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2012/08/03

安住洋子/日無坂

日無坂

老舗の薬種問屋の跡取り息子に生まれながら、父親と反りが合わずに悪行を重ねた挙句に借金を作り勘当された利一郎。
十年後、伊佐次と名を変えた利一郎は家を飛び出してから初めて道端で父親の姿を見かける。
翌日、伊佐次にもたらされたのは父親が大川で水死したとの知らせだった。

先日読んだ『春告げ坂』に出てきた伊佐次が養生所に来る前の話。
しっとりとした文章で丁寧に描き出されるすれ違う父と息子の物語が心に沁みる。

頭がよくしっかりものだけれどその分気が強く父や祖母に反発し家を飛び出し賭場で働く兄、口数が少なく大人しいけれど兄の代わりに店を継いだものの商売に身が入らない弟。
父親の死後、まったく違う立場で残された兄と弟がいがみ合うことなくお互いを思いやっていく設定になっているのが上品。

生きているうちは思い至らなかった父親の苦労や自分に対する思いに気持ちを寄せ、父親の死を深く悼む伊佐次の姿が胸をうつ。

ラストは盛り上がりにはちょっと欠けるけれど、残された兄弟がそれぞれの道を歩き始める希望のある結末で読後感もよかった。

この作家さんの作品はこれで2作目だけど、どちらもしっとりと落ち着いたきれいな文章でとてもよかった。
心理描写や性格設定も丁寧でわかりやすく読みやすい。
他の作品も読んでみよう。

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