« e-NOVELS編/黄昏ホテル | トップページ | 万城目学、門井慶喜/ぼくらの近代建築デラックス! »

2013/01/25

原宏一/佳代のキッチン

佳代のキッチン

15年前に中学生だった自分と5歳下の弟を置いて失踪した両親を探すためにワゴン車で調理屋をしながら全国を旅する佳代を主人公にした連作短編集。

話としては面白かった。
移動調理屋(材料はお客の持ち込みで、それを希望に合わせて調理する)という佳代の設定も斬新で興味深い。
何より佳代の作る料理の美味しそうなこと!
スシテンとか魚介めしとか食べてみたい!
また、両親を探しに行く先々での佳代と土地の人々とのやりとりも温かく気持ちよく読めた。

ただ、その佳代の旅の目的である「両親探し」についてはどうも納得が出来ない。
いくら自分たちの理想を追いかけるためとはいえ、中学生と小学生の子どもを残していきなりいなくなりそのまま帰ってこない親なんてあり得ない。
しかもそのあたりを美談風に結論付けてるところが不快だった。
2人に出会い話を聞いた人たちも2人の話に納得せずに「間違ってる」って言ってやって欲しかった。
「まず子どもを迎えに行け」と。
だいたい、こういう場合って旅に出るにしたって子どもを連れて行くでしょ。
もちろんそれだって子どもには負担だろうけど、何も聞かされずに置いていかれてしまうよりずっとマシ。
なのに何故一緒に連れて行かずに置いていかれてしまったのかについて触れてられていなかったのも不満。
何故佳代の両親をこの設定にしたのかが理解できないなあ。
佳代が移動調理屋をやるきっかけや目的はもっと他のことでもよかったと思う。
せめて両親は既に死んでいてその足跡を辿るとか、どこかにいるお世話になった人に会いに行くとかいう展開のほうがよかったな。

あと、現実的に考えたら佳代の仕事だってかなり怪しいよね。
だって車で寝泊まりしてるってことは住所不定ってことでしょ。
その状態で飲食店経営の許可って降りるの?
調理するなら保健所の許可も必要だろうけど、移動するたびにそれを取っていたとも思えないし、税金もどう処理しているか不思議。
だいたい、車に一人で寝泊まりしてる女が道端であんな不思議な商売を始めて、土地の人がすんなり受け入れるとも思えないし。

この間読んだ『ヤッさん』同様、これも基本設定はファンタジーということなのかな。
でも基本的な部分は「あり得ない」なのに、その中の物語はリアリティがある、どっしりした話に思えてしまうのが不思議。
現実にはいないけど、でもこんな人がいたらいいよねって感じの話。
ある意味、物語として正しい形なのかも。
他の作品も読んでみよう。

|

« e-NOVELS編/黄昏ホテル | トップページ | 万城目学、門井慶喜/ぼくらの近代建築デラックス! »

書籍・雑誌」カテゴリの記事

読了本」カテゴリの記事

コメント

この記事へのコメントは終了しました。

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/29699/56629292

この記事へのトラックバック一覧です: 原宏一/佳代のキッチン:

« e-NOVELS編/黄昏ホテル | トップページ | 万城目学、門井慶喜/ぼくらの近代建築デラックス! »