橋本長道/サラの柔らかな香車
将棋に掛けた女性たちの闘いの物語。
2011年小説すばる新人賞受賞作。
知らない競技のルールや展開がどのくらい判りやすく、かつ簡潔に書かれているかというのが私にとってはけっこう重要な要素なんだけどそういう意味ではこの小説は今ひとつ。
著者の橋本さん自身将棋でプロを目指したこともあるという方のようなので(物語の語り手である「橋元」は著者の投影であると思われる)勢い描写が専門的になってしまったような気がする。
なので物語の終盤までは感覚的によく判らない描写が多くてちょっと退屈だった。
でも、サラとの最後の勝負の最中、塔子に異変が起きてからの最後の20ページ余りの描写がそれまでの展開を全て飲み込んで一気に弾けて行くのが爽快だった。
塔子が目指したという「終盤だけの将棋」のように、その20ページの中にこの作品の全てが詰まっていたと思う。
天才・サラの登場で一度は舞台から退場した七海の笑顔での締め括りも見事。
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コメント
香車の特性で直進しか出来ないのはいっけん欠点のように見えるが、人格的戦術として現しているところが前向きで力強いと思います。
投稿: プリエンタルポテリゴン | 2012/03/27 20:22