« 矢崎存美/刑事ぶたぶた | トップページ | 志川節子/春はそこまで 風待ち小路の人々 »

2012/11/26

中島要/江戸の茶碗 まっくら長屋騒動記

江戸の茶碗  まっくら長屋騒動記

芝神明にあるおんぼろ長屋を舞台にした人情話。
働きもせず年中長屋で酒を飲んでゴロゴロしてばかりの浪人・勘兵衛が長屋の住人が持ち込んでくる厄介事を解決する。

江戸の貧乏長屋の様子を上手く描いた賑やかで楽しい作品だった。
セリフに勢いとテンポがあるのが印象的。

借金のかたに取られてしまった店を亡き両親の代わりに取り戻そうと貧乏暮しを続けコツコツ貯めた小銭をだまし取られた兄妹を描いた表題作の「江戸の茶碗」がよかった。
ただ、あのお兄ちゃんじゃ店を取り戻してもちょっと不安…(^.^;

あと、ある事件をきっかけに目を患い、今は売れない按摩師として貧乏生活を送る梅次郎と隣に住む訳ありの屑屋の交流を描いた「真眼」のラストも心に染みた。

最後に勘兵衛の過去が語られるシーンは今ひとつ。
今までは噂話しか聞こえてこなくてずっと隠されていたものが、一気に語られすぎて余韻がなかった。
もうちょっとぼかすか、あるいは他の物語の中で少しずつ何かが分かってきて最後にそれが組み合わされて本当のことが判る…といったような工夫が欲しかったな。

<収録作品>
江戸の茶碗 / 寝小便小僧 / 遺言 / 真眼 / 嫁入り問答 / いじっぱり / 男と女の間

|

« 矢崎存美/刑事ぶたぶた | トップページ | 志川節子/春はそこまで 風待ち小路の人々 »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

読了本」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: 中島要/江戸の茶碗 まっくら長屋騒動記:

« 矢崎存美/刑事ぶたぶた | トップページ | 志川節子/春はそこまで 風待ち小路の人々 »