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2012/11/07

畠中恵/ちょちょら

ちょちょら

財政が逼迫する多々良木藩の江戸留守居役に任命された新之助が藩の存亡をかけて手伝い普請のお役免除のために奔走する話。

面白かった。
畠中さんの作品の中で一番好きかも。

人物設定も人間関係もエピソードもとても丁寧に作ってあるし、どんな結末が待っているのかなかなか予想しにくくて最後まで緊張感を持ったまま楽しめた。

ストーリーは入り組んでるけどとても読みやすかったし、主人公の新之介を始め、仲間の留守居役たち、表坊主、札差らも個性的で生き生きと動いているのがとてもよかった。
特に主人公の新之介の力強さが素晴らしい。
文武に秀でた兄と小さい頃から比べられながら育った部屋住みの次男坊。
その兄がある日突然理由も告げずに切腹して果てたことで、思いがけず兄の就いていた江戸留守居役という重要な役目をいただくことになる。
他の藩や幕府の要人との折衝や接待、自藩の藩主が登城する際の介添えと今までののんびりした部屋住みの身分とは違い、覚えること、やらねばならないことが山積みの上に、今にも倒れそうな藩の財政を守るためにお助け普請の役目から逃れるために奔走する…。
上司(自藩の家老)にも理解されず孤立し、経験も人脈もないなか、失敗したら死をも覚悟した新之介がそれでも藩のために、そこに住まう人々のために己に出来る事をやろうとする姿に心を打たれた。
現実ではこうは上手くいかないと思うけど、何かにぶつかったときに最初から無理だと諦めるのではなく、出来るところまで必死になって頑張ることは大切だよね、と思った。
そしてそいういう誰かをきちんと見て、自分が出来る限りの助力をしてやれる隣人でもありたいと心から思う。
終わり方はちょっと意外だったけど明るさがあって読後感もよかった。

ただ難を言うと物語の内容と、タイトル+表紙イラストが微妙にマッチしていなかったような。
見た目から言うともっとお気楽な話なのかと思ったら、いきなり新之介の兄が切腹するところから始まったので驚いた。
しかも「ちょちょら」って岩崎のことだよね。(作中で一箇所だけそういう記述があった)
なんでここで岩崎の性格をタイトルに持ってくるのかがよく分からないんだけど。
もっと相応しいタイトルがあったんじゃないのかなあ…。

ところで、この話で一番活躍したのは実は一度も登場しないし、名前さえも出てこない新之介の妹なのではないかと思う(笑)

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