中島京子/小さいおうち
昭和初期、尋常小学校を出てすぐに山形の田舎から東京へ女中奉公に出た少女タキが出会った一組の家族との思い出を綴った物語。
直木賞受賞作。
フワッとした雰囲気の中に時々意地悪な描写が差し込まれるので結末はもっと別な展開になるのではないかと予想しいたけどそうでもなかった。
戦時中だというのにのんびりした思い出を綴るタキに、甥の息子である健史が「そんなに暢気だったはずがない」と批判するシーンが何度も出てくるけど、実際にその局面の中にいても身近にそれを感じる(知る)手段がなければ実感としてはそんなものなのかもしれないな。
タキと「奥様」である時子の印象はすごく強いけど、その2人の生活を支えていた「旦那様」の印象はぼんやりしている。
そんなに登場シーンが少ないわけでもないのにな。
だいたい、この「旦那様」がどうして時子と結婚したのかもちょっと謎。
綺麗な奥さんを傍に置いておきたかったのかなあ。
戦局が厳しくなってから平井家を離れ故郷に帰ったタキと再会した時子が「今何が食べたいか」をあげていくシーンが好きだな。
時代の趨勢の中では眉を顰められ、批判されてしまうような行為だと思うけど、それに流されずあくまでも自分の好きなものを譲らずに明るく振舞い遠くから土産を持って駈けつけてくれたタキをもてなそうとする時子の気丈さが表現されたいいシーンだった。
昔の少女雑誌の挿絵のような色合い、フォントの装丁も可愛い。
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