で暮らす和弥や、蘆野郷に何の関わりもない優美子を土地で暮らす人々がすんなりと受け入れるという展開も小路さんらしくていいなあ、と思った。

これは何処かにある「蘆野原」という場所の話というよりも、全ての日本人の心の中にかつてはあったであろう大切なものの物語のような気がする。
大人になった多美や正也(あるいはその子供たち)がふたたび郷を開く、その日の物語も読んでみたい。

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2012/01/18

あさのあつこ/木練柿

木練柿(こねりがき)
木練柿(こねりがき)

『弥勒の月』『夜叉桜』に出てきた遠野屋の主・清之介を主人公にした短編集。

前二作は途中まではすごく面白かったのにラストで急に失速してしまった感があったけど、今回は短編だったせいか最後まで緊張感のある展開で面白く読めた。
ただ、久しぶりに読んだので信次郎の性格の悪さについて行けず、信次郎が出てくるたびにイヤーな気分になってしまった(ーー;)
ホントにこいつは八丁堀じゃなかったら何をしてたか分からないな。

表題作は清之介が遠野屋の一人娘で彼に刀を捨てる決心をさせたおりんと夫婦になるまでの話と、おりんを失った現在の遠野屋の中心となっている赤子のおこまが何者かに拐かされる話。
面白かったけど、前半と後半それぞれ独立させたほうがよかったのでは。

<収録作品>
楓葉の客 / 海石榴(つばき)の道 / 宵に咲く花 / 木練柿

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2012/01/16

西澤保彦/腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿

腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿
腕貫探偵 市民サーヴィス課出張所事件簿

折りたたみの椅子と机を携えてあらゆるところに忽然と姿を表し「市民サーヴィス課出張所」を名乗る正体不明の人物が、依頼者の悩みや疑問を聞いて謎を解く安楽椅子探偵もの。

最初の数篇はパターン化された書き出しと、性格付けもバックグラウンドも与えられていない(なのに強烈な印象を残す)探偵役の存在がマッチしていて面白かった。
ただその後は書き出しのパターンが崩れてしまい、それによって探偵役の人物の印象も薄くなってしまった感じ。
せめて書き出しだけは最初のパターンでずっと続けたほうがよかったな。

あと、登場人物の名前をわざと難読漢字(例えば「蘇甲(そかわ)」とか「門叶(とかない)」とか)にしていたけど、これは単純に作品を読みにくくしているだけなのでは。
他にメリットがあるとも思えないんだけどな。

<収録作品>
腕貫探偵登場 / 恋よりほかに死するものなし / 化かし合い、愛し合い / 喪失の扉 / すべてひとりで死ぬ女 / スクランブル・カンパニィ / 明日を覗く窓

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2012/01/12

鈴木麻純/ラスト・メメント 遺品蒐集家 高坂和泉の日常

ラスト・メメント 遺品蒐集家・高坂和泉の日常
ラスト・メメント  遺品蒐集家・高坂和泉の日常

残念ながら今ひとつ。

「遺品蒐集家」なんてタイトルが付いているからもっとプロフェッショナルな設定なのかと思ってたらそうでもないし、しかも「遺品を蒐集している」というのも話の中に出て来るだけで実際にはそれとは違った目的や行動ばかりで肩透かしされた気分。
(たとえば『書物狩人』みたいなのを想像していたもので…)
まず純粋に「遺品蒐集」の話がいくつかあって、その発展型みたいな形で今回のような展開になったほうが入って行きやすかったような気がする。

あと、「人付き合いの苦手な主人公が、明るく強引でお節介な異性に遭遇して影響を受けて行く」という設定もありがち(というか苦手)だし、意味ありげな少女と男のコンビも真意が分からないまま終わってしまったし。
(続きがあるってことかな?)

主人公の和泉の性格をもうちょっとしっかりさせて欲しい。
最初出てきたときはかなりクールなイメージだったのに話が進むにつれてどんどん他人に影響されてフラフラし始めるので読みにくかった。
高校生位の年齢の設定ならともかく25歳までその性格のまま生きてきたんだったら、そうそう簡単に他人の言動で動揺しないと思うんだけどなあ。

設定自体は面白そうなのにそれがうまく生かされていない感じで、何だか読み終わってもモヤモヤした気持ちばかりが残る作品だった。

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2012/01/10

服部真澄/わらしべ長者、あるいは恋 清談 佛々堂先生

わらしべ長者、あるいは恋 清談 佛々堂先生
わらしべ長者、あるいは恋  清談 佛々堂先生

年代物の車で日本全国を旅して歩く正体不明のおっちゃん、実はその道の好事家の間では有名な趣味人である佛々堂先生を主人公にした短編集。

面白かった。
全編に散りばめられた薀蓄と、それをさらりと話す佛々堂先生の関西弁がいい。
特にタイトルにもなってるわらしべ長者の話(「極楽行き」)がよかった。

前作はもうちょっと重い話が多かったし先生ももっと気難しかった気がするんだけど記憶違いかな?

<収録作品>
縁起 春 門外不出 / 縁起 夏 極楽行き / 縁起 秋 黄金波 / 縁起 冬 初夢

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2012/01/08

柚木麻子/あまからカルテット

あまからカルテット
あまからカルテット

中学からの親友である30歳を目前にした4人の女性を主人公にした短篇集。

面白かった。
微妙な年齢の女性が持つ悩みや迷い、葛藤が丁寧に的確に描かれている。的確すぎてその年齢を遠い昔に置いてきた私にもグサグサと突き刺さってきて痛かった(ーー;)

ミステリの要素はちょっとだけ。
「何かを頼りに誰かを探す」というパターンが多かったけど、設定に無理がないし展開もスムーズで読みやすかった。
物語全体の重要なテーマになっている料理もみんな美味しそう♪
そして何より4人の友情。
やっぱり友達って大切だよね…
と、わかっているけど、この4人のようにそれを維持していくのはなかなか難しいんだよね、これが。
だからこそ「大切」なんだと思うけど。

<収録作品>
恋する稲荷寿司 / はにかむ甘食 / 胸さわぎのハイボール / てんてこ舞いにラー油 / おせちでカルテット

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2012/01/07

宮部みゆき/おまえさん(上下)

おまえさん(上) (講談社文庫)
おまえさん(上) (講談社文庫)
おまえさん(下) (講談社文庫)
おまえさん(下) (講談社文庫)

橋のたもとで惨殺されていた身元不明の男と、自分の家の寝間で殺された名の通った薬種問屋の主人。
まったく関係がないように思われた二つの事件を調べ始めた平四郎は、二十年前誰にも気付かれずに闇に葬られた事件の存在を突き止める。

ハードカバーと文庫、両方が同時発売された宮部さんの新作。
私は文庫版で購入。

面白かった。
まっすぐに事件の経緯とその真相を追いかけていた前半。
そこから一転、それぞれの登場人物の人となりや人間関係に寄り添った描写になった後半。
かなり遠回りしてるなあと思いつつもそれぞれの想いを紡ぎだす丁寧な描写にひたすら引き込まれた。

いろんな事件が起きてそれがまたそれぞれ絡み合ってるし、登場人物の出入りも多いのに「この人誰だっけ?」「それって何の話?」にならずにするすると物語が頭の中に入ってくるのがすごい。
お徳や政五郎親分などお馴染みの登場人物たちも健在。
特に弓之助とおでこはそれぞれの環境の中で少しずつ大人になっていて、なんとなく久しぶりにあった親戚の子みたいな感じだったw
(最後のほう、おでこの活躍の場がなくて残念だった!)

前半では(見た目はともかく(^.^;)礼儀正しくスッキリした気質の将来有望な若者だった信之輔が、初めての恋に目が眩んでグダグダになってしまってからの迷いや葛藤の描き方が素晴らしかった。
その信之輔におとく屋の二階で源左衛門が昔語りをするシーンは泣けた。

弓之助の兄・淳三郎のキャラ設定や出し方、絡ませ方も上手いなあ。
(個人的には生田斗真くんのイメージw)
宮部さんの時代物はしっとりした作品が多くて、それはそれで大好きだけど、こういうタイプの人物を主人公にした軽い感じの作品も読んでみたいな。

ラストはかなり切ない終わり方だったけど、改めて宮部さんの「巧さ」を感じられた作品だった。
大満足!

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2012/01/01

有栖川有栖/幽霊刑事

幽霊刑事 (講談社ノベルス)
幽霊刑事 (講談社ノベルス)

理由もわからずに上司に射殺された刑事が、霊媒体質の同僚の助けを借りて事件を解決するミステリー。

基本設定が怪しげな割にその他の内容や人間関係がちょっとシリアスかつ複雑過ぎて今ひとつ入り込めず、読み終わるまでにかなり時間がかかった。
全体的にもうちょっと軽い雰囲気だったらよかったな。

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