波乃歌/ビューリフォー!准教授久藤凪の芸術と事件
頭脳明晰、眉目秀麗、性格温厚で女子学生を中心に人気がある西洋美術史の准教授・久藤凪。
その本性を知っているのは彼の元でこき使われている貧乏学生の花だけだった。
絵画をモチーフにした日常の謎系短編ミステリー。
まあまあ。
文章は読みやすいし絵画をモチーフにしているのは面白いけど、登場人物の設定はちょっとありきたり。
それでも、それが徹底されているところは好感が持てたし、謎(事件)の種類や結末も作品の雰囲気に合っていてよかった。
それぞれの話のテーマとなる絵画を花が初めて見たときの反応が、見えてるそのまんまの感想なんだけどそれが却って新鮮。
(でも、他の作品はともかくピカソの「泣く女」さえも一回も見たことない大学生っているのかな?)
それに対する久藤の作品解説も的確で解りやすかった。
ただ、花がお金に困ってる理由が何となく弱い感じがした。
だって、ここに書かれている内容だけでは、何のために花がそこまで苦労しながら大学に通っているのか判らないから。
親からの援助を受けられないから奨学金で大学に通う。
それだけだと生活が苦しいからバイトに明け暮れる。
結果、学校の成績が落ちる…ってよくあるパターンだけど、何のためにそこまでして大学生活を選ぶのかという理由付けをもっときちんと書いて欲しかった。
そんなに働いてばっかりいるなら別に大学生じゃなくてもよくないですか?と思ってしまうので。
そんなにキツイ思いをしても大学に行く価値がある花にとっての「何か」が書かれていれば、花にもっと感情移入できたと思う。
<収録作品>
第一話 忘れられた少年(伝ピーテル・ビュリューゲル『イカロスの墜落』より) / 第二話 とんだいいひと(歌川国芳『みかけハこハゐがとんだいゝ人だ』より) / 第三話 恋の処方箋(パブロ・ピカソ『泣く女』より) / 第四話 家族の肖像(ラファエロ・サンティ『子羊と聖家族』より)
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