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2012/03/27

高野史緒/架空の王国

架空の王国
架空の王国

フランスに隣接する小さな王国・ボーヴァル。
王立サンルイ大学の史学教授・トゥーリエの研究に憧れ、彼の元で勉強するために大学の特別枠の試験にエントリーした瑠花は一人王国を訪れる。
しかし、瑠花がトゥーリエ教授の指導を受けることは叶わなかった。
彼女が大学を訪れたその日、教授は大学内の書庫で死亡してしまったのだ。 教授の死因には疑わしいものはなかったが、死の直前に発せられた言葉の謎とその後紛失していることが判った重要な古文書の行方を探すため瑠花は教授の助手であったルメイエールと協力して捜査を始める。

ヨーロッパの架空の小国の王位継承に絡んだミステリー。
最初はファンタジーなのかなと思ったら、きっちりミステリーだった。
それはそれでいいんだけど、じゃあ、あの最初のほうの思わせぶりな感じは何だったのか…と疑問が残る。

物語の展開自体はテンポがいいし、内容も意外と軽めで面白かった。
ただ、舞台設定が緻密すぎるのが辛かった。
この内容であそこまで書き込む必要あるんだろうか…という部分がチラホラ。
こういう細かい設定こそが著者の持ち味なのかもしれないけど、話の本筋から意識が離れてしまうので読みにくい部分もあった。

それなのに、主人公の瑠花の背景には全く触れていないというのも気になった。
この物語自体には関係のない話なのかもしれないけど、(いくら成績優秀とはいえ)日本人の女の子が一人でヨーロッパの小王国に留学してこようと決心するまでに何があったのかとか、家族のこととかチラッと触れる部分があってもよかったのでは。
あと、(物語の内容には関係ないけど)瑠花が頭痛持ちなのに長い髪をいつも編みこみしたり、シニョンにしているという設定もすごーく気になった。
頭痛の人が髪を伸ばして、更にそれを編みこみとかすると余計ひどくなるような気がするんだけど。
実際に頭痛で苦しんでいる描写が頻繁に出てくるわけではなかったけど、読んでいるとこっちの頭まで痛くなってくるような気がした。

あと、ルメイエール側の事情というのもあまりにサラッと流されているけど、普通に考えたらけっこう重要だと思うんだけどな。

だいたいこの話には「王国」は出てくるけど「国民」は出てこないんだよね。
自分の国でこんな大変なことが起こったら国民は大騒ぎになるだろうに…。
まあ、そういう意味でいうとこれはファンタジーなのかも、という気はする。

歴史とはそうしたものです。真に真実であるものよりも、人々が真実と信じたがる事が真実になってゆく、そして読む者が勝手に謎と回答を見つけてしまう謎解き物語のようなものなのです。

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