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2012年5月の20件の記事

2012/05/31

北山猛邦/密室から黒猫を取り出す方法 名探偵音野順の事件簿

密室から黒猫を取り出す方法 名探偵音野順の事件簿

シリーズ2作目。

これも前作同様登場人物は魅力的で文章も読み易かった。

ただ謎解きは作品によってばらつきがある感じ。
表題作は最初の猫の使い方は上手いな~と思ったけど、肝心の取り出し方は「そんなのアリ?」って思った。
良かったのは「停電から夜明けまで」。
このシリーズにしては珍しく全編緊張感があって、結末も見事だった。

でも前作にあった「白瀬が一つずつ買い足してくる変な備品」や「お昼ごはん持参」といった小さな約束事が無くなっているのが残念だったな。

あと、心なしか音野の存在が前作よりちょっと後ろに下がった印象。
もともと「人見知り、引っ込み思案」で白瀬の後ろに隠れてるようなキャラだけど、だからこそ目立っていた部分もあったのに今回はそういう部分が薄くなっていたような気がする。
前作よりも事件についての解説に重点が置かれていたようなのでそれも関係しているのかな。
個人的には事件(謎解き)よりもキャラ重視で行って欲しいシリーズなのでちょっと残念。

<収録作品>
密室から黒猫を取り出す方法 / 人喰いテレビ / 音楽は凶器じゃない / 停電から夜明けで / クローズド・キャンドル

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2012/05/30

今野敏/初陣 隠蔽捜査3.5

初陣 隠蔽捜査〈3.5〉

「隠蔽捜査」シリーズの1作。
竜崎視点の長編だった前3作とは違って今回は伊丹視点の短編集。

全編、問題が持ち込まれて困った伊丹が竜崎に相談すると、いつもの無愛想な調子で解決に繋がるアドバイスをくれる、という構成。
どんな難題もあっという間に解いてしまう竜崎の安楽椅子探偵っぷりが面白かった。

本編の裏話も出てきたりするスピンオフ的な作りもいい。
本編ではあんなにいろいろ迷ったり悩んだりしていた竜崎が超然として見える。
誰を視点にするかで物語の見え方ってこんなにかわるんだなー。

しかし3の次は当然4だと思ってたら3.5ってw
でも確かにその通りの内容だった。

これからも本編の長編と外伝の短編をうまく組み合わせて書いていって欲しいな。

<収録作品>
指揮 / 初陣 / 休暇 / 懲戒 / 病欠 / 冤罪 / 試練 / 静観

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2012/05/29

石持浅海/玩具店の英雄

玩具店の英雄 座間味くんの推理

警察官関係者が酒の席で話す過去の事件を、同席している一般人「座間味くん」が意外な切り口から分析しその事件の本質を明らかにして行く連作短編ミステリー。

面白かった。
前作「心臓と左手」では警視庁の大迫警視と座間味くんの2人だけの会話だったけど、今作では大迫警視正(昇進したらしい)の知人で科学警察研究所の研究員・津久井操が加わった3人体制。
前作を読んだ時も思ったけど、今回も頭がいい人ばかりの会話なので内容に停滞がなくて読みやすかった。

操が研究テーマとして取り組んでいる内容に関する過去の犯罪で気になるものを酒の肴としてちょっと披露する…という設定が上手い。
そしてそこから座間味くんが導き出す見事な(美しい)謎解き。
あまりにもスムーズで言うことないんだけど、あまりにも出来過ぎているために自分との差を見せつけられてちょっと悲しくなるくらいだった(^.^;
それを3人の人物のキャラクターと、適度に挟み込まれる美味しそうな料理の描写がうまく助けていたと思う。

しかし、話を聞いてるだけでこんなにつるつると真実を見抜いてしまう人がいたら怖いなー(^^;;

ラストもきれいにまとまっていて読後感もよかった。

<収録作品>
傘の花 / 最強の盾 / 襲撃の準備 / 玩具店の英雄 / 住宅街の迷惑 / 警察官の選択 / 警察の幸運

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2012/05/28

高野秀行/メモリークエスト

メモリークエスト

過去に偶然出会って別れ、そのまま消息が判らなくなっているけれど今どうしているか気になる…読者からそんな依頼を募ってその人を高野さんが探して会いに行く、という企画物。

小説なんかだと人探しって簡単みたいな気がしちゃうけど実際はそんなことないんだよね。
実際にその人が今どこにいるかはもちろん名前も素性も判らないまま、ただ記憶(しかも他人の)だけを頼りに探しに行こうっていうんだから、石橋を叩いて割るくらい臆病な私にとっては「無謀」以外の言葉は浮かばない(笑)
タイ→セーシェル→南ア→旧ユーゴっていう旅程だけで、私なんか「勘弁して下さい」と思う。
単なる旅行で、全部ガイド付きでホテルも飛行機も予約してあっても、絶対行かないだろうし大金を積まれても行かない自信あり。
なのに高野さんはノープランな上に自分では会ったこともない人を探しに行くというんだからビックリを通り越して尊敬してしまう。

でも本当にすごいのはそんな状況で尋ね人にちゃんと会えちゃうこと。
(5人探して見つからなかったのは1人だけ)
人の繋がりってすごいなあ、と思う。
そして動いていけば何かが見つかる、というか動かなければ何も見つからないんだということを感じさせてくれた。

しかし、5件中2件の依頼をした名須川さんという女性もなかなかすごい。
全然知らない土地であんな経験するってちょっと信じられない。
私なんか空港内にちゃんと行き先表示がないだけで泣きたくなるくらいビビりなのであんな経験一生出来ないだろうなあ。

この間読んだ『世にも奇妙なマラソン大会』では高野さんはいつも飄々としていてマイペースな感じだったけど、この本ではけっこう泣き言が多かったのが印象的だった。
まあ、あの状況で泣き言も言わずに悠々としていられたらすごいけどね(^.^;

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2012/05/27

小路幸也/レディ・マドンナ 東京バンドワゴン

レディ・マドンナ 東京バンドワゴン

今年も届いた堀田家の物語。
相変わらずしみじみといい。

いつでも誰かの幸せを願って。
遠くにいる知らない誰かではなく、自分の隣にいる「あなた」の幸せを。
一人一人がそう願っていればみんな笑顔になる。
そんな物語に温かく心が満たされる。

それにしても、花陽ちゃん高校生ですか!
研人は中学2年生で鈴花ちゃんかんなちゃんは3歳。
ちゃんとみんな1つづつ年を重ねて、それに合わせて言動も丁寧に書き分けられてるのがいい。
だから「みんな大きくなっちゃって…」と思わず親戚のおばちゃん化してしまうんだなw
(実際、鈴花ちゃん、かんなちゃんは甥っ子1号と同い年だし)

花陽と研人のイギリス旅行記も読んでみたいな~(^^)
特に研人、ロンドンって夜は結構物騒だと思うんだけど、大胆だな~(^^;;
今回かなりサラッと流されちゃっているので、どこかで作品化されるのではないかと密かに期待w

<収録作品>
[冬]雪やこんこあなたに逢えた / [春]鳶がくるりと鷹産んだ / [夏]思い出は風に吹かれて / [秋]レディ・マドンナ

[夏]の物語の中の青と池沢さんの会話がとてもよかった。
人を思いやる言葉は限りなくやさしく、そして力強い。

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2012/05/26

北山猛邦/踊るジョーカー 名探偵 音野順の事件簿

踊るジョーカー―名探偵 音野順の事件簿

出来る事なら外出もしたくないというくらい気が弱いけど謎解きの才能はある音野。
その音野を外に引っ張りだすために自分の仕事場に探偵事務所を開設した大学時代の友人で推理作家の白瀬。
無口な探偵と社交的な助手による連作ミステリー。

面白かった。
音野の気弱っぷりが徹底していて可愛い。
(なんかこういうキャラってどこかで見た(読んだ?)気がするんだけど、どこでだったろう?)
頼まれてもいないのに助手役を買って出て自分からは動き出さない音野を引っ張っていく白瀬もちょっと強引だけど、身勝手な感じはないので気持よく読める。
白瀬が毎回少しずつ買い足してくる音野の事務所用の調度品のずれたセンスが可笑しい。
音野の天敵(でもちゃんと情報提供はしてくれる)岩飛警部のキャラもよかった。
あと、途中1回だけ出てくる音野のお兄さんもよかったな~。
人見知り、引っ込み思案の音野とは全然違うキャラで笑えた。

内容はちょっとバカミスっぽいけど、作品の全体的な雰囲気に合っていてよかった。
ただ、最初のほうに出てきた「寝癖」や「お弁当持参」の小ネタが音野らしくて好きだったのに、最後の方は消えてしまったのが残念。

トリックや謎解き云々よりも登場人物のかやラクターを楽しみながら気軽にさらっと読める作品。
片山若子さんの表紙イラストも登場人物の雰囲気に合っていてよかった。

<収録作品>
踊るジョーカー / 時間泥棒 / 見えないダイイング・メッセージ / 毒入りバレンタイン・チョコ / ゆきだるまが殺しにやってくる

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2012/05/25

今野敏/疑心 隠蔽捜査3

米国大統領訪日の警備の地区本部長を任命された竜崎はそこに本庁から派遣されてきた美人で有能な秘書官に心を奪われてしまう。
自分の気持に動揺して冷静な対応が出来ない竜崎。
そんな中、来日した米国シークレットサービスから大統領を狙ったテロの情報がもたらされる。

いや~、面白かった。
と言っても1、2作目とは違った意味で(笑)
何と言っても今回の見所は「突然訪れた恋に悩みまくる竜崎」でしょう。
1、2作目も刑事的な事件と竜崎の個人的な事件が同時進行で進むから今回は何が起きるのかなと思っていたらまさかこんな内容とは!w

ただ最初は「あら、<唐変木>の竜崎もこんな気持を持つことがあるのね」なんてニヤニヤしながら読めてたけど、このパートがあまりにも長いので最後のほうはちょっと飽きた(^.^;
もうちょっと早く竜崎を解脱させてバリバリ活躍させてあげて欲しかった。
また、竜崎が動き出すのが遅かった分、最後のまとめがちょっと強引だった気がする。
なので、物語全体としては1、2作目と比べると今ひとつの印象。
いつも「感情は理性で制御できる」と考えている竜崎が図らずもそういう感情に支配され動揺する姿はなかなか面白かったけど、あまりにも引っ張り過ぎだったと思う。

ところで大森署の戸高って、最初に出てきた時の印象とちょっと違う気がする。1冊目で竜崎の階級を知る前と知った後で大きく態度が変わったという描写になってるけど、その後の戸高を見ると多少は丁寧になるかもしれないけどそこまで卑屈な態度を取るような人間には思えないんだけどな~。

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2012/05/24

今野敏/果断 隠蔽捜査2

家族の不祥事による降格人事で大森署の署長に配属された竜崎。
ある日都内で銀行強盗事件が起こる。
緊急配備により3人のうち2人は確保されたが1人は大森署管内の小料理屋に立て篭もってしまう。
現場で指揮を執る竜崎の元に娘の美紀から「お母さんが倒れた」との電話が…。

面白かった!
署長の机に山積みされる書類の決裁は一日がかりだわ、立て篭もり事件の結末を巡り苦境に立たされるわ、奥さんは倒れるわで相変わらず大忙しの竜崎。
それでも(いや、だからこそ)原理原則と合理性を追求し「今やれる最善のことは何か」を常に考え続ける竜崎の姿がカッコよかった。

ラストは結局そうなるんだろうなあと思いつつも、途中に何度もハラハラさせられる場面があってどんどんページが進んでしまう。
後半の展開も前半の伏線がきちんと効いているので非常に説得力があって引きこまれた。

しかしこの話の中に「ナウシカ」を出せるのは今野さんだけかとw

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2012/05/23

今野敏/隠蔽捜査

シリーズ1作目。

面白かった~♪
主人公のエリート警察官僚・竜崎の設定が素晴らしい。
最初は学歴や権力や立場ばかり気にする「ヤなヤツ」と思わせながら、その後読者に共感を与える部分を少しずつ出していって最後には「なんだ、いいヤツじゃん」と思わせる手法が巧かった。

警察の権威を失墜させかねない大きな事件と、竜崎の家庭内のトラブル。
大きさの全く違う「事件」を同時進行で描くことで、社会と個人は密接に関係しているということを上手く表現していたと思う。
最後のほう、竜崎が急激に丸くなってしまったように見えたけど次は元に戻るのかな?

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2012/05/22

西澤保彦/幻想即興曲 響季姉妹探偵 ショパン編

最後の謎解きは面白かったんだけど、そこに行くまでがちょっと迂遠だったかな。作中作という形式になっているんだけど、どこからが作品の中の小説でどこからがこの作品自体なのかが曖昧なのも(わざとかもしれないけど)気になった。

それと西澤さんは地名や人名を難読漢字にする傾向があるけど、これも苦手。
今回も吾箭戈(あやか)とか寿峻(すざか)とか長廻(ながさこ)とか。
それぞれの漢字の音でそう読めるならいいけど、全く見当がつかないのは読んでるほうにとっては辛い。
特に吾箭戈なんてここに書くのも大変だったくらい。
もうちょっと読みやすく覚えやすい名前を付けて欲しい。

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2012/05/20

三浦しをん/舟を編む

すごく面白かった。

この作品には「辞書編纂」という仕事の大変さ、面白さ、重要さが楽しく判りやすく描かれている。
辞書って日常の中に当たり前のように存在してるし、内容が膨大なので「人が作ってる」という意識が希薄な出版物だと思う。
でも人の手を経ずに出来てくる本なんて存在しないということを、それに携わる人々の思いの深さや真摯さを含めて改めて気付かされた。

登場人物の中で私がシンパシーを感じたのは馬締よりも西岡だった。
「辞書づくり」という仕事において天才的な才能を発揮する馬締に対する羨望と憧憬、自分の能力への劣等感、焦燥、葛藤…そうした「一般人」の複雑な胸中が見事に表現されていた。
でも、西岡は馬締に対し嫌がらせをしたりせず、自分出来る最大限の貢献をしようときちんと仕事をしていく。
その西岡のプライドのあり方に拍手を贈りたい。
自分は人より劣っているのではないかと考え悩んだときに、きちんとそれを認めた上でそこから上を目指せる人は凄いなと思う。

この作品で取り上げたのは「辞書編纂」という特殊な仕事だけど、著者が描きたかったのはそれだけではなくどんな仕事でもそれに情熱を傾け、自分ができる限りのことをしようと日夜取り組む人々へのエールだったんじゃないかな。

自分の場所に迷う、すべての人に読んで欲しい作品。

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2012/05/19

葉室麟/オランダ宿の娘

江戸時代、唯一日本との交易を許されたオランダ使節団の宿泊所となった長崎屋を舞台にした物語。

う~ん、イマイチ。
登場人物が多い上に、どうにも文章が読みにくくて仕方なかった。

物語は史実である「シーボルト事件」の周辺で動いていた大きな悪事を中心に描かれている。
事件自体の知識が殆どないのでそこがよく判らないのはいいとしても、登場人物も誰が何のために出てきているのか、本質は何なのかが判断出来ないことが多くてなかなか物語に入っていけなかった。
主役である長崎屋の姉妹るんと美鶴にしてもどういう性格の人物なのかよく判らず。

だいたいみんなうっかり者ばっかりの気がする。
もうちょっと慎重に生きたほうがいいんじゃないのかなあ、と。
いつも噂や見込みばっかりで行動してるし、更には前に行ったとき怖い思いをしてるのに何度も同じ所に行くし。
何故か分からんよ。(小説だから?)

あと、最後がシーボルトの感慨で終わったこともなんとなく違和感を感じる。
シーボルトが物語の主要な登場人物であったことは確かだけど、タイトルが『オランダ宿の娘』なんだからその娘たちを最後に持ってきて欲しかったな。

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2012/05/17

平岩弓枝/聖徳太子の密使

父・厩戸皇子の命を受けて、異国の優れた文化や知識を学ぶために珠光王女は旅立った。
王女とお供(三匹の愛猫と一頭の愛馬)一行は難波津から舟で西国を目指す。
食料や水の補給も兼ねて途中いろいろな島(国)に立ち寄るが、行く先々でさまざまは困難が待ち受ける。
そこで繰り広げられる冒険譚。

展開が早くて、文章も読み易かった。
ただ、行く先々で色んな妖怪変化や魑魅魍魎と戦う割にあっという間に決着が付いてしまい、盛り上がりには欠ける感じ。
もっとハラハラする場面があってもよかったな。
でも、お供の三匹の猫(白猫の北斗、三毛のオリオン、トラのスバル)の活躍が楽しかった♪
馬の青龍も最初は単なる馬かと思っていたら(猫たちは人間の姿になれるし、人間の言葉も判る設定)途中からいろんなことが出来るようになってたw

従者は主人を敬い、主人は従者を慈しむ、そしてお互いにいたわり合って困難な旅に挑む一行の姿がとても気持ちよかった。

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2012/05/16

あさのあつこ/桜舞う おいち不思議がたり

シリーズ2作目。

おいちの幼馴染で仲良しだったおふねの急死、伯母さんの病気、松庵の過去とおいちの出生の秘密、殺人事件…と盛り沢山。
でも話自体はすごくスムーズで分かりやすく、結末も綺麗にまとまっていた。

ただ、(ありがちではあるけれど)狭い範囲で事件が起き過ぎ、という印象。特におふねの死とその後に起きる殺人事件が同じ所に辿り着く結末はちょっと出来すぎでは。
あと、おふねの相手が誰だか判らないというのも、おふねが死んだ時の状況を考えるとなんとなく納得がいかない感じ。
(あの状況だったら直接的にそうと言われることはなくても、おふねの様子から何かしら伝わるものがあったはずなのでは)

おいちの出生に関わる顛末は良かった。
ラストも前向きで清々しさがあって読後感は悪くなかった。

それにしてもこの作品での一番の功労者はおいちの伯母さんのおうたかもしれないなあ。
あのパワー、明るさはすばらしい。
今までは「ちょっとうるさい」と思ってたけど、今回おうたが病気になって弱気になったシーンを読んだら一気に話が暗くなったのを感じて改めてそう思った。
そんなおうたにベタ惚れの夫・香西屋藤兵衛もいい。
早く病を克服してまた元気なおうたに戻ってほしい。

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2012/05/15

浅田次郎/一刀斎夢録(上・下)

一刀斎夢録 上
一刀斎夢録 上
一刀斎夢録 下
一刀斎夢録 下

天皇の崩御と乃木大将の自決により永遠に続くかと思われた明治という時代が終わりを告げた。
明治天皇の大喪と乃木将軍の葬儀のあと、近衛師団には八日間の休暇が与えられた。
休暇を剣術三昧に過ごそうと剣友である榊がいる警視庁の道場へ向かった若き近衛中尉・梶原は、ライバル榊が師と仰ぐ老人の存在を知る。
現在は女学生相手の下宿屋を営むその老人こそ幕末、明治を生き抜いた新撰組助勤 斎藤一であった。
その後梶原は一升瓶を下げて夜毎斎藤翁を訪ね、未だ武人としての風格を失わない翁の語る当時の話に引き込まれてゆく。
斎藤翁と痛飲しつつ過ごした八日間の休暇の後、梶原の剣はどう変わったのか-。

『壬生義士伝』『輪違屋糸里』に続く、新選組三部作の最後の作品。
『輪違屋~』が今ひとつ趣味に合わなかったので、これはどうだろう…とちょっと不安なまま読み始めたんだけど内容の殆どが斎藤の独白と回想で構成されていて非常に読みやすく面白い作品だった。
新選組の辿った道が、その中でも特異な存在であったであろう斎藤を通して語られると別の顔が見えてくる。

語り手の性格によるのもなのか、ぎりぎりの状況が語られているにもかかわらず割とサラサラと流れるように進むので「このまま行っちゃうのかな?」と思ったら最後の最後で掴まってしまった。
涙で字が読めないくらいの号泣。
この展開は「ずるい」と思う。

この小説の主役は斎藤一だけど、斎藤翁の語る物語の主役は五稜郭で副長・土方がその遺品を託して日野の佐藤家まで落ち延びさせた少年・市村鉄之助。
私も市村の名前は知っていたけど、どんな少年でその後どう生きたか(あるいは死んだか)なんて考えたこともなかった。
それを新選組一の変わり者 斎藤一と絡ませて物語にする、そしてそれを斎藤自身が語るという構成が素晴らしかった。
(ちなみに市村少年を拾ったときに斎藤は『壬生義士伝』の主人公である吉村貫一郎と一緒だった、という設定になっている。
そのため、それに絡んで吉村についての記述も少し出てくる。)

死を渇望しながらそれも叶えられず、幕末、明治、大正を生き抜いた斎藤の人生。
あまりにも自分とかけ離れていて感想を持つことも難しい。
また、今の法律や常識に照らしあわせて考えればおよそ信じられない行為をしてきた「極悪人」とカテゴライズされてしまう人物なのであろうと思う。
でも自分が生きている今に続くどこかに実際にそう生きることを望まれ、実際にそうして生き抜いた人間がいたということは忘れてはいけないんだと思う。

南北戦争についての考察(実はあの戦争は西郷と大久保の仕組んだ壮大なる軍事演習だった←ネタバレなので伏せておきます)もなかなか面白かった。
私はこの時代の作品ってあまり読んでいないのでよくわからないけど、これってよくある考え方なのかな?

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2012/05/10

天祢涼/葬式組曲

葬儀が制限された時代に国内で唯一その習慣が残る地域の小さな葬儀屋を舞台にした連作ミステリー。

設定はかなり独特で面白いし、登場人物も個性的、ミステリーとしてもなかなか面白かった。
ただ、最後の終わり方は「え~、ここまで来てそんな展開?」という感じで今ひとつ。
話の辻褄があってないわけではないので単純に好みの問題だとは思うけど、私はもっと温かく次に繋がる雰囲気で終わって欲しかったな。
(あと、最後の話の犯人の心情がよく理解できなかったせいもあるかも)

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2012/05/09

あさのあつこ/東雲の途

「弥勒シリーズ」(というらしい。何となくピンとこない命名だな)4作目。
今までは事件が解決してもちっともスッキリしなくて読み終わるとドヨヨーンとした気持ちになることが多かったこのシリーズだけど、今回は前向きな明るい雰囲気で気持よく読了。

今までひたすら前だけを見て捨ててきた過去を忘れようと努めてきた清之介が、現在の自分の暮らしを守るためにも過去と対峙することを決意し行動する、という展開。
一つ山を乗り越えた遠野屋の笑顔が見られたのはよかった。

何故か今回は信次郎もいつもよりも丸かったような感じ。
岡っ引きの伊佐治とその家族のエピソードもとてもよかった。

前半がすごく丁寧に書いてあった分、最後のほうがちょっと駆け足になったのが残念だった。
敵方との対決シーンももうちょっと緊迫感が欲しかったな。

しかし、今までは暗い雰囲気がやだなあと思っていたのに、上手く行きだすとそれはそれで物足りないと感じてしまうという…w
わがままですね^^;

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2012/05/08

伊東潤/城を噛ませた男

戦国時代を舞台にした短篇集。

amazonなどのレビューでかなり評価が高いので読んでみたけど、私には難しかった…。
それぞれのテーマは面白いんだけど、情報が多すぎて何がどうなっているのか途中で判らなくなってしまうことが多かった。
今まであまり読んだことがなくて知識のない時代だったのと、歴史小説自体から最近ちょっと遠ざかっていたせいかも。

物語全体の日数が数日間という「椿の咲く寺」くらいのスケールだと判りやすい。

<収録作品>
見えすぎた物見 / 鯨のくる城 / 城を噛ませた男 / 椿の咲く寺 / 江雪左文字

「江雪左文字」は関ヶ原で小早川秀秋を東軍に誘い込むために尽力した板部岡江雪斎が主人公。
でも、読んでみると江雪よりもいつまでも周囲の反応ばかり気にして自分の去就を決められずグズグズしている秀秋が非常に印象的。
こんな人があの天下分け目の鍵を握っていたのだと考えると、歴史って面白いな~と思える。
(本当に秀秋がこんな人物だったかどうかは判らないけど。でもよく見かける記述なので多分当たらずとも遠からずだったんだろうな。)

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2012/05/06

小林泰三/大きな森の小さな密室

一冊の中に犯人当て、安楽椅子、日常の謎など7つのパターンの推理小説を集めた短編集。

中に「バカミス」というジャンルがあったけど、話の内容としては全編バカミスみたいなものだったw
面白くなかったわけじゃないけど、もう少し真面目なのがあってもよかったかも。

ただ、各編に登場する探偵たちはみんな個性的で面白かった。
私は貧乏弁護士の西条源治と、馬鹿には我慢がならない進藤礼都が好きだったな。

<収録作品>
大きな森の小さな密室(犯人当て) / 氷橋(倒叙ミステリ) / 自らの伝言(安楽椅子探偵) / 更新世の殺人(バカミス) / 正直者の逆説(??ミステリ) / 遺体の代弁者(SFミステリ) / 路上に放置されたパン屑の研究(日常の謎)

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2012/05/01

舞台:ミュージカル『薄桜鬼』斎藤一 篇

ゴールデンウィーク前半最終日の30日、池袋のサンシャイン劇場で「ミュージカル『薄桜鬼』斎藤一 篇」という舞台を見てきた。

劇団も役者もお話も全然知らなかったので正直あまり期待していなかったけど、けっこう面白かった。
もともとゲーム(?)が原作らしいけど、舞台としてきちんとストーリーがまとまっていて全く知識のない私でもわかり易く出来ていたし、前半1時間半、15分の休憩を挟んで後半50分、合計約2時間半の長丁場にもかかわらず、見せ場も多く笑いのテンポもよくて初めてでも最後まで飽きずに見せてもらえた。

でも何より魅力なのは役者さんでしょう。
新選組の話なので出てくるのは1人を除いて全員男性(というより「男の子」)なんだけど、みんなきれいで細くて動きもよくて殺陣もダンスも上手くて、見ていて気持よかった♪

ただ、歌はちと残念だった。
セリフはけっこうちゃんとしてるのに、歌になると急に弱くなってしまい何を言っているのか聞き取れず。
まあそれでも進行上特に問題はないわけだけど、せっかくいいシーンなのに残念だなあというところがいくつもあった。
殺陣をやりながらあれだけ歌える体力はすごいと思うんだけど、個人的には普通の舞台のが良かったな。

対して唯一の女の子千鶴ちゃん役の子は歌がすんごい上手だった!
声も綺麗だし、音程もしっかりしてて高音の伸びが素晴らしかった。
逆に演技的にはちょっとワンパターンだったけど、歌については彼女に救われていた部分かなりあったと思う。

でも、みんな真剣に、それでいて楽しそうに演じているのが印象的だった。
それだけに休日の夕方の公演なのに客席に空きが多かったのはちょっと残念。
チケットがちょっと高い(指定:7,500円)というのもあるのかな。
舞台装置も衣装もクオリティが高いのでそのくらいの値段しちゃうのは仕方ないのかもしれないけど、せめて2階席はもうちょっと値段下げたほうがいいんじゃないのかなあ。

サンシャイン劇場で5/8まで。
「ミュージカル『薄桜鬼』斎藤 一 篇」(公式サイト)

しかし、このサイトの写真だけだとまったく「新選組」が出てくるようには思えないなw
でもこの舞台を見て「浅田次郎の『一刀斎夢録』を読まなくちゃ!」と思ったのだった。
連休終わったら予約しようっと。

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