« 2012年11月 | トップページ | 2013年1月 »

2012年12月の12件の記事

2012/12/30

赤川次郎/鼠、剣を磨く

鼠、剣を磨く (角川文庫)

鼠シリーズ第5弾。短編を6作収録。

巻によっていまいちの場合もあるので心配したけど、今回はどれも面白かった。
武家と町人を絡ませて上手く人情ものに仕立てられていた。 次郎吉と千草の仲が少しづつ近くなって行く感じもいい。

ただ、次郎吉の本来の仕事に絡んだ(あるいは活かした)作品が少なめなのはちょっと残念。
そういう意味では「鼠、大水に走る」で大名家の殿様の寝所に忍び込むシーンが良かった。
忍び込まれた年若い殿様もいいキャラだったし、結末もすっきりしていて安心して読めた。
この作品が今回のベストかな。

<収録作品>
鼠、迷子の手を引く / 鼠、〈神隠し〉と会う / 鼠、天狗と坊主と因縁を結ぶ / 鼠、剣を磨く / 鼠、芸道を覗く / 鼠、大水に走る

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/12/29

金田一耕助に捧ぐ九つの狂想曲(アンソロジー)

金田一耕助に捧ぐ九つの狂想曲 (角川文庫)

九人の作家による金田一耕助をテーマにしたアンソロジー。

1ヶ月くらい前から少しづつ読んでようやく読了。
金田一作品って映画やドラマでしか知らないので(^^;原作と比較してどうというのはよく判らないけど、どの作品も上手いしそれぞれ設定も凝っていて面白かった。

栗本薫さんの「月光座」、柴田よしきさんの「鳥辺野の午後」、菅浩江さんの「雪花 散り花」が好きだったな。

<収録作品>
京極夏彦:無題 / 有栖川有栖:キンダイチ先生の推理 / 小川勝巳:愛の遠近法的倒錯 / 北森鴻:ナマ猫邸事件 / 栗本薫:月光座ー金田一耕助へのオマージュ / 柴田よしき:鳥辺野の午後 / 菅浩江:雪花 散り花 / 服部まゆみ:松竹梅 / 赤川次郎:闇夜にカラスが散歩する

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/12/28

中居真麻/私は古書店勤めの退屈な女

私は古書店勤めの退屈な女 (日本ラブストーリー大賞シリーズ)

タイトルから受けるイメージだとまったりほんわかした話かなと思ったし、実際導入部はそんな雰囲気で始まるので楽しみに読み始めたのに、主人公の波子が自分の不倫体験を始めたあたりで「え?何なのこの展開?」になって行き結局そのまま読了してしまった。
とにかく波子の言動が不快。

新婚数ヶ月で夫の上司に一目惚れして不倫関係になり、それが夫にもバレて夫は仕事を辞め夫婦は家庭内別居状態なのにそれを修復することもなく不倫相手との逢瀬を重ねている…という設定。
別に不倫小説がイヤだというわけではない。
ただ、波子は自分で選択してそういう状況を作っておきながら、自分が一番可哀想なのに誰も解ってくれないと思っているフシがあるのが私がイライラする原因だった。
何言っちゃってんのかな、この女はと思いながら読んだ。

一方、波子を雇い入れたオープンしたての古書店のおじさん小松さんはいいキャラ。
楽天家でちょっとずれてて奥さんを怖がりつつも愛してて、本と音楽が大好きな禿げ散らかったw加齢臭が悩みのおじさん。
この小松さんと一緒に働き会話をする中で波子が少しずつ変わっていくという展開なんだけど、正直 古書店内での2人の会話の部分と、波子が一人で行動する部分が噛み合っているようには全然思えなかった。

小松さんといるときの波子と不倫相手、あるいは夫と一緒のときの波子が同一人物とは思えない。
何故この展開で書いたのかがさっぱり判らなかった。

更に不倫相手も夫も「ちょっとどうなのよ」っていう描かれ方だし。
特に夫は情けなさ過ぎる。(こんなふうにしか描いてもらえなくて可哀想になるくらいだ)
腹は立たないけど、気持ち悪さだけが残る作品だった。

なんとなくよしもとばななさんの路線を狙ってるような雰囲気がそこここから漂ってくるのが更に不快感を増大させていたような気がする。
あと、商品名とかの固有名詞を多用するのもなんかあざとい。
(ダメだ、一回「やだ」と思うと嫌なとこしかみえないや(T_T))

| | コメント (1) | トラックバック (0)

2012/12/26

大崎梢/クローバー・レイン

クローバー・レイン (一般書)

大手出版社に勤める主人公が自分が気に入った作品を本の形にするために奔走する話。

…と書くと、熱血お仕事小説みたいな感じだけどそれだけではない。
確かにそういう側面もあるけれど、そうやって真摯に本造りに向き合う主人公を中心に、本とそれを取り巻く人々を丁寧に描いて深く静かな余韻を残す素敵な作品だった。

正直、時々登場人物の心情や人間関係の行方が分からなくて「?」となってしまう部分もあったけど(特に彰彦と良嗣と尚樹の関係)、それ以上に自分の気持ちを理解してもらおうと努力する主人公とその言動を認めて手を差し伸べる周囲の人々の反応が丁寧に積み重ねられて行く部分が印象的で気持よく読み進められた。

いつもの大崎さんの作品よりもトーンがちょっと低くて、ちょっとだけ遠くから物語を見つめているような印象。
それが作中に出てくる本の印象と相まって作品に柔らかな深みを与えていたと思う。

エンディングも見事。私の心にも温かい雨が降るような読後感だった。

もしもあの原稿を初めて読んだのが編集長だったら、どうしていただろう。
(中略)
案外、社内の誰にも言わず、他社の編集者に原稿を渡していたかもしれない。
そして書店に並んだ本を眺め、そっと手を伸ばすのだ。ひどく、らしい気がした。 (p30)

一冊はいつかきっと百冊になる。千冊にも一万冊にもなる。本は特殊な商品です。数年後の誰かのために、その人を感動させるために、今、種を蒔いたり水をかけたりする。そんなことがほんとうにありえる世界だと、これは他社の営業マンに教えられました。(p201)

分け隔てなく平等で無難な愛なんかじゃ、人は動きません。相手の本気が伝わったときだけ、顔を上げ耳を傾けてくれる。視線を向けてくれる。ここぞと言うときの『ここ』くらい、我が儘で無謀でなきゃ嘘ですって。その分、引き替えに背負うものもちゃんとありますし。(p258)

主人公の彰彦よりも営業の王子のセリフのが印象に残るものが多かったな。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/12/23

東川篤哉/謎解きはディナーのあとで

謎解きはディナーのあとで

事前にamazonのレビューとかで凄い酷評を見ていたりしていたので「どんなに酷いのか」と思って(ある意味楽しみにしてw)読んでみたけど、普通だった。
ホントに普通のキャラものの安楽椅子ミステリー。
特に酷いということもなく、そこそこ楽しめた。
読みやすいし、笑えるところもけっこうあった。

ただ、だからこそなんでこれが(これだけが)そんなに売れたのかが謎。
このくらいの作品、他にもありそうな気がするもの。
それらの作品とどこが違うのかがさっぱり判らなかった。
そして「本屋大賞」にする理由も。
書店員さんにとってホントにこれが「一番売りたい本」だったのかなあ、と思えてならない。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/12/21

津原泰水/猫ノ眼時計(幽明志怪)

猫ノ眼時計 (幽明志怪)

猿渡と伯爵のシリーズ3作目にして最終巻。

面白かった。
猿渡と伯爵の関係や作風が前作よりも1作目に近い感じ。
1作目の『蘆屋家~』に出てきた豆腐の話題が今回も出てきて、しかもそれによって猿渡が危機一髪のところを救われるというのは感慨深い。
アイダベルと猿渡の掛け合いもテンポよく楽しくて好きだったな。

猿渡と友人の伊予田のことを書いた「玉響(たまゆら)」もよかった。
最後の<誰が泣くか。>が効果的。
これを読んだらこっちが泣けてきた。

途中に出てきた「花嫁」(「花嫁は夜汽車に乗って~」)の歌詞のダブルミーニングの話と醤油煎餅を煮込んで出汁と具にしたにゅう麺が気になる!w

<収録作品>
日高川 / 玉響 / 城と山羊 / 続・城と山羊 / 猫ノ眼時計

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/12/18

朝井リョウ/星やどりの声

星やどりの声

仕事熱心で優しかった父親を病気で亡くした早坂家の物語。

男3人女3人の6人兄弟がそれぞれの章で主人公をつとめ、現在の自分の環境と家族、そして父との思い出を語っていく構成。
最初ちょっと入って行きにくかったけど、2章目あたりからはスムーズに読めた。

「三男 真歩」のパートが好きだったなあ。
大人っぽさと子供っぽさが同居した真歩が必死で大好きだった父親の死に耐えている様子に胸を打たれた。
他の兄弟達もそれぞれ個性的でいい。

みんないい子すぎるような気がしないでもないし、最後の展開はちょっと「?」な部分もあったけど、きれいな物語で読後感もよかった。

ただ、あの家族がこれからどうやって生計を立てていくのかが気になってならない…。
お母さん料理が得意だから仕事はあるのかなという気がしないでもないけど、でも体調が思わしくないみたいだからねえ。
この観点で考えてしまうと、この家族はなんでこんなに暢気なんだろう…と不安になってしまう。
だいたい長男の光彦が暢気過ぎる。
長男だから就職のことを考えても大学に行くのはともかく、暢気にテニスサークルに参加してる場合じゃないだろ。
勉強頑張って奨学金もらうとか、バイトして学費稼ぐとかしろよ、と言いたくなる。
あと、お客があまり入っていない(=暇な)お店なのに何故お母さんは疲れて倒れちゃったんだろ。
いわゆる「心労」ってことかな?
大体そんなに儲かってないんだったら好む好まざるに関わらず生活レベルが落ちるから、いくら子どもだって何となく気付きそうな気がするんだけどなあ。
お店の地代も払えないってことはお父さんの保険金だってもう残ってないということだろうし、あったとしても小学生の末っ子が大人になるまで充分の金額とは思えない。
双子はもうすぐ高校卒業だからいいとしても、高校1年の次男はこのあとちゃんと高校・大学と行けるんだろうか。
いくら長男がわりとお給料がいい会社に就職できたと言っても実家の生活費を仕送り出来るほどではないと思うしねえ。
この物語が終わったあとのほうが、あの家には様々な波風が待ち受けているのではないかと心配してしまうなあ(^.^;

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/12/15

横山秀夫/真相

真相 (双葉文庫)

事件の当事者あるいは関係者である男たちの心情を描いた5つの物語。

短編なので設定はそんなに細かくはない。
でもその分、主人公の心理描写が非常に丁寧に描かれていて圧倒される。丁寧過ぎて読み終わると一気に疲れを感じるくらいだった。

最初の表題作を読み終わった時に「重いな~」と思ったけど、その後読み進むにつれて更に重さを増した作品ばかり出てくるので読むのが辛かった。

普段読んでいるミステリーやドラマでは殺人を始めとして事件が簡単に起きてしまうけど、現実として刑事事件に関わるということはその人の人生を丸ごと変えてしまうことなんだな。
これもまた「作品」ではあるけれど、作品としての面白さだけでなく平穏に日々を生きられることの有り難さを教えられた気がする。

<収録作品>
真相 / 18番ホール / 不眠 / 花輪の海 / 他人の家

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/12/13

志水辰夫/引かれ者でござい 蓬莱屋帳外控

引かれ者でござい―蓬莱屋帳外控

『つばくろ越え』に続くシリーズ2作目。
蓬莱屋の通し飛脚たちが旅(仕事)先で巻き込まれる厄介事を解決する短編3本。

今回も面白かった。
特別愛想や人当たりがいいわけではないけれど、身近に困っている人間がいるとつい手助けしたくなる飛脚たちの活躍。
遠い道のりを大金を身に着けて一人で駆け抜けるだけに知恵も度胸もある飛脚たちだけど、剣がつかえたり人を殺めたり出来るわけではないから、かなり危険なところに身を晒すシーンとかもあって最後までハラハラしながら読んだ。

山を登ったり降りたりしているシーンが多いので、読んでいるだけで疲れてしまう(^.^;
どこに行くにも基本は自分の脚で移動しなければならなかった昔の人は本当に大変だったんだなあ。

3作ともよかったけどなかでも、予期せぬ道連れの出現で思い通りに脚を使えない飛脚(宇三郎)がイライラしながらも同行者を束ねて山道を行く「旅は道連れ」がよかった。

ただ、前作同様どの作品の飛脚もタイプが似ていて見分けがつかないのが難点。
あと、それ以外の登場人物が多くて、しかも名前しか出てこないことがあるので誰が誰だか途中で判らなくなることも多かった。

<収録作品>
引かれ者でござい / 旅は道連れ / 観音街道

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/12/11

津原泰水/ピカルディの薔薇

ピカルディの薔薇

売れない作家である猿渡を主人公にした短篇集。

『蘆屋家の崩壊』に出てきた伯爵と猿渡が出てくる作品ということで読んでみたけど、『蘆屋家~』とはちょっと毛色が違う作品だったような
(と言っても『蘆屋家~』を読んだのはかなり昔なので正直よく覚えてないw)

幻想的で破滅的な作品群。
ずっと誰かの夢の話を読んでいるような感覚。
そういう作品は決して嫌いではないんだけどもっと違うものを想像していたのでちょっと肩透かしを食った気分。
伯爵も出たり出なかったりだし。

そんな中では「フルーツ白玉」が一番(私の記憶の中の)前作に近かったかも。
でも本当にそうかどうかは判らないので、また機会があったら読みなおしてみよう。

<収録作品>
夕化粧 / ピカルディの薔薇 / 籠中花 /フルーツ白玉 / 夢三十夜 / 甘い風 / 新京異聞

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/12/07

小路幸也/21 Twenty One

21 twenty one

21世紀に21歳になる21人のクラスメイト。
3年間一緒に過ごした中学時代の固い結束のまま大人になり、このままみんなで年を重ねていくのだろうと信じていた25歳の夏、晶が自殺した。
彼は何故一人死を選んだのか-。

クラスのメンバー一人一人にスポットを当てて晶や自分、クラスメイトたちの思い出を綴っていく構成。
それぞれの性格設定と人間関係、エピソードがすごく自然にマッチしていて説得力がある。
小路さんの丁寧な描写に引き込まれた。

ただ、やっぱりこういう物語って結末をどうするのかが難しいんだなあ。
生きてる人間が語る部分はどれも生き生きしていて説得力あったけど、晶が死んだ理由はなんだかどれも空々しくて真実の欠片も見えたような気にはなれなかった。

特にそれぞれが「晶が死んだのは自分が原因かもしれない」と思う部分はう~ん?って感じ。
確かに身近な人に自殺とかされちゃって自分に思い当たることがあるとしたらそんなふうに思うのが自然なのかもしれないけど、なんとなく読んでいると「おこがましい」という気分になってしまう。
他人に死を選ばせることが出来るほどの人間ってそんなにいるかな?と思うので。

あと、最後に提示された理由も「そんなことでほんとに死んじゃうかな?」と思う。
まあ、人生で何が大切かなんて人によって様々だし死ぬ理由も人それぞれだろうけど。
でも、それで死んでしまうのだとしたらあの21人の関係というのは非常に「歪」なものなのではないかと思えてくる。
お互いがお互いを認め合い、争いもなく助けあって生きていく、そうしているように見える彼らの関係が「歪」なのだとしたら、真っ直ぐなものはこの世界のどこにあるのだろう。

人が自分で死を選ぶ理由なんて他人が推し量れるものじゃないし、逆に「これが理由だ」って言われても納得出来ないものなのかもしれないな。
(「実は自殺じゃなかった」という結論もアリかも、と思っていたのだけどそれはなかったな)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2012/12/06

小路幸也/Q.O.L.

Q.O.L.

葉山にある古いけれど瀟洒な一軒家で共同生活する龍哉、光平、くるみの3人。
それぞれの思いを抱えながらも穏やかで平和に流れていた3人の生活が龍也の父親の死によって動き始めるー。

話の構成はすごく好き。
テンポがよくて展開が速くて読みやすい。
主人公の3人も魅力的だった。

ただ、人物設定にはちょっと否定的。
とにかくくるみの背負った過去の設定が酷過ぎる。
誰かを殺したいほど憎む設定にする必要はあったのかもしれないけどそれにしてもあんな境遇を与えなくてもよかったのでは、と思う。
くるみに比べたら龍哉や光平の事情なんて何にもなかったようなものに思えてしまう。
しかもその、人として最低なことをした相手を読者の前に出す時は「いい人」みたいな設定にしちゃうのは狡いと思う。
もちろん、くるみに罪を犯させたいわけではないけど、でもだからといって「上手く行ってよかったね」で済ませられるような問題ではないでしょう。
物語の中でくらい悪いヤツはきちんとそれに見合った制裁を受けるべき。
そうしないのであれば、もっと穏当な設定をくるみに与えてほしかった。
その部分がどうにも納得出来なかった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2012年11月 | トップページ | 2013年1月 »